42 / 155
第2章
第2話 女の国 後半②
しおりを挟む
「そういうことね」
ジャンヌは静かに言った。
「女王様は、この国を変えたいとおっしゃっていました。僕の為に・・・」
ロランは悔やんでいた。
「女王様も夢見てるな」
アキセが横から冷やかす。ロランはアキセに睨み返す。
「おまえ、女だけの国なんて他にもある。大半は魔女狩りの被害者だ」
魔女に関して浅知恵な者が多く、女であっただけで魔女として狩られることも少なくない。
「それにこの国は結構根深いと思うぞ。そう簡単に変われるもんか」
アキセは吐き捨てる。
「そんなことはありません!女王様と・・・同じ意見を持つ女性も増えてきました。今この国は変えようとしています!」
「そうはいくかね」
「聖女様!どうか・・・クレア様を・・・助けて下さい!」
ロランはアキセを無視して、ジャンヌに言った。
「あなたの気持ちは十分に分かった」
人間の間のもめごとには関わりたくないのが本心だった。
けど、サッフォーも怪しい。
おそらくロランは操られた。人を操作できる術はいくらでもある。魔女以外にも。それになぜ、管理下にあったロランが城ではなく、この監獄にしたのか。
訊く質問が増えた。
「ロラン。サッフォーは魔術が使えるの?」
「それは・・・わかりません・・・」
「そう・・・」
だとしたら。
「ジャンヌ~」
アキセが気安く呼んできた。視線を向けば、聞いてほしい顔をしている。
「俺のアドバイス訊きたいか」
「何よ。話したいの。あんたでしょ」
「ん~。後でセックスしてくれたら・・・」
ドン!
ジャンヌは近くの壁に裏拳をぶつける。壁にヒビが入った。
「いいから話せ」
「・・・はい」
軽く脅した。
「確かに人を操る術はあるが、それは対象になる相手に術か陣を描けないと無理だ。ということは?」
アキセの言いたいことは分かる。魔術師ではない。
次に考えられるのは魔族(アビス)。
この国に魔女の頭を持つとしたら、魔族が扱えるほどの力を持ち合わせていない。
「ロラン。私は魔女以外に人助けするほど、そこまでお人よしじゃない。けど、あなたが私にせがむってことは・・・」
もし推測が当たっていたら、厄介者がもう一人増えることになる。
「分かっています。僕・・・見たんです・・・サッフォーが・・・」
その時だった。
急に物音がした。誰かが近づいていた。
暗闇から現れたのは、女の頭を持った看守だった。
「もしかして・・・」
アガタが言っていた噂の魔女の頭だろう。頭だけになっても眠っているようだった。
持っている女は、目が生きていない。操られている。
頭だけの魔女が急に眼を覚ます。
「見~つけた!」
子供のように声を高く上げた瞬間、天井が割れた。瓦礫の山から目の前に昼に講演会で現れたフードをかぶった魔女が立っていた。
魔女はすかさず頭の方へ駆けつける。
「しまった・・・」
魔女は、看守を蹴散らし、魔女の頭を持ち上げる。
フードを下ろされた首をない姿を露わし、首に付ける。
「やった・・・やったあああああああああああああ!」
頭を取り戻せたことに喜ぶ魔女は、大きく体を回りながら、着ていた服を抜き捨てる。つぎはぎの体を露わする。
「さあ!戻った記念にこの町で分解の魔女ジュノ・デュラハンが暴れるわよ!」
その時、壁に赤い陣が光出す。
「これって・・・」
爆発だった。
ジャンヌは咄嗟に白い炎で包まれていたので、爆発に巻き込まなくて済んだ。
「もう何よ。魔女といい。爆発が起きるって」
監獄が半壊していた。所々穴が空き、壁や天井が壊されていた。その中で死体になっている者がいれば、運が良く、陽気に逃げ出す脱走者の声がした。
アキセとロランの姿がなかった。
アキセはまだしても、ロランが心配だ。瓦礫に埋もれてしまったのだろうか。
「ロラン!」
ジャンヌはロランを探す。
「聖女様!」
瓦礫からロランが姿を出す。
「とりあえず無事ね。でも・・・」
あの爆発で無傷で済んでいる。
だとしたら。
「おいおい。俺の心配しないのかよ」
アキセが何知らずに瓦礫から出る。
「まさかとは思うけど、ロランを助けてくれたの?」
いつの間にか、手枷を外し、指に指輪をはめていた。指輪は見つけたようだ。
アキセの性格上、人助けするような人柄ではない。おそらく。
「これから使うのにな」
やはり、ロランに何かやらせるつもりだ。
「これから?」
アキセに言おうとした時だった。
遠くから轟音が響いた。
あの爆発でジュノは死なない。魔女が暴れている。
「いいのか。魔女が暴れているぞ」
「たく」
ジャンヌは魔女を追いかける。
アキセは、咄嗟に魔術で結界を作り、爆発から逃れた。
爆発を仕掛けられたのは分かっていた。そこでこっそり魔術を仕掛けておいた。爆発した時に結界を発動するように。
ジャンヌがいない間に次の行動を実行する。
アキセは服と指飾り召喚した。魔術の杖の一つである指飾りで陣を描いていく。
「なぜ、助けた?」
ロランがアキセに聞く。
「あ~嫌がらせに」
「は?」
完成した陣をスライドしながら、ロランに飛ばす。
陣がロランに触れたとたんに消える。
転送の術。陣に転送の記号を書き込み、方位、時間、距離など指定するものを描けば転送できる仕組み。
「さて、どうやって懲らしめようかな」
アキセはにやっと笑う。
ジャンヌは静かに言った。
「女王様は、この国を変えたいとおっしゃっていました。僕の為に・・・」
ロランは悔やんでいた。
「女王様も夢見てるな」
アキセが横から冷やかす。ロランはアキセに睨み返す。
「おまえ、女だけの国なんて他にもある。大半は魔女狩りの被害者だ」
魔女に関して浅知恵な者が多く、女であっただけで魔女として狩られることも少なくない。
「それにこの国は結構根深いと思うぞ。そう簡単に変われるもんか」
アキセは吐き捨てる。
「そんなことはありません!女王様と・・・同じ意見を持つ女性も増えてきました。今この国は変えようとしています!」
「そうはいくかね」
「聖女様!どうか・・・クレア様を・・・助けて下さい!」
ロランはアキセを無視して、ジャンヌに言った。
「あなたの気持ちは十分に分かった」
人間の間のもめごとには関わりたくないのが本心だった。
けど、サッフォーも怪しい。
おそらくロランは操られた。人を操作できる術はいくらでもある。魔女以外にも。それになぜ、管理下にあったロランが城ではなく、この監獄にしたのか。
訊く質問が増えた。
「ロラン。サッフォーは魔術が使えるの?」
「それは・・・わかりません・・・」
「そう・・・」
だとしたら。
「ジャンヌ~」
アキセが気安く呼んできた。視線を向けば、聞いてほしい顔をしている。
「俺のアドバイス訊きたいか」
「何よ。話したいの。あんたでしょ」
「ん~。後でセックスしてくれたら・・・」
ドン!
