223 / 434
【R-15】鈴音編 第2章
第221話 稀子の提案 その2
しおりを挟む
「……確かに、鈴音さんには聞かれたくは無い話だな」
「鈴音さんの中では、未だに決めかねている様だし……」
俺が就農の話を封印しているのも有るが、鈴音さんもその辺の事を話し出そうとはしない。
稀子の地区で農地を借りられる事に成っても、農地面積が少なければ兼業農家に成るしか無いし、農地が十分に借りられたとしても、俺の現段階で専業農家に成るのは無謀すぎる。
「稀子。それで、誰が俺に農地を貸してくれるのだ?」
「稀子の親戚の人か?」
「その人はね……私のお父さん」
「お父さん!?」
「稀子の父親が、俺に農地を貸してくれるの!?」
「けど、そんな事をしたら稀子の家は生活出来ないだろ!!」
普通、農地を借りられる機会が発生するのは、農地を保有している人が高齢に成り、農作業が出来にくく成るか、農地管理や手間の関係で、農地の一部を他人に貸し出す時が有るが、今回のケースは後者に成るだろう。
「私の家、これでも専業(農家)なんだ」
「私の両親と祖母の3人で農業をしているけど、祖母の方がそろそろ引退を考えて居るそうなの」
「両親だけでも出来ない事は無いけど、1人でも手が抜けると負担が大きくなる」
「それで……比叡君に、家の農地の一部を借りて貰おうかの話に成って」
「……専業だから俺が借りても、稀子の家には影響が無い位農地が有る訳か」
「あの時話した時は、稀子の家では無理な事を言っていたよね…?」
「うん。あの時はおばあちゃんが、引退を考えて居る事は知らなかったから」
「お盆で実家に帰った時に、その話をお父さん達から初めて聞いたから」
(稀子が最近、部屋に籠もりがちだったのは、両親と連絡を密かに取っていたのか)
(俺と鈴音さんに気付かれない様に……)
「どうする、比叡君…」
「私の地区に成るけど、就農したい?」
「稀子。それはしたいけど……俺はまだ半人前だ」
「助成金等は申請すれば良いが、現金は心許ないし、農作業スキルが全く未熟だ」
「凄いね! 比叡君!!」
「自己分析出来ているんだ!!」
何故か、驚いて言う稀子。
農業は簡単と思う人も居るが、農業は本当に奥が深い。
経営のセンスや土木作業等の職人スキルも求められるし、販売も手がけたければ営業のノウハウも必要に成ってくる。
農地さえ有れば、バラ色の人生が待っている訳では無い。
「まぁ、比叡君が就農したいと言っても、実は条件が有るのだけどね」
稀子は真面目な表情に成って言う。
「条件か…。当然有るよね」
「稀子がどの様に俺を説明したかは分からないが、稀子の親友だからと言って、ポンと貸す人は只の間抜けだからな!」
「じゃあ、比叡君。大まかな条件だけ言うね」
「1つ目は、今の農業法人で最低、3年間以上は勤めること。今の所でだよ!」
「これは……比叡君を即戦力で使いたいのと、鈴ちゃんの大学卒業に合わせてそうした」
「2つ目は、比叡君に貸す農地期間は10年」
「10年後に更新するかしないかは、その時の状況次第。この辺りも勉強したんだよね?」
「農地面積とか、地区の推奨作物とかの細かい事は後日言う」
「3つ目は、農業次世代人材投資資金の経営開始型を申請すること。この辺も比叡君も知っているよね」
「4つ目は、鈴ちゃんと一緒に夫婦で農業をして、私の地区に移住して……出来れば後継者を作る事//////」
4つ目の最後の言葉は、恥ずかしそうに言う稀子!
2つ目から3つ目は職業訓練の座学で習ったから、おおよそ理解出来るが、3つ目は鈴音さんの力がどうしても必要で有る。後継者は……問題ないだろう!?
「農業機械は家のを無料で貸し出すし、細かい所も両親がサポートしてくれる」
「これが絶対条件だけど…、比叡君は受け入れてくれる?」
「鈴音さん以外は問題ないけど、問題は鈴音さんだ…」
「後……稀子は、大学卒業後どうするのだ?」
「稀子も俺達と言うか、実家に戻るのか??」
「あ~~、私の卒業後?」
「私も両親のお手伝いをしても良いけど、今の大学は農業に関連性が無い学部だからな」
「地元の企業に就職しても良いけど……お仕事先がね」
「うん…」
「鈴ちゃんだね。鈴ちゃんを説得出来れば、比叡君の夢が叶う!」
稀子は力強く言う。
稀子の大学後の進路は、現段階では決まって無さそうで有るが、山間の地区だと働ける場所も限られてくる。
「……稀子の家には良く遊びに行っていたそうだから、鈴音さんも素直に受け入れるかも知れないな」
「何時もの鈴ちゃんならそう成るだろうけど……今の鈴ちゃんは私でも分からない」
「丁度、明日は休日だし、明日の午前中、鈴音さんに理解を求めるよ」
「そうだね…。私が居るとややこしく成るから居ない方が良いね」
そう言う稀子。
稀子の父親が出した条件は、一般的な条件で有った。
職業訓練での予備知識が有るから億劫には成らないが、後は鈴音さんをどう説得させるか……
疲れを癒やす休日では無く成りそうで有った……
「鈴音さんの中では、未だに決めかねている様だし……」
俺が就農の話を封印しているのも有るが、鈴音さんもその辺の事を話し出そうとはしない。
稀子の地区で農地を借りられる事に成っても、農地面積が少なければ兼業農家に成るしか無いし、農地が十分に借りられたとしても、俺の現段階で専業農家に成るのは無謀すぎる。
「稀子。それで、誰が俺に農地を貸してくれるのだ?」
「稀子の親戚の人か?」
「その人はね……私のお父さん」
「お父さん!?」
「稀子の父親が、俺に農地を貸してくれるの!?」
「けど、そんな事をしたら稀子の家は生活出来ないだろ!!」
普通、農地を借りられる機会が発生するのは、農地を保有している人が高齢に成り、農作業が出来にくく成るか、農地管理や手間の関係で、農地の一部を他人に貸し出す時が有るが、今回のケースは後者に成るだろう。
「私の家、これでも専業(農家)なんだ」
「私の両親と祖母の3人で農業をしているけど、祖母の方がそろそろ引退を考えて居るそうなの」
「両親だけでも出来ない事は無いけど、1人でも手が抜けると負担が大きくなる」
「それで……比叡君に、家の農地の一部を借りて貰おうかの話に成って」
「……専業だから俺が借りても、稀子の家には影響が無い位農地が有る訳か」
「あの時話した時は、稀子の家では無理な事を言っていたよね…?」
「うん。あの時はおばあちゃんが、引退を考えて居る事は知らなかったから」
「お盆で実家に帰った時に、その話をお父さん達から初めて聞いたから」
(稀子が最近、部屋に籠もりがちだったのは、両親と連絡を密かに取っていたのか)
(俺と鈴音さんに気付かれない様に……)
「どうする、比叡君…」
「私の地区に成るけど、就農したい?」
「稀子。それはしたいけど……俺はまだ半人前だ」
「助成金等は申請すれば良いが、現金は心許ないし、農作業スキルが全く未熟だ」
「凄いね! 比叡君!!」
「自己分析出来ているんだ!!」
何故か、驚いて言う稀子。
農業は簡単と思う人も居るが、農業は本当に奥が深い。
経営のセンスや土木作業等の職人スキルも求められるし、販売も手がけたければ営業のノウハウも必要に成ってくる。
農地さえ有れば、バラ色の人生が待っている訳では無い。
「まぁ、比叡君が就農したいと言っても、実は条件が有るのだけどね」
稀子は真面目な表情に成って言う。
「条件か…。当然有るよね」
「稀子がどの様に俺を説明したかは分からないが、稀子の親友だからと言って、ポンと貸す人は只の間抜けだからな!」
「じゃあ、比叡君。大まかな条件だけ言うね」
「1つ目は、今の農業法人で最低、3年間以上は勤めること。今の所でだよ!」
「これは……比叡君を即戦力で使いたいのと、鈴ちゃんの大学卒業に合わせてそうした」
「2つ目は、比叡君に貸す農地期間は10年」
「10年後に更新するかしないかは、その時の状況次第。この辺りも勉強したんだよね?」
「農地面積とか、地区の推奨作物とかの細かい事は後日言う」
「3つ目は、農業次世代人材投資資金の経営開始型を申請すること。この辺も比叡君も知っているよね」
「4つ目は、鈴ちゃんと一緒に夫婦で農業をして、私の地区に移住して……出来れば後継者を作る事//////」
4つ目の最後の言葉は、恥ずかしそうに言う稀子!
2つ目から3つ目は職業訓練の座学で習ったから、おおよそ理解出来るが、3つ目は鈴音さんの力がどうしても必要で有る。後継者は……問題ないだろう!?
「農業機械は家のを無料で貸し出すし、細かい所も両親がサポートしてくれる」
「これが絶対条件だけど…、比叡君は受け入れてくれる?」
「鈴音さん以外は問題ないけど、問題は鈴音さんだ…」
「後……稀子は、大学卒業後どうするのだ?」
「稀子も俺達と言うか、実家に戻るのか??」
「あ~~、私の卒業後?」
「私も両親のお手伝いをしても良いけど、今の大学は農業に関連性が無い学部だからな」
「地元の企業に就職しても良いけど……お仕事先がね」
「うん…」
「鈴ちゃんだね。鈴ちゃんを説得出来れば、比叡君の夢が叶う!」
稀子は力強く言う。
稀子の大学後の進路は、現段階では決まって無さそうで有るが、山間の地区だと働ける場所も限られてくる。
「……稀子の家には良く遊びに行っていたそうだから、鈴音さんも素直に受け入れるかも知れないな」
「何時もの鈴ちゃんならそう成るだろうけど……今の鈴ちゃんは私でも分からない」
「丁度、明日は休日だし、明日の午前中、鈴音さんに理解を求めるよ」
「そうだね…。私が居るとややこしく成るから居ない方が良いね」
そう言う稀子。
稀子の父親が出した条件は、一般的な条件で有った。
職業訓練での予備知識が有るから億劫には成らないが、後は鈴音さんをどう説得させるか……
疲れを癒やす休日では無く成りそうで有った……
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています
朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。
颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。
結婚してみると超一方的な溺愛が始まり……
「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」
冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。
別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる