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第七章
7-17.決着
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「うん。わかった」
玲奈は背後から炎を避けて駆け寄ったミルの言葉に頷きを返した。仁に頼ってもらえたという事実に、玲奈は苦しげな顔に喜色を浮かべる。元々、玲奈自身でドラゴンをどうこうできるとは思っていなかったが、それでも少しでも仁の助けになればと思って戻ってきたのだった。玲奈は襲い来る炎の隙間からチラッと横目で仁の姿を確認すると、正面に向き直って左腕の盾に一層魔力を注ぎ込んだ。
玲奈は初めて相対したドラゴンに恐怖心を抱いていたが、仁を置いて自分たちだけ逃げる選択肢は選びたくなかった。その思いはミルやロゼッタも同じだったようで、商隊を帝都外に避難させた後、仁の元に戻ると言った玲奈を止めることはしなかった。ガロンたちは商隊の護衛は任せろと玲奈たちの背中を押し、クランフスは玲奈たちと一緒に行くと主張していたが、足手まといになりかねないとガロンに諭されて帝都の民の避難誘導に回った。また、マルコやリリーは仁や玲奈たちの勝利を信じ、帝都の復興への援助のために動き始めたのだった。
「ハァッ!」
地面に顔を近づけて火炎の吐息を吐き続けているドラゴンの首の付け根の側面に向かって、ロゼッタが裂帛の気合と共に亜竜の槍を突き出した。その切っ先はドラゴンの硬い鱗に遮られ、小さな傷を作ることすらできない。ロゼッタは自身の不甲斐なさに歯噛みしながらも、玲奈への攻撃の手が少しでも緩まるよう、何度も突きを繰り返した。
ロゼッタは仁から譲り受けた槍に相応しい武人になろうと精進してきたが、未だその域に達しているとは思えなかった。強くなった実感はある。レヴェリー奴隷館のパーラの元にいた頃の、ただ漠然と武人に憧れていたときと比べれば、ロゼッタは明らかに強くなっていた。勇者の称号の効果は常識では考えられない程の速度でロゼッタを成長させ、ロゼッタは玲奈たちと共にダンジョンの上層ボスを倒し、一人でB級冒険者にも勝ってみせた。しかし、帝都への道中で遭遇した金狼王との戦いでは大して役に立てなかった。今回のように相手がドラゴンともなれば尚のことだった。
常々力不足に悩むロゼッタに対し、仁はいつか必ず強くなるからと励ましていたが、それでは遅かった。いつかではなく、今このとき、仁や玲奈を助けられる力が必要だった。
ロゼッタは槍の柄を強く握り、狙い澄ました一撃を放った。鱗と鱗の重なる僅かな隙間に、濃緑の穂先をねじ込む。
「ハァアアア!」
雄叫びを上げながら、ロゼッタは渾身の力を込めて槍を押し込む。薄くミスリルでコーティングされた柄がギチギチと軋みを上げて撓った。
「ロゼ!」
玲奈の悲痛な叫び声が辺りに木霊する。いつの間にか玲奈への吐息の放出を止めたドラゴンが体の側面に首を回していた。ワインレッドの瞳がロゼッタを捉えるが、ロゼッタは気付かない。火炎の吐息を耐えきって片膝をついている玲奈が消耗した体で魔力を練るより早く、ドラゴンの口から火炎の球が放たれる。咄嗟のことで避けることのできないロゼッタが火炎球の直撃を受けて吹き飛んだ。
『我は虫に纏わり付かれるのは好かん』
「ロゼお姉ちゃん!」
ぐったりと地に伏すロゼッタにミルが駆け寄る。一目散にロゼッタの元に向かうミルに向けてドラゴンが火炎球を放つが、ミルは血喰らいの魔剣で切り払う。ミルは次々と襲い来る火炎の球を尽く払いのけ、ロゼッタの元に辿り着いた。
