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馬車ってかぼちゃのイメージがいまだに抜けないから、今度は丸い馬車に乗せてもらった。今度はかぼちゃから?って聞いたら、かぼちゃではありませんよと運転手さん(ぎょしゃさんらしい)に言われた。あと先に馬は馬だし、自分も後ろのフットマンも人間だと言われた。前回と同じ人だ。

「せっかく水色のドレスにしたのにー。あたしが着ると子どもっぽくなっちゃうけど、馬車乗るなら水色なんだよね」

クラシカルなアップヘアにして、ドレスと共布のカチューシャに黒いチョーカー。もはやプリンセス、あたし!馬車はかぼちゃじゃないし靴もガラスは却下されたけど。チョーカーの真ん中にはいくらかわかんない宝石がぶら下がってる。

ちなみに今日のお支度当番はミシェルじゃなくてミシェルパパだった。イケオジだった。おじさんなんて年齢じゃないかもだけど。落ち着いててなんかいい匂いした。耳元で囁かれるとドキドキして恋か!?って思ったけど、コルセットの締め方がミシェルと一緒で一瞬で冷めた。マジ親子。容赦なさすぎ。楽しくごはんたべる目的って言ったら緩めてもらえた。あっ、ミシェルより好き。

「ミズキ様のような方が愚息の妻であればいいのですけれど」
「へぇー誰かいるといいね」
「ミズキ様へ恋人からと申し出があったと思いますが?」

姿見越しに目を合わせながら言うことか?むしろなんで知ってるの!?

「城の中のことで私が知らないことはありません」

こっわ。え?なんで?ちょーこわいんだけど。なんで考えてることわかんの?すっごい微笑まれてるんだけど、それすらこわい。目笑ってないとかまさにこの人のことじゃん。

「なぜかうちの愚息ではなくディヴリーの次男が貴女様の恋人にちゃっかり収まってるんでしょうかね?我が愚息はお気に召しませんでしたか?」

このタイミングでチョーカー合わせてくるとかおそろしすぎるんだけど。あれ?あたし絞め殺される?
絞め殺されなかった。ベロアのチョーカー、リボン止めはゴールド。かわいい。好み。真ん中のは??

「これは私と妻からミズキ様へ贈り物ですよ。まぁ賄賂とでも申しましょうか?愚息のことを頭の片隅にでも置いていただけたらと思いまして」

聞きたいことは先に答えられるし、今日がどんな日かわかってこんなことをしてくるんだから、ミシェルパパとミシェルママはほんといい性格してると思う。お手を失礼と左手を触られて、ネイルのチェックかと思いきや薬指の根本をさわって「5号ですね」とかこわすぎる。ジョエルよりヤバイ奴がここにいた。

「今日もミズキはお姫様だよ」
「ありがとうノア。ノアがいなかったらあたし泣いてた」
「どうしたの!?」
「ミシェルのパパ恐ろしすぎた…」
「あぁ…うん…いい人なんだよ?」

思い当たる節があるようだ。まさかノアも触っただけで指輪のサイズ当てられたとか?って聞いたら、服のサイズを見ただけでピッタリ当てられたとのこと。オーダーメイドで靴までピッタリだったとか恐ろしすぎる。確かに、今日の靴も履き心地がいいかもしれない。なんてすごい才能の持ち主なんだミシェルパパ。え?もしかしたらスリーサイズとかも全部わかられたってこと?あたしもわかられてるじゃん!

「たぶん今度贈られてくるよ」
「うん、なんかそんな気する…」

あの親にしてこの子あり的な?蛙の子は蛙的なやつだ。贈られてくるとしたら多分服じゃなくて下着だと思う。








「ホテルやばっ!でかっ!」

異世界のホテルなんてそんな大したものじゃないだろうって思ったら、あたしが日本で知ってるようなホテルだった。高層ではないけど思ってたホテルだった。

「僕も仕事以外では来たことない…」
「マジ高級ホテルじゃん。やばっ緊張するんだけど。こんなコスプレみたいなドレスでよかったのかな?」
「かわいいからいいんじゃない?」

まぁコスプレだってわかるのは例のヒナ様しかいないだろうし問題ないか!あーあ今日だけでも金髪にしてもらえばよかった。
城より豪華なんじゃないかと思われるホテルの入り口にはジョエルの家名とノアの家名が貼り出されていた。なにこれ、○○様御一行みたいなもん?道順も矢印とか貼ってくれればいいのに、わざわざホテルマン(ホテリエでございますって言われた)出てきて案内してくれた。流石国一番の高級ホテル。フロントには女性がいた。この世界で働いてる女の人初めて見た。すげー。やっぱめっちゃエリートなんだろうな。

「ねぇノア、ホテルの建物の中なのに噴水あんだけど」
「だから。びっくりだよ」

大きい声で話してもアホっぽいから小さな声でノアと話す。念話でもいいけど、もうこれは頭の中に留めておけない。だって噴水!

