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【R-15】稀子編 第2章

第306話 カイゼン

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 その時、山本さんが『閃いた!』の口調で話し始める。

「そうだ!」
「身内でやるから、不特定多数の前で上がってしまうのだ!!」
「なら、練習自体を不特定多数の前ですれば良い!!」

 山本さんはそう言い始める。
 不特定多数の前とは、どう言った意味だ?

「山本さん!」
「その朗読の練習を何処でするの?」

 稀子が山本さんの話に食いつく。

「そんなの簡単だよ。稀子ちゃん!」
「家近くに公園が有るだろ!!」

「今度からは、其処で朗読の練習をさせるのだよ!!」
「あの公園なら、人の往来も少ないから存分に練習が出来るし、散歩に来た人に講評も聞ける!!」

「山本さん!」
「公園って……あの桜の木が有る公園!!」

 稀子は声を弾ませながら言う。

「そう、そう、稀子ちゃん!!」

(桜の木が有る公園…?)
(あぁ…、春先に稀子と花見をした公園か…)

(彼処なら、人が少なそうだけど……やっぱり、人前で練習するのは恥ずかしいよな///)

 何故か山本さんは、俺に睨みを聞かせながら言ってきた!?

「比叡君!」
「今後、朗読の練習は公園でする様に!!」
「その方が君の為だから……分かったね…?」

「はっ、はい……」

 俺は反論しない方が賢明だと感じ、素直に返事をするしか無かった。

「比叡君!」
「私も朗読の練習に付き合うから、その時は言ってね♪」
「お茶とかも準備して上げるよ♪」

 稀子は俺に向けて和やかに言う。

(今度からは外で練習か。真夏の時期なのに……)
(俺は学童保育の指導員を目指しているのだから本来、朗読や素話なんて不必要だが、保育士の資格を取得しないと道が開けないからな……)

 俺は山本さんの提案を“しぶしぶ”受けるしか無かった。

 ……

 数日後の午前中……

 今日は稀子と、春の時に桜を見に来た公園に来ている。
 今日からは此処が、俺の朗読練習場所だ。
 日差しが強くなる前の、午前中にこの公園にやって来た。
 予定ではお昼の時間まで、この公園で朗読の練習をする。

 この公園は遊具が殆ど設置されていないので、夏休みとは言えども、子ども達の姿も見えない。
 犬の散歩連れの人とかが、立ち寄っている感じの公園だ。
 桜の木の下に有るベンチはこの時期、毛虫が落ちてくる可能性が有るので、少し日差しが厳しいが、日の当たるベンチに俺と稀子は腰を下ろす。

「さて、比叡君!」
「早速、始めようか!!」
「お家から麦茶とビスケットを持ってきたから、休憩しながらやろうね♪」

 稀子は学園リュックから、麦茶の入ったボトルと市販品のビスケットを取り出す。
 こう言った事だけは用意が良い稀子。

「じゃあ、早速、さるかに合戦から……」

「いよ!」

『パチ、パチ、パチ~~♪』

 嬉しそうな顔で拍手をする稀子。
 あの時の子ども達も、稀子の様な子ばかりだったら良いなと思い出しながら、公園で朗読を始める……

「むかし、むかし、カキの種を拾った―――」

 俺は朗読を始めるが、俺の朗読を聞き、この公園を通りかかる人は一瞬、俺の方に顔を向けるが、そのまま素通りで過ぎて行く。

(横に稀子が座っているから、稀子に読み聞かせをしていると思っているのだな)
(稀子は少々ちっこいから、遠目から見ればに見えているのだろう…)

 俺は心の中でそんな事を思いながら、さるかに合戦の朗読を進めていく……

 ……

 さるかに合戦の後は人魚姫、桃太郎と、3冊連続で朗読を続けた。
 桃太郎を読み終えた時点で、稀子が声を掛ける。

「うん、うん。良い感じだよ。比叡君!」
「連続で疲れたでしょう。少し休憩にしよう♪」

 俺は特に緊張すること無く、3冊朗読が出来た。
 稀子の側だから良いのか、自信が付いたのかは俺の中では分からなかった。
 喉も丁度渇いていたし、此処で休憩を取ることにする。
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