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4.調査結果

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「王子は自分の過ちを認めるどころか無実の相手を貶めて殺し、王はそれを許してあまつさえ肉欲に溺れる、両親でさえ我が子よりお金を取る国よ?どう考えたって失敗じゃない」

 わかりやすく言ってあげたのに、王子はまだ理解出来てない顔をしていて…馬鹿なのかしら?

「アナベルは貴方と婚約者になる為に王と寝たのよ?」

 更に噛み砕いて教えてあげると、王子は勢いよく振り向きアナベルを見た。

「うっ、嘘です!そんなデタラメな事言わないで下さい!」

 顔を真っ青にしたアナベルが顔を左右に振りながら私を睨む。

「お馬鹿さんね。素直に認めなさい?何ならその行為の一部始終を水鏡で映してあげてもよくってよ?」

 アナベルは唇を噛み締めているものの、私を睨む事を止めない。

「そんなに妬ましい目で見ないでくれるかしら?まとわりついて気持ち悪いわ」

 負の感情を纏ったその視線はぬるりと絡みつくようで不快だわ。
 忠告したにも関わらず、もっと不快になれとばかりにアナベルは私を見つめたままだった。

「見るなと言っているのよ」

 言い終わる頃にはプディングが潰れるようなぶちゅりと粘度のある音がする。

「ぇ……何?何なの?……ぁあ…ああぁあああっ!」

 突然の暗転に顔を覆うと、瞳があった場所には彼女の感情と同じような真っ黒な空洞ができていた。
 叫ぶ彼女に呼応するように、周りからも悲鳴が上がる。

「うるさいわ、静かにして頂戴。痛くないようにしてあげたんだから」

「なんで!なんでよっ!」

 私の声を聞き、周囲は両手で唇を押さえるようになった。いいこね。
だが、アナベルは見えないせいか明後日の方向を向いて怒鳴っていた。

「見ないでって言ったじゃない。言うことはきちんと聞くものよ?そこで大人しくしていなさい。口も塞がれたくはないでしょう?」

「……ごめんなさい。もう見ないから…。治してください」

地面にペタリと座り込んでアナベルは許しを乞うてきた。

「え?嫌よ」

「っ!?なんでよ!もう見ないって言ってるじゃない!ちゃんと謝ってるじゃないのよっ!」

「…あぁ、本当にもう、うるさいわ」

思わず心の声が漏れ、途端に静かになった。
最初からこうしていれば良かったわね。
 のっぺりとした、かつて唇があった場所を撫でながら暴れているようだけど、言うことはきちんと聞きなさいって言ったじゃないの。

 動作としてはうるさいものの、騒ぎ立てるような事をしなくなったので、目の前の王と王子を見る。
 二人とも股間を濡らし、王は真っ白な顔で震え、王子は身動き一つしなかった。どうやら気絶している様子。

「人の世界でいうと、もうずっと前から調べていたのよ?人間を依代として平民にも貴族にも王族にも生まれていたのよ」

そういうと王がゆるゆるとその顔を持ち上げた。その顔は何の話だと言いたげね。

「この国の死者の魂を管理してたら、その生を嘆いてる者が増えているのがわかって、その調査をしていたのよ」

わかったかしら?と王を見て微笑むが、理解しきれていないようね。

「一度や二度じゃないわ。
貴族に拐われ乱暴の果てに殺された平民。
高位貴族に婿入りし、虐げられ虐待の末死んだ下位貴族の息子。
結婚した家で夫以外の者にも慰み者のように扱われ、愛人が孕んだと殺されて捨てられた高位貴族の娘。
友好の証として他国に人質のように嫁がされ、その国に戦争をふっかけたせいで拷問の末に殺された王女。
 他の平民や貴族、王族にも生まれたけど、どれも似たり寄ったりね。どんなに辛くても自死する事はなかったけど、いずれも短い生だったわ…。

そして、今回が最後の調査よ。さっきも言ったけど、この国は失敗。だから、一度滅ぼす事にしたのよ」

零れそうな程に目を見開き、パカリと開いた王の顔を見て思った。やっと伝わったのね。

 
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