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【R-15】鈴音編

第82話 朱海蝲蛄(レッドロブスター) 【比叡】 その1

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 今日は土曜日!

 いよいよ、鈴音さんとの1泊旅行の開始で有る。
 朝の9時前…。俺は鈴音さんと待ち合わせで有る、アパート近くのバス停に向かう。
 俺の家や近所で待ち合わせをすると、稀子や山本さんに勘づかれる恐れが有るからだ。
 俺のアパート周辺に山本さんや稀子の姿は全然見かけないので、多分大丈夫だろう……

 旅の予定はバス停で鈴音さんと落ち合って、バス停から『富橋とみはし駅』の行きのバスに乗って、富橋駅からは国鉄で騒丘そうおか駅に向かって、騒丘駅から観光開始で有る。

 市内に有るお城を見たり、海辺に出て海景色見たり、観光農園に行くつもりで有る。
 この時期は苺狩りが出来るので、鈴音さんも楽しみにしている!

『苺狩りは実は、初めてですの♪』

 昨夜も電話向こうで、その様に言って居た鈴音さん!
 俺も今から鈴音さんと行く旅行が楽しみで仕方無かった!!
 約束の時間の5分前……。俺はバス停にたどり着くと、既に鈴音さんがバス停近くで待っていた。

「おはよう。鈴音さん!」

「おはようございます。比叡さん!!」

「流石、鈴音さんだね。時間前に来ている!」

「比叡さんこそ!!」

「あはは~」

「うふふ~~」

 それを言って、2人で笑い合う。最初から良い出だしだ!
 鈴音さんと一緒に居ると安心感を覚える。鈴音さんの方が年下なのに、お姉さんと居る気分だ。(俺には、姉は居ないけど…)

 稀子との水族館デートをした時も楽しかったが、稀子の場合は、稀子に常に引っ張られた状態で有り、楽しい事は楽しかったが、男としての立場は微妙だった。
 稀子の場合は我が儘な妹(?)な感じだ。(当然妹も居ない。今まで得た知識から!?)

 鈴音さんは俺を立ててくれるし、気を遣ってくれるから、あれやこれと考えなくても良い!
 稀子も気を遣わなくても良かったが、稀子の場合は本当に遠慮をしないから、時々苛つく事も有ったが……、鈴音さんで苛つく事はまだ無い。

 今回の旅行(デート)で一気に関係を恋人関係に発展させて、山本さんには別れて貰おうと俺は決意を固める。
 俺が山本さんとこじれて、俺が流血状態に成ったら、即警察に通報して山本物語を『THE END』にしてやる!!
 でもその前に、鈴音さんとの旅行を楽しむ!!

 富橋駅行きのバスはバス停の時刻表で見ると、午前9時5分と成っている。
 後10分位でバスが来るだろう。
 今日の旅行予定を再確認しつつ、2人で楽しく話し合いながら、バスを待っていると……。誰かが、背後から近づいてくる気配がする!

「これは……偶然では無いな!」
「君達…、そう言う事か……!」

 俺はその声で背筋が震える?!!
 独特の低音口調……。更に人を脅すような言い方…。俺の中で、その声を出す人物は1人しか居ない!
 俺はこの声は間違いないと感じて、その声の主の方に振り向くと……

「ほぅ……。お前ら、そんな関係に成っていたんだ…」
「鈴音が親友と遊び行く時に…、バス停で偶然、比叡君と鉢合わせたのかなと一瞬感じたが……違う様だね…!」

「僕に黙って……秘密の旅行か…?」
「成長したね……比叡君」

 やはりと言うか、其処に居るのは山本さんだった!!!
 何故……ここに居る!?

「やっぱり……鈴音の後、付けて来て正解だった!」
「鈴音が急に週末に、親友達と遊びに行くと言うから、気に成って後を付けたら……、君が出て来るとはね!」

「素直に引き下がる子では無いと感じていたが、僕にこの様な仕打ちをするとは、良い度胸してるね…!」

 山本さんの口調は冷静だが『今直ぐ、殺してやる!』の目付きで俺を睨んでした!
 山本さんは鈴音さんに振り向き、睨み付けては無いが、凄い低音口調で鈴音さんに言う。

「鈴音……。これどう言う事だ!?」
「僕が…、理解出来るように説明してくれ…?」
「鈴音の言う親友は、男の比叡君か…?」

 鈴音さんを脅し掛けて、稀子みたいに萎縮させるつもりだろう!
 鈴音さんはどうするのかと思うと……何と、真正面から鈴音さんは話をする!!

「孝明さん…。見ての通りです!」
「比叡さんと遊びに行くのです」

「遊びに行く……?」
「男と1泊のか…?」

「そうですわ!」
「比叡さんは私の親友です!」
「親友との楽しい時間の、お邪魔は遠慮下さい!!」

「鈴音…。こんなくず男と遊びに行ってどうする?」
「何処に行くか知らんが、こんな奴と遊んでも楽しく無いだろ…?」

「それに……僕と鈴音とは恋人同士なのに何を考えている!」
「鈴音の一般常識は何処に行った!?」

 ここで山本さんは語気を強めてきた。
 鈴音さんに対してもかなり、怒りを感じている。
 鈴音さんはここで、一息呼吸をする。言いにくい事を言う感じだ。

「なら……私からも言わせて貰います!」
「孝明さんだって、稀子さんと関係を深くしているのは、どう言った理由ですか!」
「孝明さんが私を差し置いて、稀子さんと関係を深めるのは、やって良い事ですか?」

「最近の稀子さんは、孝明さんにベッタリです!!」
「普通の男性なら、恋人をほっといて、女性の親友とは仲良くなりません…」

 鈴音さんが山本さんに向かって言うと……

「何だ……鈴音。“やきもち”を焼いているのか…?」
「鈴音が素直に成らないから、こう成ったのだぞ!」
「鈴音自身が悪いのに気付かないのか?」

「やきもち!! ふざけないで下さい!!」
「孝明さんは、自分勝手過ぎます!!」

 バス停前で、山本さんと鈴音さんの口論が本格的に開始されてしまった。
 この状態では、とてもバスも乗れないし旅行自体も中止か!?
 いや、それよりも……この状況をどうやって収束させる!?

「まぁ……良い。帰るぞ! 鈴音!!」
「その辺の話は家に戻ってからだ。比叡君も当然来て貰うよ…」

「比叡君が、どう鈴音をたぶらかしたか知りたいしね!」
「それと比叡君……君には、お仕置きが必要だな…。ちょっと“おいたがすぎた”な」

(お仕置き!!)
(絶対に普通のお仕置きでは無いぞ?!)

 近所では……こう成る事を恐れを考えて、待ち合わせをバス停にしたが意味が無かった!
 どうせ、此処までやるなら、国鉄『富橋駅』で待ち合わせるべきだった!!
 完全に見通しが甘すぎた!!

 山本さんは鈴音さんを連れ帰るために、鈴音さんの腕を掴もうとすると……、鈴音さんは意外な行動を取った!?
 俺と鈴音さんには、どんな結果が待ち受けているのだ!??
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