ジャンヌは近くの壁に裏拳をぶつける。壁にヒビが入った。
「いいから話せ」
「・・・はい」
軽く脅した。
「確かに人を操る術はあるが、それは対象になる相手に術か陣を描けないと無理だ。ということは?」
アキセの言いたいことは分かる。魔術師ではない。
次に考えられるのは魔族(アビス)。
この国に魔女の頭を持つとしたら、魔族が扱えるほどの力を持ち合わせていない。
「ロラン。私は魔女以外に人助けするほど、そこまでお人よしじゃない。けど、あなたが私にせがむってことは・・・」
もし推測が当たっていたら、厄介者がもう一人増えることになる。
「分かっています。僕・・・見たんです・・・サッフォーが・・・」
その時だった。
急に物音がした。誰かが近づいていた。
暗闇から現れたのは、女の頭を持った看守だった。
「もしかして・・・」
アガタが言っていた噂の魔女の頭だろう。頭だけになっても眠っているようだった。
持っている女は、目が生きていない。操られている。
頭だけの魔女が急に眼を覚ます。
「見~つけた!」
子供のように声を高く上げた瞬間、天井が割れた。瓦礫の山から目の前に昼に講演会で現れたフードをかぶった魔女が立っていた。
魔女はすかさず頭の方へ駆けつける。
「しまった・・・」
魔女は、看守を蹴散らし、魔女の頭を持ち上げる。
フードを下ろされた首をない姿を露わし、首に付ける。
「やった・・・やったあああああああああああああ!」
頭を取り戻せたことに喜ぶ魔女は、大きく体を回りながら、着ていた服を抜き捨てる。つぎはぎの体を露わする。
「さあ!戻った記念にこの町で分解の魔女ジュノ・デュラハンが暴れるわよ!」
その時、壁に赤い陣が光出す。
「これって・・・」
爆発だった。
ジャンヌは咄嗟に白い炎で包まれていたので、爆発に巻き込まなくて済んだ。
「もう何よ。魔女といい。爆発が起きるって」
監獄が半壊していた。所々穴が空き、壁や天井が壊されていた。その中で死体になっている者がいれば、運が良く、陽気に逃げ出す脱走者の声がした。
アキセとロランの姿がなかった。
アキセはまだしても、ロランが心配だ。瓦礫に埋もれてしまったのだろうか。
「ロラン!」
ジャンヌはロランを探す。
「聖女様!」
瓦礫からロランが姿を出す。
「とりあえず無事ね。でも・・・」
あの爆発で無傷で済んでいる。
だとしたら。
「おいおい。俺の心配しないのかよ」
アキセが何知らずに瓦礫から出る。
「まさかとは思うけど、ロランを助けてくれたの?」
いつの間にか、手枷を外し、指に指輪をはめていた。指輪は見つけたようだ。
アキセの性格上、人助けするような人柄ではない。おそらく。
「これから使うのにな」
やはり、ロランに何かやらせるつもりだ。
「これから?」
アキセに言おうとした時だった。
遠くから轟音が響いた。
あの爆発でジュノは死なない。魔女が暴れている。
「いいのか。魔女が暴れているぞ」
「たく」
ジャンヌは魔女を追いかける。
アキセは、咄嗟に魔術で結界を作り、爆発から逃れた。
爆発を仕掛けられたのは分かっていた。そこでこっそり魔術を仕掛けておいた。爆発した時に結界を発動するように。
ジャンヌがいない間に次の行動を実行する。
アキセは服と指飾り召喚した。魔術の杖の一つである指飾りで陣を描いていく。
「なぜ、助けた?」
ロランがアキセに聞く。
「あ~嫌がらせに」
「は?」
完成した陣をスライドしながら、ロランに飛ばす。
陣がロランに触れたとたんに消える。
転送の術。陣に転送の記号を書き込み、方位、時間、距離など指定するものを描けば転送できる仕組み。
「さて、どうやって懲らしめようかな」
アキセはにやっと笑う。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる