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【R-15】鈴音編 第2章
第227話 稀子の町に向かう道中 その1
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「……お見苦しい所をご覧に入れて、申し訳有りませんでした」
電車がホームから遠ざかった所で、鈴音さんは俺と稀子に顔を向けて言うが、鈴音さんの顔は涙でグシャグシャだった。
「鈴ちゃん……まずは、顔を拭いて!」
稀子はハンカチを取り出して、鈴音さんの顔を拭う。
「……すいません。稀子さん…」
顔を稀子に拭かれながら、謝る鈴音さん。
先ずは……鈴音さんの心を落ち着かせないと!
「鈴音さん、稀子。まずは……座ろうか」
通勤・通学時間帯では無いので、電車内は空席が目立ち何処でも座れる。
別に扉側に立っている必要は無いし、鈴音さんも色々と疲れて居る筈だ。
「そうだね。比叡君!!」
「立って居るのも疲れるしね。一番近い彼処に座ろう!」
俺と稀子は鈴音さんを支えながら、一番近い席に座らせる。
鈴音さんは少しフラつき気味で有り、そうしないと危ない感じがしたからだ。
「電車の終着点まで……少し休ませて貰います」
席に座った直後、鈴音さんはそう言う。
心の整理を付けたいのだろう……
「鈴ちゃん!」
「終点に着いたら起こすから、ゆっくりと休んでいて!!」
稀子は元気よく、鈴音さんに声を掛ける。
「鈴音さん…。今は体を休めてください……」
「本当に大変なのは、これからですから…」
「はい……。すいません、比叡さん…」
「休ませて貰います…」
鈴音さんは目を瞑って眠りに入った。
この電車の席は対面シートにも成るから、対面シートにして座っている。
俺の横に鈴音さん。正面には稀子が座って居るが……
『ちょい、ちょい』
稀子が俺を手招きする。
鈴音さんが眠りに入り掛けているので、手招きで俺を呼んでいる。
鈴音さんは電車の壁に体を傾けているので、俺は簡単に座席移動が出来る。
俺が稀子の横に座ると、稀子が小声で話し掛けてくる。
「あんなに泣いた鈴ちゃんは、初めて見た気がする……」
「それだけ、真理江さんが好きだったのだろ?」
「……実の母親が居るのに」
「そうだよね…、比叡君」
「私は優しい“おばさん”にしか感じなかったけど、鈴ちゃんは“おばさん”の何処を気に入ったのだろう?」
「俺に聞かれてもな……稀子」
「これは俺の予想だが…、それだけ山本鞄店に対する思いが強かったのでは無いかな?」
「でも、比叡君」
「お店は、とうの昔に売っちゃったじゃん!」
「店が無く成っても、鈴音さんの中では心残りだったんだろ」
「それに、山本さんに彼女が出来た事は、稀子も知っているだろ」
「うん。知ってるよ!」
「比叡君に復讐を仕掛けた割には、変だよね!!」
「まぁ、それもそうだが、その時の鈴音さんは寂しそうな表情をしたんだ」
「えっ!?」
「そうなの!!」
思わず大声を上げてしまう稀子。
「稀子。しっ!」
「俺との将来を約束している癖に、鈴音さんは山本さんを完全に忘れていなかった」
「う~ん……」
急に静かに、うなり声を上げる稀子。
「比叡君には悪いけど…、鈴ちゃんは本気で、比叡君を好きでは無かったのかも知れないね……」
「やっぱり……稀子もそう思うか」
「うん…。鈴ちゃんはかなり本気で山本さんが好きだった」
「だからこそ、それ見て嫌気を感じた過去の私は、山本さんの家を飛び出して偶然、比叡君と出会ってこの関係が生まれた」
「鈴ちゃんと山本さんが喧嘩を本気でした時、私はチャンスだと思って、何度も山本さんに好意とを伝えても鼻であしらうだけだった」
「山本さんも鈴ちゃんが本気で好きだからこそ、比叡君と鈴ちゃんが内緒で遊びに行った事知った時に、私に怒りを思いっきりぶつけてきた」
「私達が、余計な事をしなければ良かったね……」
最後の言葉は、俯きながらに言う稀子。
本当にその通りだが、あの時の俺と稀子は、本当にペアの交換を望んで居た。
「過ぎてしまった事を言っても仕方無いよ。稀子」
「そう考えると俺は、山本家に翻弄されていたのかな?」
「それは違うと思うよ。比叡君!」
「山本さんは別だけど、おばさんは赤の他人の比叡君に、此処までの支援をしてくれた!」
「おばさんの支援が無ければ、今の比叡君は此処に居ないよ!!」
力強く言う稀子。確かにその通りだ。
ドラマの様な人生がここ数年間続いたが、本当にドラマの様なクライマックスが待ち受けている。
「そうだよな…」
「真理江さんが俺に肩入れを始めた理由は、山本さんの身勝手から始まったと思うのだが、実際は違うのかな?」
「それは…、おばさんに聞いて見ないと分からないよ。比叡君」
「ただ1つ言える事は、おばさんは比叡君を期待したし、鈴ちゃんも……母性本能で比叡君を助けたのでは無いかな?」
「鈴音さんが俺に好意を持ったのは、母性本能からか……」
「まぁ、私も似た様な物だしね! 比叡君を気に入った理由は!!」
最後の最後で、稀子から衝撃発言を聞かされる!!
俺が稀子と鈴音さんから好かれたのは、俺が駄目人間だったからか!?
電車がホームから遠ざかった所で、鈴音さんは俺と稀子に顔を向けて言うが、鈴音さんの顔は涙でグシャグシャだった。
「鈴ちゃん……まずは、顔を拭いて!」
稀子はハンカチを取り出して、鈴音さんの顔を拭う。
「……すいません。稀子さん…」
顔を稀子に拭かれながら、謝る鈴音さん。
先ずは……鈴音さんの心を落ち着かせないと!
「鈴音さん、稀子。まずは……座ろうか」
通勤・通学時間帯では無いので、電車内は空席が目立ち何処でも座れる。
別に扉側に立っている必要は無いし、鈴音さんも色々と疲れて居る筈だ。
「そうだね。比叡君!!」
「立って居るのも疲れるしね。一番近い彼処に座ろう!」
俺と稀子は鈴音さんを支えながら、一番近い席に座らせる。
鈴音さんは少しフラつき気味で有り、そうしないと危ない感じがしたからだ。
「電車の終着点まで……少し休ませて貰います」
席に座った直後、鈴音さんはそう言う。
心の整理を付けたいのだろう……
「鈴ちゃん!」
「終点に着いたら起こすから、ゆっくりと休んでいて!!」
稀子は元気よく、鈴音さんに声を掛ける。
「鈴音さん…。今は体を休めてください……」
「本当に大変なのは、これからですから…」
「はい……。すいません、比叡さん…」
「休ませて貰います…」
鈴音さんは目を瞑って眠りに入った。
この電車の席は対面シートにも成るから、対面シートにして座っている。
俺の横に鈴音さん。正面には稀子が座って居るが……
『ちょい、ちょい』
稀子が俺を手招きする。
鈴音さんが眠りに入り掛けているので、手招きで俺を呼んでいる。
鈴音さんは電車の壁に体を傾けているので、俺は簡単に座席移動が出来る。
俺が稀子の横に座ると、稀子が小声で話し掛けてくる。
「あんなに泣いた鈴ちゃんは、初めて見た気がする……」
「それだけ、真理江さんが好きだったのだろ?」
「……実の母親が居るのに」
「そうだよね…、比叡君」
「私は優しい“おばさん”にしか感じなかったけど、鈴ちゃんは“おばさん”の何処を気に入ったのだろう?」
「俺に聞かれてもな……稀子」
「これは俺の予想だが…、それだけ山本鞄店に対する思いが強かったのでは無いかな?」
「でも、比叡君」
「お店は、とうの昔に売っちゃったじゃん!」
「店が無く成っても、鈴音さんの中では心残りだったんだろ」
「それに、山本さんに彼女が出来た事は、稀子も知っているだろ」
「うん。知ってるよ!」
「比叡君に復讐を仕掛けた割には、変だよね!!」
「まぁ、それもそうだが、その時の鈴音さんは寂しそうな表情をしたんだ」
「えっ!?」
「そうなの!!」
思わず大声を上げてしまう稀子。
「稀子。しっ!」
「俺との将来を約束している癖に、鈴音さんは山本さんを完全に忘れていなかった」
「う~ん……」
急に静かに、うなり声を上げる稀子。
「比叡君には悪いけど…、鈴ちゃんは本気で、比叡君を好きでは無かったのかも知れないね……」
「やっぱり……稀子もそう思うか」
「うん…。鈴ちゃんはかなり本気で山本さんが好きだった」
「だからこそ、それ見て嫌気を感じた過去の私は、山本さんの家を飛び出して偶然、比叡君と出会ってこの関係が生まれた」
「鈴ちゃんと山本さんが喧嘩を本気でした時、私はチャンスだと思って、何度も山本さんに好意とを伝えても鼻であしらうだけだった」
「山本さんも鈴ちゃんが本気で好きだからこそ、比叡君と鈴ちゃんが内緒で遊びに行った事知った時に、私に怒りを思いっきりぶつけてきた」
「私達が、余計な事をしなければ良かったね……」
最後の言葉は、俯きながらに言う稀子。
本当にその通りだが、あの時の俺と稀子は、本当にペアの交換を望んで居た。
「過ぎてしまった事を言っても仕方無いよ。稀子」
「そう考えると俺は、山本家に翻弄されていたのかな?」
「それは違うと思うよ。比叡君!」
「山本さんは別だけど、おばさんは赤の他人の比叡君に、此処までの支援をしてくれた!」
「おばさんの支援が無ければ、今の比叡君は此処に居ないよ!!」
力強く言う稀子。確かにその通りだ。
ドラマの様な人生がここ数年間続いたが、本当にドラマの様なクライマックスが待ち受けている。
「そうだよな…」
「真理江さんが俺に肩入れを始めた理由は、山本さんの身勝手から始まったと思うのだが、実際は違うのかな?」
「それは…、おばさんに聞いて見ないと分からないよ。比叡君」
「ただ1つ言える事は、おばさんは比叡君を期待したし、鈴ちゃんも……母性本能で比叡君を助けたのでは無いかな?」
「鈴音さんが俺に好意を持ったのは、母性本能からか……」
「まぁ、私も似た様な物だしね! 比叡君を気に入った理由は!!」
最後の最後で、稀子から衝撃発言を聞かされる!!
俺が稀子と鈴音さんから好かれたのは、俺が駄目人間だったからか!?
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