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第5章 個別ルート 伊藤亜紀編

第439話 グリーンホール

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 ……

 演劇部の演劇が行われる、グリーンホールの開館時間が近付いて来たため、俺は亜紀と見て回っていたグラウンドの模擬店巡りを終えて、グリーンホールへ向かうわけで有るが、亜紀の手には園芸クラブの直売所で買った、野菜類が入ったレジ袋を手に持っている。

 グリーンホールに向かう前に亜紀の教室では無く、俺の教室に寄り道をして、俺の自席に亜紀が買った野菜類が入ったレジ袋を置いていく。
 グラウンドからは俺の教室の方が近いし、野菜泥棒をするクラスメイトも居ないだろう?

 俺の教室を寄り道した後は、グリーンホールへ向かう。
 グリーンホールは、図書館奥側に在る。
 感じ的に言えば、図書館の後にグリーンホールが建てられたそうだ。

 俺の教室に寄り道をしていたので、少し出遅れてしまったが、俺と亜紀はグリーンホールに到着する。
 だが……ホール入口には、人が“どんどん”集まって来ていた!

「……これは、一番良い席は取られたかもね…!」
「ほぼ、開館時間に来たのに…!」

 グリーンホールに到着した直後。表情は澄ましたままだが、少し悔しそうな口調で呟く亜紀。
 俺は演劇部の演劇を見るのは初めて有るが、そんなに大人気なんだろうか?

 吹奏楽の演奏も含めて観覧料は無料で有るし、チケットや指定席も存在しないので、席は当然早い者勝ちに成る。
 俺と亜紀はホール建物内に入り、座席確保に向かう……

 ……

 真ん中の一番見やすい席は取られてしまったが、その前の席を確保することは出来た!
 席が確保出来た、俺と亜紀で有るが、開演まではまだ20分以上の時間が有る。

「武蔵君…」
「席も確保出来たし……手洗い行ってくるわ!」

 亜紀は穏やかな表情で俺に言い終えると、亜紀は席を立つ。
 言葉の通り。亜紀はトイレに行くのだろう。

(亜紀はトイレに行ったか……俺も、何だかトイレに行きたく成って来たな…!)

 演劇の開演は11時10分からで有り、終演は12時10分で有る。
 公演中にトイレに行くのは緊急事態を除いてマナー違反に成るから、開演までにトイレを済ませておくのがマナーで有る。

 だが、この席は自由席のため、俺も席から離れたしまったら、他の人に席を取られるかも知れない。
 衣類などを置いて自己PRする手も有るが、傲慢な奴はそれをどかして座る!!

 この間にも、良い席は“どんどん”と埋まって行っている。

(亜紀が戻って来るまでは、俺はこの場所にいよう!)
(亜紀も、この演劇を楽しみにしているようだし…)

 俺はそう思いながら、亜紀が戻って来るまでの間は席に座っていると……突然、若い女性から声を掛けられる。

「……すいません」
「其処の席は空いていますか?」

「あっ…!」
「すいません…。俺の右横はもう、埋まっています…!」

「あれ……真優美さんですか!?」

 俺は声を掛けて来た女性に、困った表情で話していると、その女性が真優美さんだと俺は気付く!
 俺は陽葵先輩とのデート以降『撫子なでしこ』には顔を出して居なかったし、俺が見る普段の真優美さん姿は、喫茶店の制服姿で有るから直ぐには気付かなかった。

 真優美さんはコートを着ているし、普段とは違う雰囲気を感じた。
 喫茶店で見せる賑やかな感じでは無く、清楚な感じと言えば良いのだろうか?

「えっ…!?」
「あら……三國君!♪」

「こんにちは。偶然ね!」
「三國君も劇を見に来たんだ!♪」

 真優美さんは俺の言葉で驚くが、俺に気付いた真優美さんは、直ぐに和やかな表情で話し始める。
 真優美さんは、その表情で言葉を続ける。

「三國君の右は埋まっていると聞いたから、左側は空いているのね!」

「こんにちは。真優美さん!」
「お久しぶりです…!」

「あっ、はい…!」
「右はダメですが、左は空いていますね…!」

 俺は、穏やかな表情で真優美さんに言う。
 俺の両隣は現在、ちょうど空席状態で有り、右側は亜紀の席だが、左側は誰もまだ座っていないし、権利も主張していない。

 真優美さんは和やかな表情で、俺に話し始めた。
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