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第24話 咲子の考え その2

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 私は頭の中で考える…… 

(う~ん、焼肉? カレー? 刺身? スーパーの惣菜? コンビニ弁当? キャベツ!?)

 お父さんの今まで聞いた食生活から連想する。正直言って、一番好きな食べ物なんて、自ら言ってくれない限り分かりにくい。

(何だろう? でも、昨日の豚肉の生姜焼きは喜んでいたな……)
(きっと、お父さんもこってり系のメニューが好きなんだろう。でも、刺身や冷や奴も食べるって言っていたな……。刺身と冷や奴ならお手軽だけどそれで良いのかな…)

 今のお父さんは手の掛かる物は作っていないはずだ。なら、手間を掛けた料理の方がきっと喜ぶはずだ。

(お父さんが家に帰って来た時に良く出る料理は何だっけ?)
(お母さんが、お父さんを持て成す時の料理を思い出す…)
(刺身、すき焼き、ステーキ……後は外食。ろくな物しか出てこない…)

「うん、お母さん!」
「相変わらずのお手軽料理ばかりだ! きちんとした物作ってよ!!」

 私は一人で憤慨する。

(弱ったな……何が、有るんだろう?)

「あっ!」

 私は1つの料理を思い出す。

(ハンバーグはどうだろう!)
(たしかお父さん、ハンバーグが一番好きと聞いたような…)
(よし! なら今夜はハンバーグを出してみるか!!)

 私はそう決めて、早速買い物に出かけようと考える。
 もうすぐお昼時だが、昼食はスーパーの惣菜コーナーで買う事を決め、早速スーパーに向かう。
 向かうスーパーは通い慣れた? 近所のスーパーだ。 

 ……

 スーパーに着いた私は、野菜コーナーには目もくれずにチルド品コーナーに向かう。
 チルド品コーナーには餃子、焼売等の加工品や色々なチルド品が陳列されている。

(ハンバーグはどこかな? あっ、有った、有った)

 陳列棚には様々なメーカーのハンバーグが置いて有る。
 小判型サイズの焼くだけハンバーグや、レンジでチンするだけで、ファミレスで食べているようなハンバーグ。更には3個で纏まったお徳用ハンバーグ等色々ある。

(どれが良いだろう? やっぱり、これかな!)

 私はある1つのメーカーのハンバーグを手に取る。このメーカーのハンバーグは、お母さんが何時も買っているメーカーで有って、値段もお手頃だし味も知っているため安心感がある。

(これなら大丈夫そうだね!)
(でも、本当にこれで良いのかな?)

 チルドタイプのハンバーグは、レンジでチンや湯煎ゆせんをすれば直ぐに食べられる。
 こってり料理だし、お父さんも文句を言わないはずだ。しかし、これではお手軽料理に成ってしまう。

「う~~ん」

 しばらく悩んだ後、手に取ったハンバーグを陳列棚に戻す。

(きちんとした物を作るなら、やっぱり手作りだよな!)

 手作りハンバーグ……
 挽肉ひきにく(ミンチ)にパン粉やナツメグ、香辛料等を入れて、それをねて成形して、フライパンで焼く。もちろんチルド品コーナーにも、後は焼くだけの手作りハンバーグ見たいのも売っている。私はどの選択を取るべきか迷う。

(お母さんも滅多に作らないからな……面倒くさがって)
(台所が汚れるとか、洗い物が増えるとか適当な理由をつけて…)
(まあ、でも、めんどいのも事実なんだけどね)

 お母さんのハンバーグレシピを思い出す……。思い出すと言っても、手を抜く事が大好きのお母さんは、特売の挽肉にハンバーグの素を入れるだけだ。もちろんオーブンは使わずにフライパンだけで焼くから、お肉がジューシーでは無いし、外側は焦げて、ひどい時はガリガリする時も有る。メリットは挽肉の量次第でたくさん作れる事だ。

(チルド品のハンバーグ。美味しいけど少ないからな。4袋買っても良いけど、それ位なら外食した方が良さそうだし)

 お父さんじゃ無いけど、私もチルド品コーナーで立ち止まって考える。丁度、私の周りには人が居なかったので良かった。

(量を取るか味を取るか…。お金の事を考えれば手作りした方が安く済む。手間も5人分は流石に……だけど、2人分なら大きい挽肉のパック1つだけ済むから、チルド品のハンバーグを2つ買うよりも安く済むかも知れない!)

(一丁やってみるか!)

 私の考えは纏まり、お肉のコーナーに行って、なるべく量が入ってそうな挽肉の入ったパックを選んで、大手メーカーが出しているハンバーグの素も買い物カゴに入れて、付け合わせのサラダは惣菜品で代用して、スープは昨夜の味噌汁が残っているのを思い出したため、それにえのきだけを入れてかさ増しをする。

(昨夜の味噌汁の余り、朝ご飯で食べて貰うつもりだったんだけど、言いそびれたんだよね)
(お父さんも今朝、気づいたはずだけど遠慮したのかな?)

 必要な食材や、私のお昼ご飯のお弁当も入れてお会計を済ませる。スーパーから外を出ると『ムアっ』とした湿り気と夏の日差しが出迎える。成るべく日陰の部分を選んで私はアパートに戻る事にした。

 ……

 私は家に戻ってからは、先ほどスーパーで買ったお弁当でお昼を済ませ、後は特にやる事も無かったので、適当にテレビを見たり、スマートフォンで時間を潰す……

 今日は日差しが強く、洗濯物も直ぐ乾いたので、何時もより早いが洗濯物を仕舞い込んで、それを畳む。そして、夕方までダラダラと過ごした。
 お父さんは、おそらく昨日と同じ時間には帰ってくると信じて、晩ご飯の準備を始める。

 昨日と同じようにキャベツを千切りにして、味噌汁はえのき茸を足して、味噌汁の量も今晩で食べきれる量に、水を調節して晩ご飯を準備していく。
 昨日と比べれば、作業の量も少ないので直ぐに終わって仕舞いそうだが、しかし、メインディッシュはこれからで有る。

(さて、ハンバーグを捏ねる準備をするか!)

 ハンバーグを1人で作るのは当然だが初めてで有る。お母さんが滅多に作らないから、覚えようが無いからだ。ここはお母さんのやり方では無く、ハンバーグの素の『作り方』で書いて有る方法で料理していく事にする。

(えっと、ボールにハンバーグの素を入れて、それを水を入れてふやかす。そうしたら、挽肉を入れて混ぜ合わせしたら成形する…)
(後はフライパンにサラダ油を引いて、成形した挽肉を時間通り焼いていく…)
(でっ、完成と……。うん、思ったより簡単かも!)

 説明書きは簡単に書いてあるし、焼き方と焼き時間さえ守れば出来そうだなと思えたので、説明通りにハンバーグを作っていく……

「よし! 形はどうにか出来た!!」

 出来合品見たいな綺麗な形では無いが、2個分のハンバーグを成形する。お手製の特大ハンバーグだ!
 お母さんが作る時よりも1回り大きいと感じた。

「後はこれを焼くだけだが……。時間的にはどうだろう?」

 スマートフォンで時刻を確認すると、少し焼くには早いかなと思ったが……

「まあ、多少冷めても、美味しいのよね!」

 何故か1人喋りをしながら、フライパンにサラダ油を引いて、ハンバーグを焼き始める。
 キッチンタイマーは無さそうだったので、スマートフォンのタイマーで時間を設定してハンバーグを焼いていく……。スマートフォンのタイマーが鳴ったので、フライパンの上に置いたお鍋の蓋を持ち上げると……

『じゅぁ~~~』

 見た感じは、ふっくらとしたハンバーグが焼き上がっていた。

(見た感じは良さそうだけど、でも大きいからな。あっ、何か肉汁が透明なら良いとか言っていたような……)

 台所の引き出しに、竹串が無いか探してみるが無さそうだ。

(どうしよ……生焼けだと嫌だし、早くしないと焦げちゃうし!)

 困った私は、竹串代わりに目に付いた菜箸でハンバーグに刺す。ハンバーグの真ん中に刺して状態を確認する。菜箸で開けたため、穴も大きく成ったが……

「うぁ、肉汁が『ドバッ』と出てきた!?」
「透明そうな汁では有るが、これで良いのか……?」

 状態は良さそうでは有るが、少し自信は無かった。しかし、菜箸で刺したため、肉汁はどんどんあふれ出ているようにも見えた。

「まずいな。これじゃあ、ハンバーグがスカスカに成っちゃう!」
「もう、これでいこう!!」

 フライ返しでハンバーグをすくい、それをお皿に乗せる。
 フライパンに残った肉汁は『ソースを作ると良いよ』と書いてあるが、面倒くさいので、そのままハンバーグの上にかける。

 顔に跳びはねた油を腕でぬぐいながら……

「どうにか完成した……。本当なら味見したいが、そうすると味見の後がばれてしまう。まあ、多分大丈夫でしょう」

 サラダはスーパーの惣菜コーナーで買った、ポテトサラダとマカロニサラダをお皿に盛り付ける。ダブルダラダだ!
 見た感じは、ボリューム感いっぱいのハンバーグで有る。

「後は、お父さんが帰ってくるのを待つだけだ!」
「きっと、びっくりするだろうな!!」

 私はお父さんの驚きを楽しみにしながら、大まかな洗い物をしつつ、お父さんの帰宅を待つので有った。
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