『忌々しい魔剣使いめ』
ミルが回復魔法を唱える姿を視界に収め、玲奈は強張った表情を少しだけ緩める。玲奈はドラゴンの注意を自分に引き付けなければと思ったところで、ハッと視線をドラゴンに向けた。
「ドラゴンが喋った……?」
玲奈が呆然と呟く。苛立たしげに眼を細めていたドラゴンが再び玲奈の方を向いた。
『貴様も我の言葉がわかるのか。今の世で竜語を解する者はエルフの長老連中ぐらいのものと思っていたが』
玲奈は驚愕に目を見開くが、この機を好機だと考えた。今は少しでも時間が必要だった。横目でミルに介抱されるロゼッタの無事を確認し、内心で安堵の息を吐きながらドラゴンの瞳を見つめた。
「意思の疎通ができるのなら、この街を襲った理由を教えてくれませんか?」
意を決して口を開いた玲奈を、ドラゴンは口角を吊り上げて見下ろす。
『そのような手には乗らんぞ。そこの男が何か企んでいるのに気付かぬ我と思うたか。時間稼ぎのつもりだろうが、我がそのようなことに付き合ってやる義理などないわ』
ドラゴンは大口を開けて笑い声を上げた。
『人族ごときが我に刃向ったことを後悔するがいい』
ドラゴンは仁に向き直って傷だらけの両翼を広げると、反動をつけて前足を高く振り上げた。ドラゴンの全身を覆う濃赤色の鱗が輝きを放つ。鱗の一枚一枚が熱を持ち、空気が揺らいだ。天を向くドラゴンの口の前に、直径5メートルほどの巨大な炎の球が姿を現した。小さな太陽のように夜の帝都を照らす大炎球は、周囲に刺すような熱を撒き散らした。
「仁くん!」
玲奈が焦りの表情を浮かべて仁の元に駆け出す。ミルは顔面を蒼白にしながら炎の球を見上げるが、未だぐったりとしたままのロゼッタへの回復魔法を止めるわけにはいかなかった。
ドラゴンの強靭な前足が振り下ろされ、衝撃が大地を伝う。その後を追うように長い首が鞭のように鋭く振られ、大炎球が放たれた。巨大な炎の球は大地を削り取りながら一直線に進み、目を閉じたままの無防備な仁に迫った。
仁と大炎球の間に、玲奈が躍り出た。
仁は瞼を閉じたまま、表情を険しくした。外界からの情報を意識的に遮断し、脳裏に浮かんだ魔法を再現しようと集中していたが、あと一つ、何かが足らなかった。魔法の発動に至らず、行き場を失くした魔力が仁の体内で荒れ狂う。焦る気持ちが仁の集中を乱し、乱れた心が最後のピースへの到達を妨げる悪循環に陥っていた。
今こうしている間にも玲奈たちがドラゴンと戦っていると思うと仁は気が気ではなかったが、仁を信じて時間稼ぎを買って出た玲奈たちに報いるためにはドラゴンを倒し得る魔法を完成させる以外に道はなかった。仁が不安と焦燥を無理やり抑え込もうとしていると、間近に膨大な魔力が膨れ上がるのを感知した。ものすごい熱気が薄い黒炎の膜越しに伝わってくる。徐々に近づいてくる魔力の塊が、仁の目前で停止した。
轟音が耳朶を震わせ、仁が思わず固く閉じていた瞼を開くと、間近に迫っていた小さな太陽を、玲奈が小さな体で受け止めていた。小盾から広がる青い魔法の障壁はひび割れ、明滅を繰り返していた。
「玲奈ちゃん!」
仁は悲痛な叫び声を上げた。玲奈はゆっくりと苦痛に歪む顔を肩まで回し、力なく笑った。
「仁くん、ごめんね。仁くんの役に立てると思って頑張ったけど、まだ足りなかったみたい……」
「玲奈ちゃん! 今行くから、もう少しだけ耐えて!」
「ダメ! 来ないで!」