「天井もやばいよ、3階分くらいあるよ。お城みたい」
「ミズキみて、シャンデリアの奥というか天井。すっごい絵描いてある」

でもやばすぎてもう普通に喋ってる。もはや修学旅行にきた学生並みになってきた。こんなときでも笑ったり吹き出したりしないこの人はめっちゃちゃんとしたホテルマンさんだわ。

「こちらのレストランもお勧めですよ。是非旦那様方とお越しくださいませ。異世界の花嫁様の御予約でしたら最優先にさせていただきますので。」

あまりにもあたしとノアがなんにでも反応するから、施設案内しながら進んでくれるホテルマンさん。レストランもこれ何個目?3つ?

「ディナーもいいしランチもいいよね。絶対来ます!」
「御宿泊も是非」
「えー、ルームサービスも気になっちゃうよねー。困るー」

ノアときゃっきゃしながら歩いてたら変な絨毯の上に立たされた。

「特別なお客様のみ御案内いたします転移陣です」

絶対邪魔されないように転移できないバリアみたいなの張ってるところで顔合わせらしい。え?こわっ。ノアでもちょっと厄介らしい。

着いた所はホテルが見える別棟だった。最初からこっちに案内してくれればいいのにって思ったけど、多分それはできないのだろう。あの絨毯みたいなやつの転移陣に入らなければいけないらしいから。
そんな厳重な場所はただの宴会場だった。煌びやかな宴会場だ。なんでって?みんなお酒が入って大声で笑って楽しそうだからだ。

「ミズキっ」

小走りであたしたちのところに来たジョエルに抱き締められた。え?これジョエル?

「ようやくだ。あと2週間後には正式に夫婦だ。長かった」
「いや、短いし早い」

顎クイ!顎クイされて親族達の前でキスされた!しかも舌入ってきたし!
ジョエルのパパとノアのパパが大笑いしてる。

「父さん!ジョエル様に何をしたんですか?」
「いや、ただこの坊っちゃんが素直になれればとちょーっとドリンクに細工をしたらコレだよ。お前といるから耐性があるのかと思ったけれど意外と無防備なんだな。あっはっはっは!このままだと異世界の花嫁がこの場で脱がされるぞ」
「駄目っ!ジョエル様っ!」

ノアがドリンクにかけられた魔術なるものを解いたらジョエルはいつも通りの敬語に戻ってしまった。素のジョエルはセックスの中盤くらいからしかでてこないから今のはちょっと嬉しかった。あとでノアに頼んでノアパパに教えてもらってほしい。



今日の主賓はあたしだったのか。もはや二次会みたいなノリになっている。きっとあたしがミシェルパパに苦戦していた時からこの宴会は始まっている。

「お義姉様!」

嬉しそうにやって来たのは年上の義妹、ジョエルの弟さんの奥様だ。

「ごきげんよう」

ジョエルにさんざん躾られた挨拶はきちんとできた。本当にさんざん躾られた。どこに出しても恥ずかしくない程度には出来てくださいと数時間ごきげんようの挨拶だけやらされたものだ…

「お茶会を催して下さいとお願いしてしまい、申し訳ありませんわ。夫達にもお義父様達にも叱られてしまいましたの」

あたしよりよっぽど女の子らしいこの年上の義妹に感心してしまう。あぁ、これぞ女の子。女の子は失礼か、女性。あたしも仕事ならぶりっこできるけど、年上の義妹はナチュラルだ。教育すげぇ。

「先程支配人とお話しましたのよ。このホテルであれば、私が主催してもお義姉様をお招きするのに失礼にはあたらないと。お義姉様もお気に召して頂いたようだとお喜びになっておりましたわ」

支配人なんて会ったことねー。って思ったけど、さっきのホテリエさんがまさか支配人?いや、絶対そうだわ。義妹さんに使ってもらうためだったんだ。やべぇ支配人恐るべき人材。

「え、えぇ。」

言葉遣いも普段なら直さなくていいけど、公の場のときは弁えろと。先生に言われた。あと先生の奥様。先生はあたしのところに奥様と一緒に来る権利を勝ち取ったみたいだ。
普段のしゃべり方では貴族社会ではナメられる、むしろバカに見られると言われてイラっとしたからちょっと直した。全部は無理。ヤバイはなるべく使うなって言われたけど、ヤバイってちょー便利な言葉だって使うなって言われると気づく。なんでもヤバイで済むんだもん。とにかく笑顔で返事だけすればやっていけるから乗り切れと言われている。

「結婚式のご準備でお忙しいでしょう?終わってからご招待してもいいかしら?…お義兄様、どうかしら?」
「結婚式のあとは新婚旅行に行くつもりでしたからね…考えさせてください」
「…わかりましたわ。残念ですけれど」

年上の義妹はジョエルを睨み付けているのだろうが、多分ジョエルはなんとも思っていない。
新婚旅行行くの?初耳!ジョエルとノアって同時に休み取れるの?




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