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第2章
第4話 水鱗の魔女②
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鱗の女は、ジャンヌを手足に鎖を繋がれたまま、引き連れていた。
ジャンヌを部屋の中へ放り投げる。
「あとは姉様が帰ってきてからにしましょ」
「そうしましょ」
鱗の女は部屋から去っていく。
ジャンヌはため息をする。
手足に鎖で縛られ、『呪い』で満ちた水のおかげで『光』がほとんど尽きてしまった。
どうしたものかと思った時だった。
「大部、使い魔たちにやられてるな」
聞き覚えのある声に嫌な顔になるジャンヌは、声をした方向に向く。
「そんな顔するなって」
アキセも手足に鎖をつけて、捕まっていたのだ。
「なんでここにいるわけ。しかも捕まっているし」
「いや~ドジっちゃってさ」
アキセは、木の枝の上で寝ていた。
日が昇り、アキセが目を覚め、木の枝から降りようとした。降りた先に大きい水たまりがあり、そこから捕まったという。
ジャンヌは大きなため息をする。
「なんだよ。その大きなため息」
この男って奴はと呆れる。
いや、待った。アキセがこの部屋で拘束されている。あまりにも偶然にしてはできすぎている。
「まさか!使い魔たちに私のこと話したでしょ!」
「ちょいと話しただけだよ。まさか来るとは思わなかった」
うそだ。絶対わざと言った。一人じゃ抜け出せないから、呼び出すために使い魔に言ったんだ。じゃあなきゃ、今アキセがジャンヌに向かって舌を出していない。
「サイテイ!」
ジャンヌはこの鎖がなければ、一発殴りたい。
「やられたわりに元気だな」
「うるさい!」
「やっぱ火を扱う聖女でも相性があるんだな。水苦手なのか?」
嫌なところに突っかかる。
「話したくなかったけど苦手っていうか、より消耗が激しくなるだけ。すぐに『光』が無くなるの」
「へ~」
「何よ」
「これで確信とれた」
「何が?」
「君が水との相性がさ。ほぼ想像通りでよかった」
「まさかとは思うけど、それも確かめたくて・・・」
「長話はここまでにして、とりあえず逃げますか」
遮断された。
アキセは、手についた鎖を靴先に叩きつける。ガシャと音を鳴らし、鎖がバラバラに砕けた。アキセの手は自由の身となった。
「取れた取れた」
足についた鎖を外す。
「何したの?」
突然の出来事に目が点になる。
「この靴特別製でな。先端にカースネロを付けたんだ。こういう時の為にね」
カースネロは、魔術に使う『呪い』を含めた宝石。
それにとアキセは言いながら、靴の底を外し、何かを取り出す。それは、伸縮自在の杖だった。
「準備万端だろ」
アキセはドヤ顔をする。
アキセがジャンヌの鎖も外してもらう。
「立てるか」
アキセが手を伸ばしてきたが、手を出せなかった。それは、長く水に入ったおかげで体が冷え切っていたからだ。手を伸ばすよりも小さく体を縮め、どうにか温めようとする。
「仕方ないな」
杖で陣を描き、中指で弾く。ジャンヌに触れた途端、陣は塵状なり、ジャンヌに降りかかる。体が徐々に温まり、体を動かせる。
「これでいいだろ。本当に『光』がないんだな。俺の魔術が効いているほどだもんな」
アキセは小さく笑う。
魔術は、人間でも『呪い』を扱えるようにできた術。
『呪い』を利用しているので、『光』を扱える聖女にとって無効化させるが、無効化させるほどの『光』が残っていないため、魔術が効いている。
正確には、聖女は『呪い』の抗体を持っていないため、残っている『光』が、『呪い』に侵されないように聖女の体を守っている。
体が温め切ったので、ジャンヌは立ちあがる。
「だから、まともに戦えないわよ。それに脱出算段できてるの。多分、ここ水の中よ。魔女が作った」
「まあそこは考えてあるので、ご心配なく」
「それって・・・まさか泳いだりしないよね・・・」
「おいおい、そんな泳いで逃げるって・・・あれあれ?」
アキセが感づいた。
「何よ」
「もしかして、泳げないのか~」
いたずらな笑みで見つめてくるので、視線をそらす。
「まあそうだよな。火を使うもんな。水が苦手なのも泳げないのも仕方ないよな」
アキセが煽るように言うので、イラつく。
「もういいでしょ!さっさと行くよ!」
