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【R-15】鈴音編 第2章

第180話 学科試験 その1

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 季節も4月に入り……今日はいよいよ、保育士試験、学科試験日で有る。
 学科試験は2日に渡って行われる。
 鈴音さんのあの時の言葉以来…。俺は本当にベストを尽くせる様に勉強に励んだ。
 特に試験日3日前からはアルバイトも休みにして、朝から晩まで本当に勉強に打ち込んだ。

 その姿に鈴音さんは凄く感激していて、稀子も素直に俺を感心していた。
 本当に人生の中で、今まで一番勉強をした時かも知れない……
 これだけ勉強と言うべきか、保育士試験、学科試験対策問題を解いたので、まさかの一発合格も夢では無いかも知れない!?

 試験会場はこの県の県庁所在地で行われるが、真理江さんの家から公共交通機関でも、1時間位の距離で行けるので、早起きして行く必要性は無かった。
 試験前日は早めに就寝して、万全の状態で目が覚める。

「うん! 意外に良く眠れたし、体調も悪い所もなさそうだ!!」
「これは……本当に奇跡が起きるかも!!」

 俺はそう思いながら洗面所で顔を洗って、台所に入ると今朝は鈴音さん、稀子の2人で朝ご飯を作っていた。

「おはようございます。比叡さん!♪」

「おはよう。比叡君!♪」

 2人とも朝らしく、爽やかな笑顔で挨拶をしてくれる。

「鈴音さん、稀子おはよう!」
「今朝は2人で、朝ご飯を作っているんだ!」

 俺が2人のそう声を掛けると……

「そりゃ、そうだよ!♪」
「今日は比叡君の試験日だからね!♪」

「私とりんちゃんからの、スペシャルメニューだよ!♪」

 稀子は、終始笑顔で言う。
 俺のために、特別メニューを準備してくれたらしい。
 そんな話は事前に聞いてなかったので、俺に対するサプライズだろう!

 稀子が話を終えた所で、タイミング良く真理江さんも台所に入ってくる。
 朝食の準備は、ほぼ出来ている感じだった。
 真理江さんと俺が椅子に座ると鈴音さん、稀子がお皿を持って来てテーブルに置く。

「はい! 比叡さん!♪」
「私と稀子さん共同の、スペシャルサンドイッチです!♪」

 鈴音さんは弾ける笑顔を俺に向けて言う。
 この笑顔も本当に久しぶりに見る。
 それだけ、俺に期待を掛けているのだろう……

「私は卵サンドと野菜サンドですが、稀子さんはトンカツサンドとハムカツサンドを作りました♪」

 お皿には“びっしり”とサンドイッチが乗っていた!
 トンカツやハムカツも揚げたてで有って、朝から稀子が揚げてくれたのだろう。

「比叡君!」
「験を2つも担ぐんだから、合格は間違いないよ!♪」

 稀子も満面な笑顔で言ってくれる。
 これだけの愛情を受け取ってしまったら、絶対に一発合格を意識しなければならない。

「2人共、本当にありがとう!」
「朝ご飯をしっかり食べて、試験に臨むよ!!」

「はい! 是非、そうしてください!!」

 俺は2人の気持ちの入ったサンドイッチを完食して、いよいよ試験に出掛ける準備をする。

 ……

「では、行ってきます!」

 今までは無かった光景だが、今日は全員が玄関まで見送りに来てくれる。
 何だか……今から戦地に向かう俺を、見守る家族の様に見えてしまう!?

「比叡さん! 頑張ってください…///」

 鈴音さんはそう言いながら、俺の頬にキスをしてくれる。

「鈴音さん…///」
「はい。必ず敵を打ち負かして帰ってきます!」

「お~~。威勢が良いね。比叡君!♪」
「私も鈴ちゃんの様に、比叡君とキスをしたいけど、怒られるから勘弁ね!♪」

「稀子…。気持ちだけ十分だよ!///」
「良い結果を出せる様に頑張るよ!」

「青柳さん。今回が駄目でも次回が有ります…」
「正直な戦いを…、して来てください」

(真理江さんの言葉の感じからして『不正はするな』と、捉えれば良いのだろうか?)

「はい。頑張ります。真理江さん!」
「近い内に……今までの恩をすべて返します…」

「では、みなさん。行ってきます…」

 俺は本当に出兵する様に玄関を開けて、静かに玄関を閉める。
 今までの人生……。他人からこんなに期待される事は無かった。

(これは本当に成果を出して帰って来ないと、居心地が一気に悪くなるだろうな…)

 俺は不吉な事も考えつつ、保育士試験、学科試験会場に向かった。
 家近くのバス停からバスに乗って、九尾きゅうお駅に向かい、駅からは電車でこの県の県庁所在地に向かう。
 真理江さん家から、1時間と少しで試験会場に到着する。

(いよいよだな…)

 俺はみんなの笑顔を思い浮かべて、試験会場に入った……
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