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第1章
第5話 ナリカケ 前半①
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赤く染まった空が徐々に暗くなった頃だった。
「もう夜になるか~」とジャンヌは呟きながら、森の中を歩いていた。
あれから、アキセとは会っていない。
尋問しようと捕まえ、さらに仕返しに魔法少女とふさげたペルチェと戦わせて以来、アキセは姿を消している。
これまでのアキセについてジャンヌは整理しながら歩いていた。
まず、アキセはただの人間ではなく、人間と魔族(アビス)の血を混ざったハーフ。人間の匂いが混じっていたからグレモリーをだました。
それに『光』を奪ったあの魔力。人間の技で得られない代物だ。蛇の毒で死にかけたのも、あの魔力で毒を抜き取った。『光』を盗み出せるほど『光』に抗体を持っている。
おおよそ把握できた。あと疑問残っているとしたら、魔族(アビス)の正体だけだった。予想はついている。もし予想が当たったとしても、そこまで重要なことでもない。どちらかといえば、恨みをまとめて払いたいところだか、アキセとはこれ以上関わりたくない。
そう願いたい。普段なら白女神(ヴァイス)に祈らないが、これだけはもう神頼みしかない。この願いが成就してほしいと思った時だった。
不気味な声が響いた。
聞きなれない。この世の生物の声とは思えなかった。
森の奥から黒いモヤが広がり、触れた木たちは枯れていく。
『呪い』の濃度が上昇すると、黒いモヤが発生し、生命を奪われる。
すっかり夜となった今、月は出でいる。月から出る『光』で抑えきれないほどの『呪い』が異常発生している。
原因を探るため、ジャンヌは黒いモヤに向かう。
ジャンヌは枯れ木に隠れ、様子を見ていた。
木より大きい怪物から大量の『呪い』が発生している。つまり彼女らは、『呪い』を散らばる魔女であること。
一つは、ムカデのような魔女。
上半身は女の体。虫目。虫の口。手がカマキリのような刃を持っている。下半身がムカデのようにどこまでも長い。
もう一つは、ナメクジのような魔女。
体の形が保ってなく、液体のような体で周りの地面が溶けだしている。
その魔女から『呪い』が溢れ、周囲の木を枯れていた。
さらに魔女は、何かを食べていた。よく見れば、頭、手足などの体があちこちに散らばっていた。人間の体ではない。その体から『呪い』が漏れている。大方魔女を食べていた。しかも大量に。
「このままだとヤバい・・・」
魔女が共食いをしている。『ナリカケ』になっている。
魔女は、黒女神(シュバルツ)から残した『呪い』で生まれた存在。
共食いをし、『呪い』を吸収し、より力を増す。『ナリカケ』へと黒女神(シュバルツ)の初期段階になる。やがて魔女をさらに食い尽くし、黒女神(シュバルツ)になると言われている。
聖女が魔女狩りをするのは、『呪い』と『光』の秩序を守るだけでなく、黒女神(シュバルツ)の復活の阻止が最大の目的である。
黒女神(シュバルツ)になるというのもただの仮説でしかない。実際、魔女から黒女神(シュバルツ)になりかけたのは、過去で1,2回と聞いている。聖女総意で戦ったと訊いたくらいだ。
今の段階では、まだ一人で対応できる。
これ以上共食いをさせないために退治しなければと考えた時だった。
ムカデの魔女は、何かを感じたらしく、周囲を見回している。
気付かれたか。息を殺し、枯れ木に身を隠す。
「アノオンナノ・・・ニオイガスル・・・」
ムカデの魔女が言った。
あの女とは一体誰の事だろうか。
「ニクイ・・・ニクイ・・・」
ナメクジの魔女も言った。
ムカデの魔女は別の方向に走り出し、ナメクジの魔女も後を追うように走り出す。魔女により木を押し倒し、溶かされた道が広がった。
ジャンヌも魔女たちを追いかける。
魔女たちに追いつき、木の陰で様子を見た。
二つの魔女は、人を襲っていた。
フード付きのローブで体中覆われ、顔の判断がつかなかったが、ムカデの魔女が大きく振った刃をかわした際にフードが下され、姿を露わにされた。
女で耳が長かった。
「エルフ?」
エルフは、人から魔族(アビス)化した種族。長い耳。美麗。長寿の特徴を持つ。
何かを詩っている。
「あれは精霊術…確かエルフ語で自然を操る術」
エルフは、自然とともに生きている種族で精霊を見聞き、自然を操る。
自然には精霊が宿っている。
精霊は、宿っている自然が汚されない限り、『光』や『呪い』に強い存在。しかし、『呪い』で自然を穢しているため、弱体する欠点を持つ。
エルフしか使えないエルフ語で詩いながら精霊に指示を与え、自然を操る術を精霊術と言われている。
エルフは、エルフ語で詩いながら、ムカデの魔女の足元の地面が割り、体の半分を地面の中へと落とす。地面が再構成し、身動きを封じようとしているが、エルフの元に何かが飛んできた。
エルフは避ける。
飛んできたものは、木にぶつかり、木を溶かす。
どうやら溶解液のようで、ナメクジの魔女がエルフの邪魔をしている。
それでもエルフは、詩をやめることなく詩う。詩えきったのか、ムカデの魔女は地面を固め、身動きを封じる。しかし、『ナリカケ』の魔女が相手では長くは持たない。
そこにナメクジの魔女は、間を空けることなく、エルフを襲いかかる。
あのエルフは『ナリカケ』と関係がある。事情を知るためにエルフを救出しなければ。
ジャンヌは、白い炎の球をナメクジの魔女の顔に当てる。
ナメクジの魔女は、叫び苦しむ。ムカデの魔女は身動きを封じている。今しか逃げるチャンスがない。
木の陰から飛び出し、急いでエルフの元に走り出す。
「逃げるよ!」
エルフも応じたのか、一緒に逃げてくれた。
どうにか魔女から逃れた。必死に走ったため、息が上がっている。
「あなた、大丈夫?」
「ああ」
女にしては、低い声だった。それに妙な違和感がする。
改めてみると白いワイシャツに膝までのスカートをはいているエルフの少女だった。
「おかげで助かりました。ではここで」
エルフは立ち去ろうとした。
「ちょっと待って!まだ話が・・・」
ジャンヌがエルフの腕を掴んだ瞬間、ローブや服が破れた。
まさか服が破くとは思ってなく、目が点になる。それだけではない。女にないものを彼が持っていることだった。
「もう夜になるか~」とジャンヌは呟きながら、森の中を歩いていた。
あれから、アキセとは会っていない。
尋問しようと捕まえ、さらに仕返しに魔法少女とふさげたペルチェと戦わせて以来、アキセは姿を消している。
これまでのアキセについてジャンヌは整理しながら歩いていた。
まず、アキセはただの人間ではなく、人間と魔族(アビス)の血を混ざったハーフ。人間の匂いが混じっていたからグレモリーをだました。
それに『光』を奪ったあの魔力。人間の技で得られない代物だ。蛇の毒で死にかけたのも、あの魔力で毒を抜き取った。『光』を盗み出せるほど『光』に抗体を持っている。
おおよそ把握できた。あと疑問残っているとしたら、魔族(アビス)の正体だけだった。予想はついている。もし予想が当たったとしても、そこまで重要なことでもない。どちらかといえば、恨みをまとめて払いたいところだか、アキセとはこれ以上関わりたくない。
そう願いたい。普段なら白女神(ヴァイス)に祈らないが、これだけはもう神頼みしかない。この願いが成就してほしいと思った時だった。
不気味な声が響いた。
聞きなれない。この世の生物の声とは思えなかった。
森の奥から黒いモヤが広がり、触れた木たちは枯れていく。
『呪い』の濃度が上昇すると、黒いモヤが発生し、生命を奪われる。
すっかり夜となった今、月は出でいる。月から出る『光』で抑えきれないほどの『呪い』が異常発生している。
原因を探るため、ジャンヌは黒いモヤに向かう。
ジャンヌは枯れ木に隠れ、様子を見ていた。
木より大きい怪物から大量の『呪い』が発生している。つまり彼女らは、『呪い』を散らばる魔女であること。
一つは、ムカデのような魔女。
上半身は女の体。虫目。虫の口。手がカマキリのような刃を持っている。下半身がムカデのようにどこまでも長い。
もう一つは、ナメクジのような魔女。
体の形が保ってなく、液体のような体で周りの地面が溶けだしている。
その魔女から『呪い』が溢れ、周囲の木を枯れていた。
さらに魔女は、何かを食べていた。よく見れば、頭、手足などの体があちこちに散らばっていた。人間の体ではない。その体から『呪い』が漏れている。大方魔女を食べていた。しかも大量に。
「このままだとヤバい・・・」
魔女が共食いをしている。『ナリカケ』になっている。
魔女は、黒女神(シュバルツ)から残した『呪い』で生まれた存在。
共食いをし、『呪い』を吸収し、より力を増す。『ナリカケ』へと黒女神(シュバルツ)の初期段階になる。やがて魔女をさらに食い尽くし、黒女神(シュバルツ)になると言われている。
聖女が魔女狩りをするのは、『呪い』と『光』の秩序を守るだけでなく、黒女神(シュバルツ)の復活の阻止が最大の目的である。
黒女神(シュバルツ)になるというのもただの仮説でしかない。実際、魔女から黒女神(シュバルツ)になりかけたのは、過去で1,2回と聞いている。聖女総意で戦ったと訊いたくらいだ。
今の段階では、まだ一人で対応できる。
これ以上共食いをさせないために退治しなければと考えた時だった。
ムカデの魔女は、何かを感じたらしく、周囲を見回している。
気付かれたか。息を殺し、枯れ木に身を隠す。
「アノオンナノ・・・ニオイガスル・・・」
ムカデの魔女が言った。
あの女とは一体誰の事だろうか。
「ニクイ・・・ニクイ・・・」
ナメクジの魔女も言った。
ムカデの魔女は別の方向に走り出し、ナメクジの魔女も後を追うように走り出す。魔女により木を押し倒し、溶かされた道が広がった。
ジャンヌも魔女たちを追いかける。
魔女たちに追いつき、木の陰で様子を見た。
二つの魔女は、人を襲っていた。
フード付きのローブで体中覆われ、顔の判断がつかなかったが、ムカデの魔女が大きく振った刃をかわした際にフードが下され、姿を露わにされた。
女で耳が長かった。
「エルフ?」
エルフは、人から魔族(アビス)化した種族。長い耳。美麗。長寿の特徴を持つ。
何かを詩っている。
「あれは精霊術…確かエルフ語で自然を操る術」
エルフは、自然とともに生きている種族で精霊を見聞き、自然を操る。
自然には精霊が宿っている。
精霊は、宿っている自然が汚されない限り、『光』や『呪い』に強い存在。しかし、『呪い』で自然を穢しているため、弱体する欠点を持つ。
エルフしか使えないエルフ語で詩いながら精霊に指示を与え、自然を操る術を精霊術と言われている。
エルフは、エルフ語で詩いながら、ムカデの魔女の足元の地面が割り、体の半分を地面の中へと落とす。地面が再構成し、身動きを封じようとしているが、エルフの元に何かが飛んできた。
エルフは避ける。
飛んできたものは、木にぶつかり、木を溶かす。
どうやら溶解液のようで、ナメクジの魔女がエルフの邪魔をしている。
それでもエルフは、詩をやめることなく詩う。詩えきったのか、ムカデの魔女は地面を固め、身動きを封じる。しかし、『ナリカケ』の魔女が相手では長くは持たない。
そこにナメクジの魔女は、間を空けることなく、エルフを襲いかかる。
あのエルフは『ナリカケ』と関係がある。事情を知るためにエルフを救出しなければ。
ジャンヌは、白い炎の球をナメクジの魔女の顔に当てる。
ナメクジの魔女は、叫び苦しむ。ムカデの魔女は身動きを封じている。今しか逃げるチャンスがない。
木の陰から飛び出し、急いでエルフの元に走り出す。
「逃げるよ!」
エルフも応じたのか、一緒に逃げてくれた。
どうにか魔女から逃れた。必死に走ったため、息が上がっている。
「あなた、大丈夫?」
「ああ」
女にしては、低い声だった。それに妙な違和感がする。
改めてみると白いワイシャツに膝までのスカートをはいているエルフの少女だった。
「おかげで助かりました。ではここで」
エルフは立ち去ろうとした。
「ちょっと待って!まだ話が・・・」
ジャンヌがエルフの腕を掴んだ瞬間、ローブや服が破れた。
まさか服が破くとは思ってなく、目が点になる。それだけではない。女にないものを彼が持っていることだった。
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