仁はそう言うなり一歩を踏み出すが、玲奈の鋭い声に遮られ、反射的に足を止めた。
「仁くん。ドラゴンを倒して。みんなを守れるのは、仁くんだけなんだから……」
「玲奈ちゃ――」
ビキッと不快な音を立て、青い障壁が砕け、玲奈の小盾に大きなひびが入った。毒蛇王の鱗が剥がれ落ち、盾が炎の球に呑み込まれる。次の瞬間、大炎球が弾けた。爆音が大気を震わせ、爆風が巻き起こる。途方もない熱量を含んだ風が辺りを吹き飛ばし、仁は両腕で顔を覆い、ミルはロゼッタに覆い被さった。
揺り戻しの風を背に受けながら腕を下ろした仁の目の前で、玲奈の体が崩れ落ちた。その向こうに、悠然と佇むドラゴンの姿があった。倒れ伏したまま動かない玲奈に、仁の視線が吸い寄せられる。
「玲奈ちゃん……?」
何が起こったのか、仁の脳は理解を拒むが、目の前の光景がそれを許さなかった。
「あ、ああ、あぁああああああああ!!」
仁の心の中心から、どす黒い感情が溢れ出し、仁の体内で荒れ狂う魔力と結びつく。いつの間にか、足りないピースが埋まっていた。
仁は勝ち誇ったように口角を吊り上げているドラゴンに向けて左の手のひらを突き出す。仁の瞳が絶望と憎悪で揺らいでいた。
「消滅」
低く暗い声が闇夜に溶ける。それと同時に、ドラゴンの首の付け根辺りに紫色の球体が現れた。直径30センチほどの球体はちょうどドラゴンの首の太さ程に膨張した後、急速に収束して消え去った。闇の球が消えたとき、そこあるはずのものは存在していなかった。
『その魔法は……。まさか、貴様は、ま――』
ドラゴンの目が驚愕で見開かれ、そのまま動きを止めた。ワインレッドの瞳から光が消えた。ドラゴンの首が、落ちた。
「れ、な、ちゃ、ん……」
仁が膝をつき、そのまま正面から倒れ込む。黒炎の鎧が消え、舞い上がった砂埃を、冷たい夜風が攫っていった。
玲奈は背後から炎を避けて駆け寄ったミルの言葉に頷きを返した。仁に頼ってもらえたという事実に、玲奈は苦しげな顔に喜色を浮かべる。元々、玲奈自身でドラゴンをどうこうできるとは思っていなかったが、それでも少しでも仁の助けになればと思って戻ってきたのだった。玲奈は襲い来る炎の隙間からチラッと横目で仁の姿を確認すると、正面に向き直って左腕の盾に一層魔力を注ぎ込んだ。
玲奈は初めて相対したドラゴンに恐怖心を抱いていたが、仁を置いて自分たちだけ逃げる選択肢は選びたくなかった。その思いはミルやロゼッタも同じだったようで、商隊を帝都外に避難させた後、仁の元に戻ると言った玲奈を止めることはしなかった。ガロンたちは商隊の護衛は任せろと玲奈たちの背中を押し、クランフスは玲奈たちと一緒に行くと主張していたが、足手まといになりかねないとガロンに諭されて帝都の民の避難誘導に回った。また、マルコやリリーは仁や玲奈たちの勝利を信じ、帝都の復興への援助のために動き始めたのだった。
「ハァッ!」
地面に顔を近づけて火炎の吐息を吐き続けているドラゴンの首の付け根の側面に向かって、ロゼッタが裂帛の気合と共に亜竜の槍を突き出した。その切っ先はドラゴンの硬い鱗に遮られ、小さな傷を作ることすらできない。ロゼッタは自身の不甲斐なさに歯噛みしながらも、玲奈への攻撃の手が少しでも緩まるよう、何度も突きを繰り返した。
