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番外編

第30話 吊り橋を歩く その1

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 広場から歩くと直ぐに、吊り橋がお出ましで有る。

「改めて見ると大きいな……」
「技術の発展は本当に凄いよ!」

 車で通って見る時と、歩いて見る時では吊り橋のスケールも全然違う。
 本当にこんな物良く作れるなと、この時ばかりは思ってしまう。

 半島と島を繋ぐ橋だが、意外に交通量は少ない。
 時間的に、夕方の時間に少し早い事も関係しているのか? 

「今の内だ!!」

 真央なんかは、橋を写真に収めるために車道に出て、車道の真ん中で写真を取り出す!?
 俺は声を掛けるよりかは、車が来ないかの監視をするために俺も車道に出る。
 大人の方が背丈も高いし注意喚起にも成る。モラルの話はその後だ!
 直ぐに写真を撮り終えた真央は歩道に戻るので、俺も歩道に戻ってから注意をする。
 運良く、その間に車両は来なかった。

「真央…。車が来たら危ないぞ!」

「うん! 気を付ける!!」
「ありがとう。お父さん!!」

 俺は真央に声を掛けなかったが、真央の方は気付いていた感じだ。
 俺が大して怒らなかったのが気に入らなかったのか、咲子が真央に注意をする。

「真央! 写真を撮るのは良いけど、危ない事はしては駄目!!」

「咲子お姉ちゃん!」
「お父さんが、ちゃんと見てくれていたもん!!」

「だからと言って、勝手に車道に出ない!」

「じゃあ、今度からは声を掛ける!!」
「それで、良いでしょ!!」

「う~~、反省の色が無い!」

 真央は、咲子の言う事を聞く気配が無い。母さんも、それを見ながら微笑んでいる!?
 母さんからも注意をしてくれ!

「真央…。あなたが怪我をしたら、みんな悲しむんだよ…」
「私も寂しいから気を付けて……」

「うっ…、ごめんなさい、宮子お姉ちゃん」
「気を付けます…」

 宮子が注意をすると真央は素直に謝る。
 真央の中では咲子の言う事は聞かないが、宮子の言う事は聞く感じだ。

「うぁ…、真央ったら私の事は聞かずに、お姉ちゃんの言う事は聞く!?」
「なにそれ!!」

 それを見ていた咲子は、1人で勝手に怒り出す。
 他の人から見れば仲の良い家族に見られるかも知れないが、俺から見たら複雑な気持ちだ。ここでやっと、母さんが口を開く。

「はい、はい!」
「無事に終わったんだから、仲良く、仲良く♪」
「さあ、景色を楽しみましょう♪」

「は~い…」(咲子)

「うん!」(真央)

「だね…」(宮子)

 母さんの言葉で、娘達はそれぞれが返事をして再び歩き出す。
 咲子は反論せずに、諦め顔で返事をする。普段の状況もこんな感じなのだろうか?

 吊り橋を歩き始めると、海景色が見えると同時に、海岸沿いの住宅街も見えてくる。
 車で通った時には見られなかった光景だ。

「空も青くて、風も有って気持ちいい~~」

 咲子は伸びをしながら歩いている。
 機嫌も直っている様だ!

「非日常の世界だね~~♪」
「もう少し時間が有ったら、波の音聞きながら過ごすのも有りだね~~♪」
「海が見える、旅館とか民宿も良いよね~♪」

 母さんも笑顔で言っている。
 吊り橋の長さは見た感じ、1km前後だろうか?
 歩いて渡れない距離では無いが、往復すると2km以上は歩く事に成る……
 何処まで歩くのだろうか?

 吊り橋も真ん中付近まで来ると、橋上から湾内が一望出来る。
 綺麗な青空と、周辺陸地の地形が所々見える。

「波も穏やかだね~~♪」
「風も気持ちいいわ~~♪」

 母さんは橋の欄干に手を沿えて湾内を見ている。
 時折吹く海風に、母さんの髪の毛が風に揺られてなびいている。
 久しぶりに見る、母さんの本来の姿……。この時ばかりは母さんで無く、小春さんに成る。俺は急に悶々し始める!

(あぁ、小春……)
(ここで宮子達が居なかったら、確実に母さんを抱いているかも?)
(でも、橋の上だから危ないか…。落ちたら、確実に不味いし…)

「何か……変なスイッチ入った人が居る」
「こんな所で立ち止まられても邪魔だし、良い機会だから海に投げ込むか?」

 俺が妄想に入っていると、棒読みで嫌みを言う声が聞こえてくる……
 家族の中で、嫌みを言う子は俺の中では1人しか居ない。

「みんな、楽しそうだね」

 宮子はそう言いながら俺に声を掛ける。
 俺が、愛しい母さんの姿を想像している間に、母さん・咲子・真央は先に行ってしまった。今、俺の側に居るのは宮子だけで有る。

「旅行前日まで、どんな場所に行くかは教えてくれなかったが、ありがとうな宮子!」

 俺がそう言うと、宮子は急に恥ずかしがる。
 今までに見た事ない状況だぞ!!

「歩きながらで良いから、話しましょうか?」
「……お父さん…」

「えっ!?」

 宮子が遂に俺の事を『お父さん』と呼んだ!?
 宮子と出会ってから、10年以上言わなかったのに!!
 俺はこの機会を逃して溜まるかと感じながら、宮子と2人きりの会話では、3回目の話をする事に成った。
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