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第2章
第1話 工作の魔女④
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「やべえ、ジャンヌと離れた」
アキセは、ジャンヌと別れ、5体の鎧の人形と戦っている最中だった。
銃を召喚し、鎧の人形に打っていたが、普通の弾では弾かれるだけでダメージを与えられない。魔女が作っただけはある。
作戦を変える。
――たぶん、これが効くはず。
魔術師は、陣を描くだけでは、後衛しか役割がない。
魔術師がより実戦するために陣を描く手間を減らすことで開発されたのが、銃型の杖である。陣や術を込めた弾を銃に打ち出し、魔術を発動する。
今回は、魔宝石の中に陣や記号を刻んだ弾、刻印弾を銃のグリップに装着する。刻印弾を大気中の『呪い』に触れることで半永久的に吸収ができる。
後は、自身の気力を刻印弾に込めて打ち出す。
この術は、雷の槍を生み出し、当たった途端に四方八方に広がり、電撃を与える。
弾は、雷の槍が生み出し、鎧の人形たちを襲いかかる。
鎧の人形は、痺れを効いたのか動きが鈍くなり、雷の槍が消えた時には、動かなくなった。
やはり、雷が弱点だった。鉄は雷が流れやすい性質を持つ。この性質を知っているのも多くはないだろう。
安堵の溜息をした時だった。
ドスっと巨大な岩が落としたような音と共に小さく揺れる。
顔を上げれば、目の前に巨大な鉄の塊が立っていた。
ジャンヌを追いかけた巨漢な鎧人形と比べたら小さいが、2階立ての家くらい大きさ、全体的に丸い鉄の人形だった。
「やっと二人きりになったな!」
鉄の人形から、枯れたような女の声がした。
「げ、コルンか!」
アキセは、鉄の人形に向かって叫ぶ。
「また変なモノを作ったな・・・」
呆れる声をこぼす。
「うるさいうるさいうるさーい!変なモノなんて言うな!てっちゃん32号だ!わいの発明品をバカにした奴は敵だ!」
鉄の人形の手が分解し、銃へと再構築した。
「ヤバ・・・」
冷や汗をかく。
しかも再構築した銃は連射式だった。
バババン!
素早く指飾りで描いた陣で弾の雨を魔術の盾で防ぐ。
弾は周辺の建物に跳弾する。
アキセは盾を押し出し、打ってくる弾を跳ね返しながら、てっちゃん32号にぶつける。
その隙に銃をてっちゃん32号に向かって打つ。弾が当った瞬間、雷がてっちゃん32号を包み込むように走る。
「ぎゃああああ!」
効いた。てっちゃん32号の動きが鈍くなり、尻餅をつく。
「よし、今の内に!」とアキセが走り出すが、
「逃がすが!」
コルンは、痺れがとれたようで、てっちゃん32号から何かが発射された。
確認するよりも早くこの場を走るアキセだったが、壁に衝突する。
「イって・・・」
衝撃の正体は、トリモチがアキセごと壁にくっついていた。腹中央にトリモチが張り付いた。腕と足がぶら下がっている状態だった。腕を動かそうにもちょうど関節までトリモチが広がっているため、動かせない。
「げ!」
冷や汗をかくアキセ。こんな子供でも考えるような攻撃を受けたことに腹が立って仕方がない。
「やっと捕まえたぞ!」
てっちゃん32号が立ち上がって、睨みついている。
「ちょっと待った!まず話し合おうじゃないか!」
「おまえなんかにそんな権利はない!」
てっちゃん32号の手が腕の中に引っ込み、円形のノコギリに変え、ギイと耳障りな音を出す
「ちょ・・・」
冷や汗をかく。
「その腕を切ってやる!」
「腕切るところてか、俺が死ぬ!」
「くたばって死ねえ!」
万事休すかとアキセがあきらめかけ、コルンがノコギリの刃を下ろす時だった。
てっちゃん32号に何かが当たった。
「わわわわわ~」
