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第1部 第2章 僕と結花の関係

第12話 リクエスト

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 ……

「~~~」

「~~~」

 夕方には少し早い住宅街を、僕は結花と横並びで歩いている。
 空も良い天気で有る。

 微かに金木犀きんもくせいの香りを感じ、秋が本格的に到来したことを告げている。
 誰もが見ても、親子が仲良く歩いていると見るだろう。

 住宅街だけど、そんな爽やかな下を歩いているのだから、僕と結花は自然と笑みが零れる。
 そんな中、結花が和やかな表情で僕に話し掛けてきた。

「ねぇ、陽向!」
「今晩は、何が食べたい?♪」
「今晩のメニューは、まだ決めていないんだ!♪」

 結花は和やかな表情で、僕に晩ご飯のリクエストを聞いてくる。
 僕は結花と歩きながら、食べたい物を頭の中で思い浮かべ始める……

(今晩の気分は……肉かな?)
(肉と言えば……焼き肉、ステーキ、豚カツと有るけど……どれにしようかな♪)

(あっ……最近、結花の手作り(鶏の)唐揚げ食べていないな!)
(唐揚げを結花にリクエストしよう!!♪)

 僕は心の中で食べたい物を決めて、結花に和やかな表情で言い始める。

「お母さん!」
「今晩は、お母さんの唐揚げが食べたい!!♪」

「唐揚げ…?」
「そうね……唐揚げにしましょう。陽向!♪」

 結花は迷う素振りを見せること無く、僕のリクエストを聞いてくれる!
 ちなみに、結花に食べたい物メニューが決まっている時は、僕にリクエストを聞いてこない。

 なので、結花が僕にリクエストを聞いてくる時は、八割以上の確率で叶えてくれる。
 僕と結花でスーパーに向かって住宅街を歩いていると、付近を歩いている近所の人が僕達を見ながら、和やかな表情で声を掛けてくる。

「あら……こんにちは。新居浜さん!」
「涼しくなりましたね~~♪」

「……こんにちは!」
「そうですね……過ごしやすい日に成りましたね~~♪」

 結花も和やかな表情で、近所の人と会話を始める。
 僕はこの近所の人の顔は知っているが、名前までは知らない。

 良く見る人で有る。
 それは、結花も同じかも知れない?

 結花は美人で品行方正だから、元々近所でも噂に成る人で有った。
 そして、孝太郎が死んでからは未亡人に成った上、その死に方も悲惨で有ったから、僕の家の近所と言うより、僕の通っていた小学校区で、結花を知らない人は居ないだろう。

 その分……結花に再婚話を持ちかける不届き者が現れたが、結花は上手に断わっているし、僕もそれに応戦したから、結花に再婚話を持ち掛ける話は無くなった。

「では……失礼します!///」

 結花は和やかな表情で会釈しながら、近所の人との話を終える。
 僕はその人と距離が少し開いてから、小声で結花に聞いてみる。

「……お母さんは、さっきの人知っているの…?」

「ううん。知らないわよ…!」
「けど、声を掛けられた以上返さないと……」

「私も……この界隈では、名が知れ渡ってしまっているから!///」

 結花は穏やかな表情で僕に言うが、最後の文章は頬を染めながら、恥ずかしい表情で言う。
『人の噂も七十五日』と言うが、結花の場合はこれで終わらなかった。

 これは結花が美人なのも有るが、順風満帆な人生が一気に崩落したのだから、それを喜んでいる人間がそれだけ多いのだろう。

『人の不幸は蜜の味』

 結花の正面には敵が居ないが、裏は分からない。
 現に僕だって、裏には敵が居る。

 僕が優秀なのを、ねたんでいる人が居るらしい……
 だけど、それは競争社会だから敵が産まれるのは当然で有る。

 それは……僕(俺)が前世の時から変わらない。
 この世の中。”仲良しこよし”の世界なんて存在しないから。
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