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第5章 個別ルート 伊藤亜紀編

第480話 忍び寄る篤志

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 ……

 亜紀とのデートが終わった翌週から数日が経つ。
 学園生活での亜紀との関係は何も変わらないでいるが、亜紀は以前より微笑むことが少なくなった気がする?
 亜紀はやはり、俺と篤志を天秤に掛けているのだろうか?

 篤志が亜紀自宅の固定電話に架けてきた、通話内容を俺は亜紀に聞いて見たが、亜紀は『別に、昔話を楽しんだだけだよ』と、穏やかな表情で言われてしまう。
 俺には亜紀周辺を探れる人物はいないから、亜紀の言葉と行動を信じるしかない。

 その日の放課後……

 俺は部活・クラブ活動には入っていないし、亜紀は授業後でも特進コース生だから特別授業が有る。
 亜紀と付き合い始めた当初は、亜紀の特別授業が終わるのを俺は良く待っていたが、最近は待たないことも多くなって、以前のように一人で学園から帰る日も多くなった。

(さて、家に帰ったら何をしようかな♪)

 今日も一人で、俺は学園の正門から出るが、その時に……俺に向けて爽やかな口調で声を掛けられる?

「……三國武蔵さんですよね?」

 俺は急に声を掛けられたので、内心驚きつつ、その声の方に顔を向けると、以前プリンモールで出会った黒崎篤志で有った。

(こいつ……遂に、学園まで来たか!)
(俺では無く、絶対に亜紀が目的だろうな!!)

 俺は心の中で敵対心を持つが、それは口には出さず、穏やかな表情で篤志に話し始める。

「えっと……黒崎さんですね。こんにちは」
「はい…。三國ですが…!」

「やはり、そうでしたよね。こんにちは!」
「プリンモールでお会いした、黒崎です…!」

「……今日は伊藤亜紀さんとは、ご一緒では無いのですか?」

 篤志は和やかな表情で俺に言った後。尋ねる表情で俺に聞いてくる。
 やっぱり、亜紀が目的か!

 俺は困った表情をしながら、篤志からの問いに答え始める。

「あ~~亜紀はまだ、授業中なんですよ!」
「亜紀は、黒崎さんも知っているように特進コースですから…」

(さて、この言葉で篤志はどう出る?)
(このまま引き下がるのか、それとも亜紀が此処に来るまで、待っていると言うか?)

「そうか……それは、都合がいいな!」

 篤志は何かを小声で呟いたが、俺には聞き取れなかった。
 すると、篤志は突然笑顔に変わって、俺にフレンドリー口調で話し始める!

「三國さんでは無く、武蔵さん!」
「今日は亜紀に会うのが目的では無く、武蔵さんに会うのが目的だったのです!」
「いや~~、会えて嬉しい!♪」

「!?」

(俺に会うのが目的だと!?)
(篤志は俺を、懐柔させる気か!!)

 俺は心の中で感じるが、篤志はフレンドリー口調で言葉を続ける。

「俺は武蔵さんのことを、亜紀さん経由でしか聞いていませんが、俺自身でも武蔵さんのことを知りたくて、態々わざわざ学校を早退してまで来訪しました!」

「もしよろしければ、この近くに有るファミレスで、少し談笑をしませんか?♪」
「あっ、当然。俺からの誘いですので、武蔵さんの飲食代金は全て持ちます!」

 篤志とは学校は違うが、同級生で有る俺に対しタメ口では無く、比較的丁寧語で話す。
 俺も、篤志のことは亜紀からの情報だけでは無く、自分自身で聞いて置かなければ、篤志が真の敵なのか、それとも只の興味なのかは見抜けない。

(名和高校を早退して来た割には、篤志は制服姿なんだな…!)
(名和高校からそのまま、葉月学園に来たのかな?)

(学園近くのファミレスだと『クチナシ』が、一番近いよな)
(クチナシなら、葉月学園生も良く立ち寄る店で有るから、余所者の篤志も変な行動は取れないだろう)

 篤志の姿は、襟詰めの学生服姿で有った。
 ふざけた着こなし方はしていないので、篤志は高校で優等生を演じているのだろう?

 葉月学園から一番近いファミレスは『クチナシ』で有る。
 そのファミレスは、イタリアンファミレスで有り『クチナシ』と言う店名で展開している。

 葉月学園から一番近いファミレスで有るから、放課後はクチナシに立ち寄って、学園の親友同士や、部活・クラブ活動同士で会話を楽しむ学園生も多い。

 ファミレスで有るので料金の単価も安く、イタリア料理の代表で有る、ピザやパスタも安価で食べることが出来る。
 葉月学園から駅の方角に有り、俺には自宅と反対方向に成るが、学園から徒歩で約10分で行けるので、駅前のハンバーガーショップに行くよりかは近い。

 篤志は、俺のことを知りたいから近付いて来たし、俺も篤志のことは自分自身でも知りたかった……
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