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【R-15】鈴音編 第2章

第277話 親友同士で行くキャンプ その7

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 乾杯の後、直ぐにビールで喉を潤した俺は早速、岩魚いわなの刺身を食べる。
 量もしっかり三人前有って、食べ応えが有りそうだ!

『もぐ、もぐ……』

「うん!」
「川魚の割りに泥臭さも全然無くて、脂も乗っているね!!」
「美味しいよ!!」

 俺が感想を述べると、直ぐに稀子が反応する。

「そう言ってくれると嬉しいよ! 比叡君!!」

 稀子が笑顔で俺に向けて言っている中、鈴音さんも岩魚の刺身を食べている。

「はい!」
「とても新鮮な岩魚ですわ!!」
「稀子さん。ありがとうございます♪」

 鈴音さんは笑顔で、稀子にお礼を言う。

「ありがとう。りんちゃん!」
「鈴ちゃんのお口に合ってくれて、嬉しいよ!!」

 サプライズで持って来てくれた、岩魚の刺身はとても美味しく、川魚も侮れないと俺は思った。
 次はカレーに行きたい所だが、ニジマス塩焼きも冷める前に食べておきたい。

「少し冷めてしまったが……、ニジマスの塩焼きも美味しいね!」

「うん! 美味しいね!!」
「比叡君!!」

 俺の言葉に、直ぐ反応する稀子。
 鈴音さんも同じ様に塩焼きを食べているが、言葉を発しない?
 これでは、どっちが夫婦かは判らない!?

「比叡君!」
「刺身や塩焼きも良いけど、やっぱりキャンプはカレーだよ♪」

 稀子はそう言いながら、カレーライスをスプーンで頬張る。

「この少し、灰の味がするのも良いね♪」

 勿論、鍋の蓋をしながらカレーを作ったが、どうしても細かい灰が入ってしまう時が有る。
 俺は稀子の言葉を聞いて、カレーライスを食べてみる。

「気に成る程では無いけど、キャンプらしくて良いのでは無い!」
「稀子!!」

「そうだね! 比叡君!!」

「……」

 俺と稀子で盛り上がっている中、鈴音さんは黙々とカレーライスを食べていた。
 何だか……少し機嫌が悪そうに見えた!?

(俺が稀子ばかりに話しているから、“焼きもち”を焼いたか…?)
(これは不味いな…。夫婦とは言え、鈴音さんも気づかわなければ!!)

 稀子が陽気な顔で缶酎ハイを飲んでいる中、俺は鈴音さんに話し掛ける。
 稀子は結構な勢いで、缶酎ハイを飲んでいた。

「…鈴音さん!」
「カレーライス美味しいですね!!」

 俺は当たり障りの無い言葉を選んで、鈴音さんに話し掛ける。

「……、はい」
「キャンプらしい味ですね……」

 鈴音さんはやはり、少し不機嫌な口調で答えた。
 やはり、機嫌は悪い様だ!

「お口に合いませんか?」
「鈴音さん……」

「いえ、そうでは無いです……」
「これはこれで、美味しいです…。屋外で食べるカレーライスの味です…」

(やっぱり、焼きもちを焼いているな。鈴音さん…)
(俺達三人の関係は長いとは言え、稀子は俺にまだ気が有る筈だ)

(俺も…稀子が嫌いでは無いから、稀子には愛想良く返事をしてしまうし……)

 不機嫌に成ってしまった鈴音さんを、どうするべきかと思った時……

「鈴ちゃん!」
「さっきから飲んでないでしょ♪」
「ほれ。飲んだ、飲んだ!!」

 稀子はクーラーボックスから缶酎ハイを取りだして、それを鈴音さんに押しつける様に渡す。
 稀子のテーブルには、既に二缶の空き缶が置いてあって、三缶目に突入していた。

「……ペースが速いですよ。稀子さん…!」

 鈴音さんは嫌みを言う様に言って、稀子からの缶酎ハイを受け取らない。

「鈴ちゃん!」
「折角のキャンプなんだから、楽しく行こうよ!!」

「鈴ちゃんが機嫌悪いのは、私が比叡君に楽しく話し掛けているからでしょ♪」

「!!//////」

「あっ、やっぱり図星!」
「でも仕方ないよ! 私は比叡君が好きだし!!」

(稀子の奴…。酔った勢いでとんでもない事言ってるな!)
(幾ら親友でも、今晩の稀子は少し踏み込みすぎだぞ…)

 俺はハラハラしながら、鈴音さんと稀子の行方を見守っていると……

「……」

 鈴音さんは無言で、奪い取る様に稀子から缶酎ハイを取って、それを一気に飲み始める!?

「ふぅ~~!」

 有る程度飲んだ所で、ため息をつきながら、缶を口元から離す鈴音さん。
 そして、稀子の方に顔を向ける。

「……稀子さんが、比叡さんを今でも好きなのは知っています!」
「それは、ある意味仕方有りません」

「けど……一番悪いのは、それに“へらへら”する比叡さんです!!」

 鈴音さんは、不満を俺にぶつけてきた!

「まぁ、そうだよね。鈴ちゃん!」
「比叡君が私に声を掛けられても、紳士の対応をすれば良いのに、比叡君はスケベだから直ぐに鼻を伸ばすからね♪」

「全く、その通りです!///」
「稀子さんだからまだ許していますが、これが他の女性でしたら離婚ですよ!!」

 鈴音さんも先ほどの飲酒で、一気に酔いが来たらしい。
 楽しいキャンプに、一気に暗雲が立ち始めた!?
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