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【R-15】鈴音編 第2章

第282話 親友同士で行くキャンプ その12

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 俺はお風呂から上がり、鍵は預かっているので、そのままバンガローに戻っても良いかなと感じたが、22時で入浴は終了なので、管理棟内に有るロビーで鈴音さん達を待つ事にした。

 22時を少し過ぎた時間に、鈴音さんと稀子が女性側の方から出て来る。

「あれ?」
「比叡君、待っていてくれたの!」

 鈴音さんが声を掛けるのでは無く、稀子が先に声を掛けてきた。

「此処のお風呂は22時で終わりだし、直ぐに出て来るかなと思って」

「それは、ありがと、比叡君!」

「お礼を言われる事の程でも無いよ!」
「では、鈴音さん。稀子。戻ろうか」

 三人で管理棟からバンガローに戻る。
 きちんと防犯灯が整備されているので、暗闇では無い。
 横並びで歩いていると……

「これが、もっと大人数だったら、肝試しのイベントも出来そうだったね♪」

 稀子が突然言い出す。

「……肝試しか。流石に三人では出来そうでは無いな」
「ペアも作れないし……準備もしていないし」

 俺がそう言うと……

「……比叡さんも稀子さんも、童心に戻りすぎです!!」

 何故か、鈴音さんが怒りながら言ってきた。
 もしかしなくても、鈴音さんはお化け類が好きとは聞いてない。

「冗談だよ! りんちゃん!!」
「鈴ちゃんは、あっち方面は苦手だもんね♪」

 稀子は笑顔で言う。

「もう!」
「私達は大人何ですから!!」
「肝試しなんて、準備が大変な事はしなくても良いです!!」

 俺の人生で、肝試しイベントが発生する事は無かったが、懐中電灯や驚かす準備等が必要になる事は理解していた。
 俺の場合は肝試しより、肝を冷やされた事は二回も有るが……

 バンガローに戻り、やはり、そのまま自由時間では無く二次会が開催される。
 ニジマス塩焼きは電子レンジで温め直して、残った飯盒ご飯で作ったおにぎり。
 更にカレーも電子レンジで温めて、二次会と言うより、実質キャンプディナーの続きに近かった。

「さて。では、三回目に成るけど、楽しい夜に乾杯~~」

『乾杯…』

 稀子は乗りよい挨拶をするが、俺と鈴音さんは少し疲れた口調で『乾杯』を言う。
 本当に元気な子だ……

 缶ビールが余り気味なので俺は缶ビールを飲むが、鈴音さんと稀子は、稀子がワインボトルを持って来ていたのでワインを飲んでいる。
 鈴音さんは、飲まないつもりだったらしいが、ワインの誘惑に負けてしまった。
 飲み過ぎないとは思うが…、先ほどの事が起きたら、また大変だ!

 初めの内は……談笑と言うより、食べなければ成らない、おかず類を片付けている感じで有った。焼き魚は喋りながらでは食べにくいからだ。
 雑談も少なめで、二次会は過ぎて行くが……

「鈴ちゃんと比叡君も初年度の割に、農業が順調そうで何よりだよ!」

 稀子が俺と鈴音さんに向けて、話し始める。

「……それに関しては、幸村さん様々だよ!」
「優秀な指導者が居るから、初年度でもどうにか出来ている」
「ねぇ、鈴音さん!」

「はい。比叡さんの言う通りです!」
「稀子さん両親や祖母の支援が有るからこそ、今の農業と生活が有ります!」

「鈴ちゃんも比叡君も、そんなに謙遜しなくても良いよ!」
「比叡君に農業の素質が有るからこそ、上手く行っているのだから♪」
「そうでなければ、此所まで上手くは行かないから!」

「上手くか……。水稲すいとうの方も順調だし、ナスは予想より収量が有りそうだから、上手く行っていると言われば、そうかも知れないな!」

 俺はそう言いながら、缶ビールを飲む。
 何時もより美味しく感じた!

「でも、比叡君!」
「忙しいのはこれからだよ!!」
「農業をしつつ、将来の営農に関する勉強もしなければ成らないから!」

「……その辺は大丈夫だよ。稀子!」
「鈴音さんや幸村さんと、相談しながらやって行くから!」
「勿論、稀子にも相談に乗って貰うよ!」

「そう、比叡君が理解しているなら良いや!♪」
「ありがとう。比叡君♪」

 稀子は陽気な表情で、コップに入ったワインを開ける。
 二次会が始まってから、1時間位が経過していた。

(談笑も良いが……そろそろ、お開きに入るべきかな?)

 ニジマスの塩焼きは、みんな食べ終わっており、骨だけに成っていた。
 おつまみにしたカレールーもほぼ無く成った。

 稀子は陽気に鈴音さんに話し掛けているが、鈴音さんは時々、眠たそうな顔をしていた。
 再度アルコールが入って、睡魔が来ているのだろう。
 二次会も適当な所で、切り上げるべきだと俺は感じた……
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