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【R-15】稀子編 第2章

第378話 第一関門…… その2

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 そろそろ、出発の時間が近づいて来たので、俺はみんなに向けて挨拶を始める。

「では……今から、学科試験に行ってきます!」

 俺は落ち着いた口調で言い終えた後、みんなに向けて頭を下げる。
『今までの感謝の意味』で、俺は頭を下げる。

「比叡君! がんば!!」

 俺が頭を下げた直後、稀子が穏やかな表情で声を掛けてくれる。
 けど、後の人達は、特に声を掛けて来ようとはしない……

「うん…。頑張ってくるよ…稀子!///」

 俺は稀子に優しい口調で言い、言葉を言い終えると俺はリビングを出た。

 ……

 バスや電車等の公共交通機関を使って、俺は学科試験会場に向かう。
 大きな遅延なども無く、無事に試験会場に到着する。

 会場受付で受験票の提示や、身分証明をしてから試験会場内に入る。
 試験会場に入ると言うまでも無いが、女性が圧倒的に多かった……
 何時の時代に成っても、保育士さんの仕事は女性向けの仕事で有る。

 受験票の番号と、受験番号が合っている席に俺は座る。
 俺の隣の人は、俺と同じ位の感じがする女性だが、不用意な発言などはしない。
 挨拶などもってのほかだ。

 実際は、男性保育士も需要が有る筈なのに男女問題や、一部の悪い男性保育士の所為で、肩身が狭い状態にさせられたし、給与の面でも、男性保育士を生涯続けて行くには難しい……

 それは、放課後児童支援員(学童保育指導員)でも同じ事が言える……
 順調良く言って再来年の今頃。俺が市町村採用の放課後児童支援員に成れたとしても、平社員の身分でずっと続けて行くは無理のはずだ……
 役職に就ければ問題ないだろうが、そう上手くいくだろうか??

(でも、俺は大学を出ていないから、何かと不利に成るはずだ……)
(その前に採用試験だって……)
(……まぁ、それは置いておいて、今は試験の方が大事だ…!)

 俺は頭の切り替えをして、試験時間来るまでの間、最後の見直しをする!
 山本さんの伝手つてで、現役男性保育士から教えて貰った事を記したノートを広げて最後の確認をする。

 この学科試験はマークシート方式で有るから、テキスト内容全てを覚えなくて良いが、それでも有る程度の知識が無いと問題が解けない。
 このノートには出そうな問題や、覚えておいた方が良い事が記して有る。
 俺は時間ギリギリまで、そのノートとにらめっこをする……

 ……

 試験開始時刻と成って、司会者の様な人が試験前の説明を始める。
 それが終ると、いよいよ試験始まりが近付く。
 俺は静かに深呼吸をしてから、学科試験に挑んだ……

 ☆

 無事に1日目の試験を終える。
 試験は午前中から行われて、途中で昼休憩を挟んで、1日目の試験が終った時刻はもう17時で有った……この様な工程が明日も続く。
 午前中のかなり遅めの時間帯に学科試験が始まったが、1日に4~5科目の学科試験を受けるので心身の疲労感は半端ない!!

(さて……寄り道をせずに、稀子達の元に戻ろう……)
(Rail等は一切入って居なかったが、きっと心配しているだろう…)

 稀子は本当に、しっかりする時はしっかりする子で有る。
 俺を気遣ってか、試験内容を聞いてくるメッセージ類は全く来なかった。

 これが心配性やメンヘラ系統なら、びっしりと連絡が来ているだろう!?
 俺は足早に試験会場から、試験会場最寄り駅に向かった……

 ……

 時刻は18時半を過ぎた時刻……
 俺は無事にアパートに戻り、普段着に着替えて、お風呂も山本宅の風呂を使わせて貰うから下着類も持って、山本さんの家に向かう。

 親しい関係で有るから、特に挨拶もせずに玄関から入りリビングの扉を開く。
 山本一家や鈴音さんは、まだ店や工場こうばの方に居るらしく、リビングと繋がっているキッチン側に稀子だけが居た。
 俺がリビング内に入って来ると、稀子は料理の手を止めて、穏やか表情で声を掛けて来た。

「あっ、お帰り! 比叡君!!」

「ただいま。稀子!!」

 他人の家で夫婦を演じている。俺と稀子。
 やっぱり……稀子の顔を見ると、鈴音さんとは違う安心を得る俺で有った。
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