バランスを崩して倒れる。
てっちゃん32号をぶつけた正体は、そぎ取られた腕のような部品だった。
「これって・・・」
「見~つ~け~たあああああああ!」
唐突の低い声にアキセは視線を変える。
壊れた鉄の部品を引きずりながら現れたジャンヌが、怒りの顔を見せる。
「あれ・・・なんか怒ってるし・・・それに汚れているし・・・」
ジャンヌの体は、所々トリモチが付き、汚れていた。
てっちゃん32号が起き上がる。
「あ~ワイの発明品が~」
コルンは、ジャンヌが投げた壊れた鉄の部品を見て、悲しく叫ぶ。
「おい!コルン!ジャンヌに何をしたんだ!ちょー怒っているぞ!あの聖女様はな!切れやすい男勝りの聖女なんだぞ!何をしてかすか・・・ぐえ!」
アキセに向かって壊れた鉄塊を投げつける。
「何、だって」
ジャンヌは鋭い目つきでアキセににらみつける。
「すみません・・・」
ジャンヌの枯渇さに素直に謝る。
「よくもなめたまねしてくれたわねえ!」
ジャンヌはコルンに向かって怒声を上げる。
「ふん!聖女なん・・・」
唐突にてっちゃん32号の頭が切れた。
ジャンヌが目にもとまらない速さで切った。
かなり切れている。
「ちょっと!頭を切るな!」
頭を失くした鉄の人形になっても倒れることはなかった。
「ち!死んでねえか」
悪態をつけながら、鋭い目つきをするジャンヌ。
「もう!許さん!」
てっちゃん32号の腕が伸びるが、ジャンヌはよけながら、ロザリオを横に振るい、白い炎を生み出す。
てっちゃん32号は緑色の盾を包んだことで、白い炎が消える。
「そんなの対策済みだーい。バーカ!」
「あ!」
ガンをつけるジャンヌが声を張りつける。
てっちゃん32号の腹から銃が打ち出す。
ジャンヌは、弾を避けながら町の奥へ逃げる。
「逃がすか!」
コルンは、ジャンヌを追いかける。
「え?俺、このままなの・・・」
壁にトリモチで身動きが取れないアキセは呟く。
アキセは、ジャンヌと別れ、5体の鎧の人形と戦っている最中だった。
銃を召喚し、鎧の人形に打っていたが、普通の弾では弾かれるだけでダメージを与えられない。魔女が作っただけはある。
作戦を変える。
――たぶん、これが効くはず。
魔術師は、陣を描くだけでは、後衛しか役割がない。
魔術師がより実戦するために陣を描く手間を減らすことで開発されたのが、銃型の杖である。陣や術を込めた弾を銃に打ち出し、魔術を発動する。
今回は、魔宝石の中に陣や記号を刻んだ弾、刻印弾を銃のグリップに装着する。刻印弾を大気中の『呪い』に触れることで半永久的に吸収ができる。
後は、自身の気力を刻印弾に込めて打ち出す。
この術は、雷の槍を生み出し、当たった途端に四方八方に広がり、電撃を与える。
弾は、雷の槍が生み出し、鎧の人形たちを襲いかかる。
鎧の人形は、痺れを効いたのか動きが鈍くなり、雷の槍が消えた時には、動かなくなった。
やはり、雷が弱点だった。鉄は雷が流れやすい性質を持つ。この性質を知っているのも多くはないだろう。
安堵の溜息をした時だった。
ドスっと巨大な岩が落としたような音と共に小さく揺れる。
顔を上げれば、目の前に巨大な鉄の塊が立っていた。
ジャンヌを追いかけた巨漢な鎧人形と比べたら小さいが、2階立ての家くらい大きさ、全体的に丸い鉄の人形だった。
「やっと二人きりになったな!」
鉄の人形から、枯れたような女の声がした。
「げ、コルンか!」
アキセは、鉄の人形に向かって叫ぶ。
「また変なモノを作ったな・・・」
呆れる声をこぼす。
「うるさいうるさいうるさーい!変なモノなんて言うな!てっちゃん32号だ!わいの発明品をバカにした奴は敵だ!」
鉄の人形の手が分解し、銃へと再構築した。
「ヤバ・・・」
冷や汗をかく。
しかも再構築した銃は連射式だった。
バババン!
素早く指飾りで描いた陣で弾の雨を魔術の盾で防ぐ。
弾は周辺の建物に跳弾する。
アキセは盾を押し出し、打ってくる弾を跳ね返しながら、てっちゃん32号にぶつける。
その隙に銃をてっちゃん32号に向かって打つ。弾が当った瞬間、雷がてっちゃん32号を包み込むように走る。
「ぎゃああああ!」
効いた。てっちゃん32号の動きが鈍くなり、尻餅をつく。
「よし、今の内に!」とアキセが走り出すが、
「逃がすが!」
コルンは、痺れがとれたようで、てっちゃん32号から何かが発射された。
確認するよりも早くこの場を走るアキセだったが、壁に衝突する。
「イって・・・」
衝撃の正体は、トリモチがアキセごと壁にくっついていた。腹中央にトリモチが張り付いた。腕と足がぶら下がっている状態だった。腕を動かそうにもちょうど関節までトリモチが広がっているため、動かせない。
「げ!」
冷や汗をかくアキセ。こんな子供でも考えるような攻撃を受けたことに腹が立って仕方がない。
「やっと捕まえたぞ!」
てっちゃん32号が立ち上がって、睨みついている。
「ちょっと待った!まず話し合おうじゃないか!」
「おまえなんかにそんな権利はない!」
てっちゃん32号の手が腕の中に引っ込み、円形のノコギリに変え、ギイと耳障りな音を出す
「ちょ・・・」
冷や汗をかく。
「その腕を切ってやる!」
「腕切るところてか、俺が死ぬ!」
「くたばって死ねえ!」
万事休すかとアキセがあきらめかけ、コルンがノコギリの刃を下ろす時だった。
てっちゃん32号に何かが当たった。
「わわわわわ~」
バランスを崩して倒れる。
てっちゃん32号をぶつけた正体は、そぎ取られた腕のような部品だった。
「これって・・・」
「見~つ~け~たあああああああ!」
唐突の低い声にアキセは視線を変える。
壊れた鉄の部品を引きずりながら現れたジャンヌが、怒りの顔を見せる。
「あれ・・・なんか怒ってるし・・・それに汚れているし・・・」
ジャンヌの体は、所々トリモチが付き、汚れていた。
てっちゃん32号が起き上がる。
「あ~ワイの発明品が~」
コルンは、ジャンヌが投げた壊れた鉄の部品を見て、悲しく叫ぶ。
「おい!コルン!ジャンヌに何をしたんだ!ちょー怒っているぞ!あの聖女様はな!切れやすい男勝りの聖女なんだぞ!何をしてかすか・・・ぐえ!」
アキセに向かって壊れた鉄塊を投げつける。
「何、だって」
ジャンヌは鋭い目つきでアキセににらみつける。
「すみません・・・」
ジャンヌの枯渇さに素直に謝る。
「よくもなめたまねしてくれたわねえ!」
ジャンヌはコルンに向かって怒声を上げる。
「ふん!聖女なん・・・」
唐突にてっちゃん32号の頭が切れた。
ジャンヌが目にもとまらない速さで切った。
かなり切れている。
「ちょっと!頭を切るな!」
頭を失くした鉄の人形になっても倒れることはなかった。
「ち!死んでねえか」
悪態をつけながら、鋭い目つきをするジャンヌ。
「もう!許さん!」
てっちゃん32号の腕が伸びるが、ジャンヌはよけながら、ロザリオを横に振るい、白い炎を生み出す。
てっちゃん32号は緑色の盾を包んだことで、白い炎が消える。
「そんなの対策済みだーい。バーカ!」
「あ!」
ガンをつけるジャンヌが声を張りつける。
てっちゃん32号の腹から銃が打ち出す。
ジャンヌは、弾を避けながら町の奥へ逃げる。
「逃がすか!」
コルンは、ジャンヌを追いかける。
「え?俺、このままなの・・・」
壁にトリモチで身動きが取れないアキセは呟く。
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