「あと寄りたいところあるけど」
「何よ」
「俺の指輪を取り返したいんだ」
その言葉でジャンヌはロザリオがないことに気づく。そういえばアキセも指輪がない。
ジャンヌを部屋の中へ放り投げる。
「あとは姉様が帰ってきてからにしましょ」
「そうしましょ」
鱗の女は部屋から去っていく。
ジャンヌはため息をする。
手足に鎖で縛られ、『呪い』で満ちた水のおかげで『光』がほとんど尽きてしまった。
どうしたものかと思った時だった。
「大部、使い魔たちにやられてるな」
聞き覚えのある声に嫌な顔になるジャンヌは、声をした方向に向く。
「そんな顔するなって」
アキセも手足に鎖をつけて、捕まっていたのだ。
「なんでここにいるわけ。しかも捕まっているし」
「いや~ドジっちゃってさ」
アキセは、木の枝の上で寝ていた。
日が昇り、アキセが目を覚め、木の枝から降りようとした。降りた先に大きい水たまりがあり、そこから捕まったという。
ジャンヌは大きなため息をする。
「なんだよ。その大きなため息」
この男って奴はと呆れる。
いや、待った。アキセがこの部屋で拘束されている。あまりにも偶然にしてはできすぎている。
「まさか!使い魔たちに私のこと話したでしょ!」
「ちょいと話しただけだよ。まさか来るとは思わなかった」
うそだ。絶対わざと言った。一人じゃ抜け出せないから、呼び出すために使い魔に言ったんだ。じゃあなきゃ、今アキセがジャンヌに向かって舌を出していない。
「サイテイ!」
ジャンヌはこの鎖がなければ、一発殴りたい。
「やられたわりに元気だな」
「うるさい!」
「やっぱ火を扱う聖女でも相性があるんだな。水苦手なのか?」
嫌なところに突っかかる。
「話したくなかったけど苦手っていうか、より消耗が激しくなるだけ。すぐに『光』が無くなるの」
「へ~」
「何よ」
「これで確信とれた」
「何が?」
「君が水との相性がさ。ほぼ想像通りでよかった」
「まさかとは思うけど、それも確かめたくて・・・」
「長話はここまでにして、とりあえず逃げますか」
遮断された。
アキセは、手についた鎖を靴先に叩きつける。ガシャと音を鳴らし、鎖がバラバラに砕けた。アキセの手は自由の身となった。
「取れた取れた」
足についた鎖を外す。
「何したの?」
突然の出来事に目が点になる。
「この靴特別製でな。先端にカースネロを付けたんだ。こういう時の為にね」
カースネロは、魔術に使う『呪い』を含めた宝石。
それにとアキセは言いながら、靴の底を外し、何かを取り出す。それは、伸縮自在の杖だった。
「準備万端だろ」
アキセはドヤ顔をする。
アキセがジャンヌの鎖も外してもらう。
「立てるか」
アキセが手を伸ばしてきたが、手を出せなかった。それは、長く水に入ったおかげで体が冷え切っていたからだ。手を伸ばすよりも小さく体を縮め、どうにか温めようとする。
「仕方ないな」
杖で陣を描き、中指で弾く。ジャンヌに触れた途端、陣は塵状なり、ジャンヌに降りかかる。体が徐々に温まり、体を動かせる。
「これでいいだろ。本当に『光』がないんだな。俺の魔術が効いているほどだもんな」
アキセは小さく笑う。
魔術は、人間でも『呪い』を扱えるようにできた術。
『呪い』を利用しているので、『光』を扱える聖女にとって無効化させるが、無効化させるほどの『光』が残っていないため、魔術が効いている。
正確には、聖女は『呪い』の抗体を持っていないため、残っている『光』が、『呪い』に侵されないように聖女の体を守っている。
体が温め切ったので、ジャンヌは立ちあがる。
「だから、まともに戦えないわよ。それに脱出算段できてるの。多分、ここ水の中よ。魔女が作った」
「まあそこは考えてあるので、ご心配なく」
「それって・・・まさか泳いだりしないよね・・・」
「おいおい、そんな泳いで逃げるって・・・あれあれ?」
アキセが感づいた。
「何よ」
「もしかして、泳げないのか~」
いたずらな笑みで見つめてくるので、視線をそらす。
「まあそうだよな。火を使うもんな。水が苦手なのも泳げないのも仕方ないよな」
アキセが煽るように言うので、イラつく。
「もういいでしょ!さっさと行くよ!」
「あと寄りたいところあるけど」
「何よ」
「俺の指輪を取り返したいんだ」
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