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二章 成長した愛し子

十二話 吸血と注血

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 やりすぎたかしら……?
 すっかりヘロヘロになって気絶してしまった。
 前回よりも感度が上がっていた気がしなくもない。
 全身が汗と唾液と愛液に塗れていて、なんとも淫靡だ。
 私に穢されたルゥが愛しく見えてしまってどうしようもない。
 あぁ、もっと……食べさせて……。
 気絶しているところに申し訳ないが美味しくいただこう。
「……ん……ふ」
 首筋に強くキツく吸い付いて痕を残す。
 それだけでは気が済まなくて、尖らせた犬歯で真っ白な肌を貫く。
「……いっ!な、にして……!?」
 起きてしまった。
「~~~~!!」
 ごめんね、慣れないと痛いわよね。
 おなかが空きすぎて血が欲しくなってしまった。
 ルゥの目にじわりと涙が滲んだ。
 涙を拭ってやりたいが、魅力的な血に夢中になっていて気が向かなかった。
「んん~!はぁ、はっ」
 段々と血を吸われることに慣れて快感を拾い始めたようで、少し安心した。
 想像以上にルゥの血が美味しくて、そろそろ牙を抜かなきゃいけないのに、それが出来ない。
 誰かルゥから引っペがしてくれないだろうか?
「もう……ダメ……!」
 ペシペシッと頭を叩かれた。
 それで止まったら悩まないんだ……。
「ダメだったら……死んじゃうよ……クラクラするよ……」
 その言葉に衝撃を受けた。
 そ……そんなに吸ってた?嘘でしょ!?
 ごめんなさい。今後、血を吸うのはやめるわ。
「……ダメ」
 え。
 死にかけた当の本人に拒否された。何故。
「気持ちいいから……やめないで……?」
 そんなにトロンとした目で私を見ないで。
「すぅ……」
 言うだけ言って、貧血でまた気絶してしまった。
 今回ばかりは自業自得である。
 致したいのに吸血して気絶させた上に体力を奪っては、元も子もない。
 そうだ、私の血をあげれば良いのでは?
 今の私は現人神のような状態。
 つまり、血が流れている。神気は他の若い神族に比べれば格別に濃いと思うけど。
 一般人が私の血を受ければ、間違いなく死ぬ。
 運良く死ななかったとしても、狂人化するか廃人になる。
 例外は唯一つ、この私の愛し子であること。
 寵愛と恩寵、二つを与えられていれば昇華することが出来る。或いは進化とも言えるだろう。
 例えば、エルフならハイエルフへ。ハイエルフなら、精霊もしくは神へ。
 ルゥの場合はどうなるのだろう?精霊族か、神族への仲間入りか。私にも結果は分からない。いや、わざわざ未来を変えたり、覗いたりする趣味がないと言うべきか。
 うん、決めた。昇華させる。
 もし、神族になれば私と同じく不老不死になれる。
 ……流れる血は近くなってしまうけれど。でも、それはそれで……いい。
 ねぇ、ルゥ?あなたの心は今どこにある?誰に向いている?
 私以外の人が好ましいならごめんね。
 これからする行為は取り返しがつかない。もしかしたら、あなたに嫌われてしまうかもしれない。今度こそ私の前から消えてしまうかもしれない。
 それでも、私は……。

 ──カプッ。ちゅうう。

 あなたが、欲しい。
 私の元へ堕ちてきて。私とともに深みへ行きましょう?

 私は……あなたの虜よ。

 あなたも、私の虜になって。

「んぅ……!?」
 逆流する血に驚いたのか、呻いた。
 少しの間だけ、我慢してね……。
 もう少しだから。
 あと、少し。
「う、はぁ……んん!」
 頭を撫でて慰める。
「くる……じ……ぃ!あ"ぁ"!」
 ちゅうう、と体に流れる血を三分の一近く注ぎ入れ終えたあとに傷口を癒し、そこに口付けた。
 頑張ったわね、偉い偉い。
 今度は自分が貧血になったが、ほんの少し休めば回復する為さしたる支障はない。
 ルゥの身体を拭き清めて、眠りについた。

 ✻    ✻    ✻   ✻

 体が、熱い……!!
 血を吸われて気絶したと思ったら、今度は何故か逆に血を注ぎ込まれていた。直接見たわけじゃないけど、多分そうだと思う。
 痛くて痛くて気が狂いそうだったけど、頭を撫でてくれたから懸命に耐えた。
 五分近く耐えた頃、ようやくお姉ちゃんが離れていった。
 今までで何度か襲われたけど、今が一番汗をかいた。
 体が熱くて、まだ若干噛まれた場所が痛くて辛い。
 逆流した血液が暴れて苦しい。
 自然と息が荒くなる。
 反対にお姉ちゃんは、すやすやと寝息をたてて熟睡している。
 どうして血を吸われて、どうして血を注がれたんだろう?考えても分かる気がしない。
 でも、何も考えずにする人じゃないから、理由はあると思う。それが何か図りえないだけで。
 在り来りな理由だとすれば、おなかが減っていた、とかだけど……。でもそれだと、血を注いだことで意味が無くなってる気がする。
 おなかが膨れたのは一瞬ではないだろうか。
 うーん?
 ……分からない。
 何故か知らないけど腰が痛い。血が足りないからかなぁ。
 しばらく寝れなさそうだ……。

 朝日が差し込んできた頃にようやく痛みが和らいで眠れた。

 ──までは良かった。

「え、は?え!?な、え!!?はぁぁ!!!??」
 驚きすぎて混乱した。
 真面な言葉が出てこない。

 なんで……!なんで!?なんで?ねぇ、なんで??お姉ちゃんの仕業だよね……!後でちゃんと説明してね……?はぐらかしたりしないでね!!?頼むよ!?

 ──しっぽが生えた理由を。

 ──教えてください。
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