ロゼッタは仁から譲り受けた槍に相応しい武人になろうと精進してきたが、未だその域に達しているとは思えなかった。強くなった実感はある。レヴェリー奴隷館のパーラの元にいた頃の、ただ漠然と武人に憧れていたときと比べれば、ロゼッタは明らかに強くなっていた。勇者の称号の効果は常識では考えられない程の速度でロゼッタを成長させ、ロゼッタは玲奈たちと共にダンジョンの上層ボスを倒し、一人でB級冒険者にも勝ってみせた。しかし、帝都への道中で遭遇した金狼王との戦いでは大して役に立てなかった。今回のように相手がドラゴンともなれば尚のことだった。
常々力不足に悩むロゼッタに対し、仁はいつか必ず強くなるからと励ましていたが、それでは遅かった。いつかではなく、今このとき、仁や玲奈を助けられる力が必要だった。
ロゼッタは槍の柄を強く握り、狙い澄ました一撃を放った。鱗と鱗の重なる僅かな隙間に、濃緑の穂先をねじ込む。
「ハァアアア!」
雄叫びを上げながら、ロゼッタは渾身の力を込めて槍を押し込む。薄くミスリルでコーティングされた柄がギチギチと軋みを上げて撓った。
「ロゼ!」
玲奈の悲痛な叫び声が辺りに木霊する。いつの間にか玲奈への吐息の放出を止めたドラゴンが体の側面に首を回していた。ワインレッドの瞳がロゼッタを捉えるが、ロゼッタは気付かない。火炎の吐息を耐えきって片膝をついている玲奈が消耗した体で魔力を練るより早く、ドラゴンの口から火炎の球が放たれる。咄嗟のことで避けることのできないロゼッタが火炎球の直撃を受けて吹き飛んだ。
『我は虫に纏わり付かれるのは好かん』
「ロゼお姉ちゃん!」
ぐったりと地に伏すロゼッタにミルが駆け寄る。一目散にロゼッタの元に向かうミルに向けてドラゴンが火炎球を放つが、ミルは血喰らいの魔剣で切り払う。ミルは次々と襲い来る火炎の球を尽く払いのけ、ロゼッタの元に辿り着いた。
『忌々しい魔剣使いめ』
ミルが回復魔法を唱える姿を視界に収め、玲奈は強張った表情を少しだけ緩める。玲奈はドラゴンの注意を自分に引き付けなければと思ったところで、ハッと視線をドラゴンに向けた。
「ドラゴンが喋った……?」
玲奈が呆然と呟く。苛立たしげに眼を細めていたドラゴンが再び玲奈の方を向いた。
『貴様も我の言葉がわかるのか。今の世で竜語を解する者はエルフの長老連中ぐらいのものと思っていたが』
玲奈は驚愕に目を見開くが、この機を好機だと考えた。今は少しでも時間が必要だった。横目でミルに介抱されるロゼッタの無事を確認し、内心で安堵の息を吐きながらドラゴンの瞳を見つめた。
「意思の疎通ができるのなら、この街を襲った理由を教えてくれませんか?」
意を決して口を開いた玲奈を、ドラゴンは口角を吊り上げて見下ろす。
『そのような手には乗らんぞ。そこの男が何か企んでいるのに気付かぬ我と思うたか。時間稼ぎのつもりだろうが、我がそのようなことに付き合ってやる義理などないわ』
ドラゴンは大口を開けて笑い声を上げた。
『人族ごときが我に刃向ったことを後悔するがいい』
ドラゴンは仁に向き直って傷だらけの両翼を広げると、反動をつけて前足を高く振り上げた。ドラゴンの全身を覆う濃赤色の鱗が輝きを放つ。鱗の一枚一枚が熱を持ち、空気が揺らいだ。天を向くドラゴンの口の前に、直径5メートルほどの巨大な炎の球が姿を現した。小さな太陽のように夜の帝都を照らす大炎球は、周囲に刺すような熱を撒き散らした。
「仁くん!」
玲奈が焦りの表情を浮かべて仁の元に駆け出す。ミルは顔面を蒼白にしながら炎の球を見上げるが、未だぐったりとしたままのロゼッタへの回復魔法を止めるわけにはいかなかった。
