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【R-15】鈴音編 第2章

第203話 悪夢の再来 その1

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 コートの男は取り出したナイフを、俺の横腹に目掛けて無言で刺してきた!?

「うぁ!!」

 俺はコート男を意識していたので、ギリギリの所で交わし無傷で終えるが……

「チッ!」

 コートの男は舌打ちをする。
 この男の中では、俺を刺せると思っていたのだろう……

(この男……以前道端で、俺に企業の場所を聞いてきた男だ!!)
(どうして、こんな事をする!?)
(俺が企業の場所を知らなかっただけで、何で報復され無ければ成らない!)

「どうしましたか!?」
「比叡さん!!」

 俺が体を急に避けたのと声を上げたので、鈴音さんも異変に気付く。

「あの男が……俺を刺そうとしてきた!」
「貴様、通り魔か!!」

 俺はコートの男に指を差すと……
 男は無言で……ナイフを力強く握りしめて、俺に向かって今度は突進して来た!?

「きゃ~~~~」

 その姿を見た鈴音さんが悲鳴を上げる!
 鈴音さんの悲鳴で、付近の通行人も俺達に意識を向け始めるが、まずはこの突進して来る男を避けなければ!!

(避けると言っても大通りだけ有って、人通りは多いから逃げるスペースが無い!)
(小型のナイフだが、場所によっては致命傷には十分に成りうる)

(このまま……素直に刺される訳には行かない!!)

「ごめん! 鈴音さん!!」

 俺は持っていた、雑貨類の入った袋をコートの男に向けてぶん投げる!
 雑貨と言っても、陶器類が入っているから、上手く当たれば相手はよろめくはずだ!

「うぁぁぁ!!」

『ガチャン~~!』

 農業の御陰で体が鍛えられたのか、俺が投げた雑貨類の入った袋は、コートの男に見事命中をする。
 音の感じからして、陶器類は割れただろう。
 男はその衝撃でナイフを地面に落とし、体は後ろに倒れ込む!

「やった!」
「一か八かだけど……まさかの大成功だ!!」

「クソッタレ~~」

 倒れ込んだコートの男は、同時にサングラスも弾き飛ばされた様だが……

「素直に……刺し殺されとけば良いのに~~」

 俺はこの怒り声で気付く!?
 コート男に向かって言う。

「まさか……山本さん!?」
「出所していたんだ!!」

 俺がそう言うと……コートの男。やはり山本さんは、俺を睨み付けながら言う。

「ぬけぬけと暮らしやがって……ゴミ野郎が…」
「てめえの人生をあっさりと終わりにするつもりが~~」

 怒りを露わにしながら、山本さんは言う。

「僕の鈴音を奪い、僕を社会的に抹殺した、青柳比叡だけは絶対に許さない!!」

 山本さんはそう言いながら、先ほど地面に落ちたナイフを回収する!?
 まだ、諦めないつもりか!? 普通の人なら逃げ出すのに!!

『おい! 誰か警察を呼べ!! 警察!!』

 付近の野次馬達も事の重大性を認知したのか、そんな声が聞こえて来る。
 今……山本さんが捕まれば、殺人未遂に成る可能性が高いだろう。

「僕が……今まで、どれだけ惨めな生活をしていたのか、比叡君には分かるか…?」

「……判る訳は無いだろうがな!」

 最後の言葉は、吐き捨てる様に言う山本さん。

「それは…、山本さん自身から出た身の錆でしょ!」
「脅迫や暴力で、物事が解決する時代は終わったのです!!」

「……お前みたいな無能に、言われる筋合いは無いよ!」
「保育士を完全に諦めて、土いじりをしている低脳君の癖に……」

(この人……完全に頭がおかしいよ!?)
(何故……素直に自分の過ちに気付かない!!)
(これ以上、罪を増やしたら……一生刑務所もんだぞ!!)

「孝明さん!」
「農業を馬鹿にする発言は止めてください!!」

「農業は土いじりで、出来る物では有りません」
「全てが計算されて、農作物は育っているのです!!」

 何と、鈴音さんが此処で加勢をする!?
 俺はてっきり、哀れみの言葉を掛けると思っていた……

「……鈴音は完全に、無能君に洗脳されてしまった様だな!」

「比叡だけを殺せば良いと思っていたが、鈴音もついでに死んで貰うか!」
「元々は……鈴音の裏切りが全てだからな!!」

 山本さんは、俺から鈴音さんに意識を変える。
 俺は最悪の事が有っても仕方無いが、鈴音さんだけは守らなければ!!

「孝明さん!」
「目を覚ましてください!!」

「私と比叡さんを傷つけても、それは只の自己満足ですよ!!」

 鈴音さんは、山本さんの説得を試みているが……

「自己満足の何処が悪い。鈴音!」
「お前だって、己の満足のために、比叡の所に行っただろうが!!」

「!!!」

 鈴音さんに向けて、怒鳴り散らす山本さん!!
 残念ながら付近に警察官はいない様で、危険な状態が続いている……

「僕の自己満足のために……君達には死んで貰うよ」
「鈴音だけは懺悔の意味で生かそうと考えたが、予定変更で鈴音にも死んで貰うよ!」

「地獄でも、2人仲良く交われば良い…」

 山本さんは俺達を見据えて、腰を低くして攻撃態勢に入った……
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