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第2章

第2話 女の国 後半②

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「そういうことね」
 ジャンヌは静かに言った。
「女王様は、この国を変えたいとおっしゃっていました。僕の為に・・・」
 ロランは悔やんでいた。
「女王様も夢見てるな」
 アキセが横から冷やかす。ロランはアキセに睨み返す。
「おまえ、女だけの国なんて他にもある。大半は魔女狩りの被害者だ」
 魔女に関して浅知恵な者が多く、女であっただけで魔女として狩られることも少なくない。
「それにこの国は結構根深いと思うぞ。そう簡単に変われるもんか」
 アキセは吐き捨てる。
「そんなことはありません!女王様と・・・同じ意見を持つ女性も増えてきました。今この国は変えようとしています!」
「そうはいくかね」
「聖女様!どうか・・・クレア様を・・・助けて下さい!」
 ロランはアキセを無視して、ジャンヌに言った。
「あなたの気持ちは十分に分かった」
 人間の間のもめごとには関わりたくないのが本心だった。
 けど、サッフォーも怪しい。
おそらくロランは操られた。人を操作できる術はいくらでもある。魔女以外にも。それになぜ、管理下にあったロランが城ではなく、この監獄にしたのか。
 訊く質問が増えた。
「ロラン。サッフォーは魔術が使えるの?」
「それは・・・わかりません・・・」
「そう・・・」
 だとしたら。
「ジャンヌ~」
 アキセが気安く呼んできた。視線を向けば、聞いてほしい顔をしている。
「俺のアドバイス訊きたいか」
「何よ。話したいの。あんたでしょ」
「ん~。後でセックスしてくれたら・・・」
 ドン!
 ジャンヌは近くの壁に裏拳をぶつける。壁にヒビが入った。
「いいから話せ」
「・・・はい」
 軽く脅した。
「確かに人を操る術はあるが、それは対象になる相手に術か陣を描けないと無理だ。ということは?」
 アキセの言いたいことは分かる。魔術師ではない。
 次に考えられるのは魔族(アビス)。
この国に魔女の頭を持つとしたら、魔族が扱えるほどの力を持ち合わせていない。 
「ロラン。私は魔女以外に人助けするほど、そこまでお人よしじゃない。けど、あなたが私にせがむってことは・・・」
もし推測が当たっていたら、厄介者がもう一人増えることになる。
「分かっています。僕・・・見たんです・・・サッフォーが・・・」
 その時だった。
 急に物音がした。誰かが近づいていた。
 暗闇から現れたのは、女の頭を持った看守だった。
「もしかして・・・」
 アガタが言っていた噂の魔女の頭だろう。頭だけになっても眠っているようだった。
 持っている女は、目が生きていない。操られている。
 頭だけの魔女が急に眼を覚ます。
「見~つけた!」
 子供のように声を高く上げた瞬間、天井が割れた。瓦礫の山から目の前に昼に講演会で現れたフードをかぶった魔女が立っていた。 
 魔女はすかさず頭の方へ駆けつける。
「しまった・・・」
 魔女は、看守を蹴散らし、魔女の頭を持ち上げる。
 フードを下ろされた首をない姿を露わし、首に付ける。
「やった・・・やったあああああああああああああ!」
 頭を取り戻せたことに喜ぶ魔女は、大きく体を回りながら、着ていた服を抜き捨てる。つぎはぎの体を露わする。
「さあ!戻った記念にこの町で分解の魔女ジュノ・デュラハンが暴れるわよ!」
 その時、壁に赤い陣が光出す。
「これって・・・」
 爆発だった。


 ジャンヌは咄嗟に白い炎で包まれていたので、爆発に巻き込まなくて済んだ。
「もう何よ。魔女といい。爆発が起きるって」
監獄が半壊していた。所々穴が空き、壁や天井が壊されていた。その中で死体になっている者がいれば、運が良く、陽気に逃げ出す脱走者の声がした。
 アキセとロランの姿がなかった。
 アキセはまだしても、ロランが心配だ。瓦礫に埋もれてしまったのだろうか。
「ロラン!」
 ジャンヌはロランを探す。
「聖女様!」
 瓦礫からロランが姿を出す。
「とりあえず無事ね。でも・・・」
 あの爆発で無傷で済んでいる。
 だとしたら。
「おいおい。俺の心配しないのかよ」
 アキセが何知らずに瓦礫から出る。
「まさかとは思うけど、ロランを助けてくれたの?」
 いつの間にか、手枷を外し、指に指輪をはめていた。指輪は見つけたようだ。
 アキセの性格上、人助けするような人柄ではない。おそらく。
「これから使うのにな」
やはり、ロランに何かやらせるつもりだ。
「これから?」
 アキセに言おうとした時だった。
 遠くから轟音が響いた。
 あの爆発でジュノは死なない。魔女が暴れている。
「いいのか。魔女が暴れているぞ」
「たく」
 ジャンヌは魔女を追いかける。



 アキセは、咄嗟に魔術で結界を作り、爆発から逃れた。
 爆発を仕掛けられたのは分かっていた。そこでこっそり魔術を仕掛けておいた。爆発した時に結界を発動するように。
 ジャンヌがいない間に次の行動を実行する。
 アキセは服と指飾り召喚した。魔術の杖の一つである指飾りで陣を描いていく。
「なぜ、助けた?」
 ロランがアキセに聞く。
「あ~嫌がらせに」
「は?」
 完成した陣をスライドしながら、ロランに飛ばす。
 陣がロランに触れたとたんに消える。
 転送の術。陣に転送の記号を書き込み、方位、時間、距離など指定するものを描けば転送できる仕組み。
「さて、どうやって懲らしめようかな」
 アキセはにやっと笑う。
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