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【R-15】稀子編 第2章

第325話 稀子と鈴音 Ⅱ

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「ねぇ、稀子……」
「一つ気に成った事が有るのだけど?」

「んっ、なに、比叡君!!」

 指に付いたチキンナゲットのソースを、ねぶりながら言う稀子。

「稀子と鈴音さんとの関係は、何時からなんだ?」

 俺が稀子にそう聞くと、稀子は『今更……聞くの?』の表情をした!

「あれ?」
「比叡君に、以前説明したよね…?」

 稀子は当然、そう言ってくる。
『へんな、比叡君!』の顔までしている!!

「うん…。中学生からの付き合いとかは聞いた事が有るけど、何か大の仲良しには見えてない感じがしたから……」

「……大の仲良しか…!」

 稀子は他人事のように呟いて、フライドポテトを食べ始める。
 稀子は食べながら、俺に話し始める。

「山本さんはりんちゃんに取られちゃったし、学園内でも私は私の親友がいるから、中学ほど鈴ちゃんと一緒に居る訳では無く成ったし、まぁ、そんな関係だね!」

 悲しそうな表情等をすること無く、普通の表情で喋る稀子?
 稀子の中では、鈴音さんを大親友としては、見ていない感じだった。

「でも、稀子…。鈴音さんとは良く料理を一緒に作っているだろ?」
「親友だから、手伝っているのでは無いのか??」

「あれは親友では無く、お手伝いだよ。比叡君!」
「1人で作るより、2人で作った方がお互い助かるし、凝ったお料理も作れる!!」
「ただ、それだけだよ。比叡君!!」

 稀子は穏やかな口調で言い終えると、今度は食べかけの限定ハンバーガーを食べ始めた。

(鈴音さんは稀子を、大事な人目線で見ている感じがするが、稀子の場合は山本さんを取られた事からの経緯で、殆ど親友目線では見ていない)
(形だけの親友とでも言えば良いのか)

 保育士養成学校の入学試験に落ちて、俺が稀子。鈴音さんが山本さんとの関係が、完全に出来上がってからは、俺を含めてでの、4人で動く事もめっきりと減った……
 山本さんのおばさんを含めた、4人での行動は今でもしている様だが、俺はのけ者だ。誘われた事も無い。

(山本さんは鈴音さんを完全に守っているし、稀子も俺に対して凄く執着心を持っている)

 俺はそう思いながら、ホットコーヒーを飲んでいると、稀子がハンバーガーを食べながら聞いてくる。

「ねぇ、比叡君!」
「なんで、そんなこと聞いたの?」

 何時もの、和やかな表情で無く、まし顔で聞いてくる稀子。
 俺は思った事をそのまま口にする。

「いや、何て言うか……最近の鈴音さんと稀子は距離が出来たと言うか、以前ほどの仲良しさが無く成った感じがしたから……」

 稀子は眉をつり上げ、声のトーンを上げながら言う。

「…そりゃあ、無く成るよ!」
「比叡君!!」

「鈴ちゃんは山本さんが居るのに、比叡君を密かに狙っているのだよ!」
「こちらも警戒するさ!!」

(鈴音さんが、俺を狙っている!?)
(そんな馬鹿な!!)

 俺はそう思うが、稀子は興奮気味で言葉を続ける。

「私、気付いたんだ!」
「鈴ちゃんと比叡君がピアノ練習をしていた時、鈴ちゃんが比叡君を意識している表情で見ていたから!!」
「あれは絶対、比叡君を意識している証拠だよ!!」

「えっ!?」
「そうなの!!」

 鈴音さんも俺に好意を寄せていてくれる事で、俺は一瞬顔が“にやけそう”に成るが堪える。
 だが、稀子はそれを見逃さなかった!!

「んんっ……比叡君!」
「やっぱり、鈴ちゃんに気が有る!?」

 稀子はジト目に成って、低い口調で言う!

(これは、不味い!)
(折角のデートで喧嘩をしてしまったら、楽しい時間が台無しだ!!)

「無い、無い。稀子!」
「俺が好きなのは稀子だけだ!!」

 俺は嘘を付いてでも、この場を治める事にする。

「……本当」

「うん。本当!」

 稀子は、しばらく俺をジト目で見ていたが、澄ました表情に変わる!

「まぁ…、鈴ちゃんも山本さんに注意はされた感じだから、あんな事は二度と起きないと思うけど、共同生活は難しいね…」

 稀子は少し寂しい口調で言いながら、最後一口の限定のハンバーガーを口に入れた。
 それをしばらく味わった後、カップに入ったコーラをストローですする。

「言わなくても分かると思うけど、比叡君も鈴ちゃんの誘惑に乗っちゃあ駄目だよ!」
「そんな事したら、今度こそお別れだからね!!

 強気な表情と口調で俺に言ってきた!

「うん…。分かった。稀子」

 俺はそれを素直に返事をした。
 稀子の中では、鈴音さんがモーションを掛けたと判断したし、俺も稀子を失いたくは無い。
 余計な事を聞くべきでは無かったと、心の中で反省をしながら、俺はチーズバーガーに手を付けた……
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