ドラゴンの強靭な前足が振り下ろされ、衝撃が大地を伝う。その後を追うように長い首が鞭のように鋭く振られ、大炎球が放たれた。巨大な炎の球は大地を削り取りながら一直線に進み、目を閉じたままの無防備な仁に迫った。
仁と大炎球の間に、玲奈が躍り出た。
仁は瞼を閉じたまま、表情を険しくした。外界からの情報を意識的に遮断し、脳裏に浮かんだ魔法を再現しようと集中していたが、あと一つ、何かが足らなかった。魔法の発動に至らず、行き場を失くした魔力が仁の体内で荒れ狂う。焦る気持ちが仁の集中を乱し、乱れた心が最後のピースへの到達を妨げる悪循環に陥っていた。
今こうしている間にも玲奈たちがドラゴンと戦っていると思うと仁は気が気ではなかったが、仁を信じて時間稼ぎを買って出た玲奈たちに報いるためにはドラゴンを倒し得る魔法を完成させる以外に道はなかった。仁が不安と焦燥を無理やり抑え込もうとしていると、間近に膨大な魔力が膨れ上がるのを感知した。ものすごい熱気が薄い黒炎の膜越しに伝わってくる。徐々に近づいてくる魔力の塊が、仁の目前で停止した。
轟音が耳朶を震わせ、仁が思わず固く閉じていた瞼を開くと、間近に迫っていた小さな太陽を、玲奈が小さな体で受け止めていた。小盾から広がる青い魔法の障壁はひび割れ、明滅を繰り返していた。
「玲奈ちゃん!」
仁は悲痛な叫び声を上げた。玲奈はゆっくりと苦痛に歪む顔を肩まで回し、力なく笑った。
「仁くん、ごめんね。仁くんの役に立てると思って頑張ったけど、まだ足りなかったみたい……」
「玲奈ちゃん! 今行くから、もう少しだけ耐えて!」
「ダメ! 来ないで!」
仁はそう言うなり一歩を踏み出すが、玲奈の鋭い声に遮られ、反射的に足を止めた。
「仁くん。ドラゴンを倒して。みんなを守れるのは、仁くんだけなんだから……」
「玲奈ちゃ――」
ビキッと不快な音を立て、青い障壁が砕け、玲奈の小盾に大きなひびが入った。毒蛇王の鱗が剥がれ落ち、盾が炎の球に呑み込まれる。次の瞬間、大炎球が弾けた。爆音が大気を震わせ、爆風が巻き起こる。途方もない熱量を含んだ風が辺りを吹き飛ばし、仁は両腕で顔を覆い、ミルはロゼッタに覆い被さった。
揺り戻しの風を背に受けながら腕を下ろした仁の目の前で、玲奈の体が崩れ落ちた。その向こうに、悠然と佇むドラゴンの姿があった。倒れ伏したまま動かない玲奈に、仁の視線が吸い寄せられる。
「玲奈ちゃん……?」
何が起こったのか、仁の脳は理解を拒むが、目の前の光景がそれを許さなかった。
「あ、ああ、あぁああああああああ!!」
仁の心の中心から、どす黒い感情が溢れ出し、仁の体内で荒れ狂う魔力と結びつく。いつの間にか、足りないピースが埋まっていた。
仁は勝ち誇ったように口角を吊り上げているドラゴンに向けて左の手のひらを突き出す。仁の瞳が絶望と憎悪で揺らいでいた。
「消滅」
低く暗い声が闇夜に溶ける。それと同時に、ドラゴンの首の付け根辺りに紫色の球体が現れた。直径30センチほどの球体はちょうどドラゴンの首の太さ程に膨張した後、急速に収束して消え去った。闇の球が消えたとき、そこあるはずのものは存在していなかった。
『その魔法は……。まさか、貴様は、ま――』
ドラゴンの目が驚愕で見開かれ、そのまま動きを止めた。ワインレッドの瞳から光が消えた。ドラゴンの首が、落ちた。
「れ、な、ちゃ、ん……」
仁が膝をつき、そのまま正面から倒れ込む。黒炎の鎧が消え、舞い上がった砂埃を、冷たい夜風が攫っていった。
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