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【R-15】稀子編 第2章

第339話 稀子を先生と言う日!? その2

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「比叡君も、実技試験に関しては、もちろん調べているよね♪」

「それは、もちろん調べているよ。稀子」

「じゃあ、造形の実技試験で何を描くかも分かるよね!!」

 可愛い笑顔と口調の稀子だが、上から目線は変わらない……
 俺の方が遙かに年上なのに……

 この部分だけは、鈴音さんの爪垢を煎じて飲ませたい!
 これが無ければ、稀子は完全に鈴音さんを上回れるかも知れないのに……

「大体は分かるけど……かなりの想像力が求められるのだよね…」

「そう、そう!」
「実際の保育現場を想像して、絵を起こす訳だから、絵の力量よりも発想の豊かさや柔軟性が求められるね♪」

 稀子は意外にしっかりと調べてきた感じだ!
 俺よりも情報量が多い!!
 稀子は時々、頭が良い子モードに入る!!

「けど、今日はいきなりそんな難しい事はせずに、気楽にお絵かきをして欲しいかなと私は思う!」
「でも、その前に比叡君の画力を知りたいから、私が指定する物を今から比叡君に描いて欲しいの!!」

「稀子が指定する物…?」
「それはどんな物だ?」
「でも、俺はアニメキャラクターとは描いた事が無いぞ!///」

「比叡君……保育士の実技試験で、アニメキャラは描かないよ……」

 稀子は眉をひそめてジト目モードに成る。
 その後は、少し怒った口調で稀子は言う。

「私が指定するのはブランコや滑り台など、実際の試験に出て来る物を指定するんだよ!!」

「わっ、分かった。ごめん、稀子!///」

 俺は稀子に素直に謝る。

「……全く、比叡君らしいと言うべきか…」

 稀子は愚痴を言うが、機嫌は直ぐに治る。

「じゃあ、早速始めようか!」
「はい、比叡君。画用紙と色鉛筆!!」
「シャープペンシルは流石に持っているよね!!」

 稀子は穏やな表情で言いながら、俺に画用紙と色鉛筆を渡してくる。
 色鉛筆は一般的な12色入りの色鉛筆で有った。
 色鉛筆は1セットしか無いので、お互い同時に絵を描く事は出来ない。

「うん。シャープペンシルは有るよ!!」

 俺はそう言って立ち上がり、シャープペンシルと稀子は言わなかったが、消しゴムも用意して、再び俺専用の座布団に腰を下ろす。

「じゃあ、比叡君。お題を出すね!」
「最初は、保育園児の男の子を描いて!!」
「園児を描きにくかったら、スマートフォンで調べても良いからね♪」

 稀子は微笑みながら、お題を出す。

「保育園児か……」

 俺はそう呟き、いざシャープペンシルを持つが……どうやって描けば良いか見当がつかないので、初めはスマートフォンで園児のイラストを調べる事にした。
 俺がスマートフォンで調べている間、稀子は台所でお茶の用意をしていてくれた。

「はい、お茶!!」

 稀子は穏やかな表情で、テーブルにお茶を置いてくれる。
 鈴音さんがお茶を入れる時は紅茶が多いが、稀子の場合は気分で変わる。

 今日のお茶は玄米茶だ。
 俺の家に玄米茶は無いから、稀子が持って来た茶葉だ。

 調べ物は殆ど終っており、俺は稀子が煎れてくれたお茶を一口飲んでから、いよいよ真っ白な画用紙に命を吹き込む!!

「♪~~」

 稀子は俺が描いている様子を、頬杖を付きながら穏やか表情で見ていて、時々をお茶を飲んでいた。

 ……

 稀子が出したお題は保育園児の男子だが、それを描くのに、大体10分位時間を掛けて書き上げる。

「出来た!!」

(うん…。こんな物だよな…)

 画用紙の真ん中に描いた保育園児の男子……
 三頭身を目安で描いて、園児らしい髪型や表情で描いてみた。
 立ち絵では有るが、にっこりと微笑んでいる表情で有る。
 服装も保育園児らしく、服とズボンは青色の色鉛筆で塗った。

「……」

 稀子はそれを無言で『ジッ…』と見ているが、何時の間にか真剣な表情に変わっていた。
 何か問題でも有るのだろうか?

 俺はこれで一度、稀子に見て貰おうと思い、俺は稀子に声を掛けた。
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