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第十一話 HP
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目を覚ました。
どうやら、僕はその辺の木にもたれかかるようにして寝ていたらしい。
何故か口の中が苦い……。
森の中はすでに夜が訪れ、周囲は暗くなっている。
あれから結構な時間がたったらしい。
――――あれから?
僕はいつから寝ていたんだ?
寝起きのぼんやりとした頭で思考する。
そして、昼間にケルピーと戦ったことを思い出した。
思わずあたりを見回すが、周囲にケルピーの姿はない。
そうだ、確かケルピーに吹っ飛ばされて木に激突したんだ。
……そこから先が思い出せない。
あ、でもケルピーくんと一緒に御飯を食べたり靄で遊んだ夢を見た気がする。
……ケルピーくん?
なんか親しげな呼称がスッと出てきた。
なんとなく気分がいいし、よっぽど楽しい夢だったのかもしれない。
我ながら、戦った直後にのんきな夢を見たものだ。
そもそも、ケルピーに負けたのになんで生きてるのだろうか?
別に怪我なんてしてないし……。
「あれ?」
その時になって、ようやく僕は自分の格好を認識した。
この世界の季節はどうなのか知らないが、日本は現在夏なので僕が上半身に着ているのは半袖のカッターシャツと下着代わりのTシャツだけだ。
その二枚の服のお腹部分が盛大に破れ、乾いた血がべっとりと染み込んでしまっている。
だが、傷は全くない上にどこも痛くはない。
……ひとまず着替えるか。
カバンを取り出すためにアイテムボックスのアイテム一覧を表示する。
……あれ?
パンが八十三個になってるぞ。
そういえば夢の中でケルピーに分けてあげたような気が……?
もしかしてあれって夢じゃないのか?
食糧をあげることで見逃してもらい、怪我はケルピーが魔法で直してくれたとか?
それなら僕が死んでないことにも一応説明がつく。
ただ、その場合は僕が意識を失っていた理由がわからない。
いや、とりあえず今は着替えの方が先だ。
アイテム一覧からカバンを選択して取り出す。
カバンの中に入っていた体育用のジャージに着替え、血まみれの服はカバンに詰める。
なんだかものすごく犯罪臭のするカバンになってしまったが、アイテムボックスに戻していた。
「――――――」
と、そのとき遠くの方から何かの鳴き声が連続で聞こえてきた。
なんとなく馬っぽかったような気がする。
もしかしてケルピーの鳴き声だろうか?
今ケルピーと遭遇するのはまずい。
和解できた可能性はあるが、一度負けた相手だ。
今夜は拠点に戻ろう。
なるべく音をたてないように気をつけながら、洞穴に向けて歩き始めた。
モンスターとエンカウントすることもなく、無事に洞穴に帰還できた。
入り口をふさいでいる石にも異常はなく、スライムが戻ってきた形跡はない。
念のため、中に入ったあとは内側から石で入口を塞いでおいた。
お陰で洞穴の中は完全に真っ暗だ。
まずはステータスを見ておこう。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前:ナルミ・ユウ
種族:人間
状態:正常
ギフト:【魔眼】
ランク:S
レベル:7
HP:16/16
MP:22/22
スキル:【魔力操作Ⅲ】【魔力付与】【鑑定眼Ⅱ】【魔弾】【魅了の魔眼Ⅰ】
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
どこにも異常はない。
HP、MPともに万全だ。
MPは時間経過で回復するのでHPもそうなのかもしれない。
さすがにケルピーとの戦いでHPが減らなかったということはないだろう。
うーん、HPの仕様が気になる。
よし、確かめるか。
アイテムボックスからスライムの剣を取り出す。
覚悟を決め、自分の手の甲を浅く切った。
傷口から血が滲んでくるが、HPに変化はない。
ダメージが少ないからだろうか?
「さすがこれ以上深く傷つけるのは嫌だな……お?」
悩んでいるとHPが1減少した。
傷をつけてから十秒ほど経った頃だ。
同時に傷から流れていた血がスッと止まる。
まさかと思い、血を拭ってみるとつけたばかりの傷が跡形もなく消えていた。
なるほど、HPは消費することで傷を治せるのか。
わざわざ痛い想いをした甲斐があった。
どこまでの怪我が治るのかはわからないが、僕が助かったのはHPのお陰だろう。
こういう仕様なら仮にHPが0になっても死ぬことはなさそうだ。
一時的に再生はできなくなるが、時間経過でHPは回復するし。
しかし、怪我がなかった理由は分かったがケルピーとの間に何があったのかは相変わらず謎のままだった。
薄暗い洞穴の中で目を覚ました。
入り口を塞ぐ石の隙間から漏れるわずかな光で朝が来たことがわかった。
干し肉とパンを水で流しこみ、朝食を終える。
さあ、今日も探索開始だ。
昨日は一時間も探索しないうちにケルピーと遭遇したので殆ど探索できなかった。
なので川沿いを探索するのなら昨日と同じ道を進めばいい。
だが、それには問題が一つ。
再びケルピーと遭遇する可能性が高いことだ。
僕が知っているケルピーは川辺に出没するモンスターだし、実際に遭遇したのも川辺だ。
というか、ケルピーとの遭遇を避けるならそもそも拠点を変えるべきな気がする。
どうしようかな?
どうやら、僕はその辺の木にもたれかかるようにして寝ていたらしい。
何故か口の中が苦い……。
森の中はすでに夜が訪れ、周囲は暗くなっている。
あれから結構な時間がたったらしい。
――――あれから?
僕はいつから寝ていたんだ?
寝起きのぼんやりとした頭で思考する。
そして、昼間にケルピーと戦ったことを思い出した。
思わずあたりを見回すが、周囲にケルピーの姿はない。
そうだ、確かケルピーに吹っ飛ばされて木に激突したんだ。
……そこから先が思い出せない。
あ、でもケルピーくんと一緒に御飯を食べたり靄で遊んだ夢を見た気がする。
……ケルピーくん?
なんか親しげな呼称がスッと出てきた。
なんとなく気分がいいし、よっぽど楽しい夢だったのかもしれない。
我ながら、戦った直後にのんきな夢を見たものだ。
そもそも、ケルピーに負けたのになんで生きてるのだろうか?
別に怪我なんてしてないし……。
「あれ?」
その時になって、ようやく僕は自分の格好を認識した。
この世界の季節はどうなのか知らないが、日本は現在夏なので僕が上半身に着ているのは半袖のカッターシャツと下着代わりのTシャツだけだ。
その二枚の服のお腹部分が盛大に破れ、乾いた血がべっとりと染み込んでしまっている。
だが、傷は全くない上にどこも痛くはない。
……ひとまず着替えるか。
カバンを取り出すためにアイテムボックスのアイテム一覧を表示する。
……あれ?
パンが八十三個になってるぞ。
そういえば夢の中でケルピーに分けてあげたような気が……?
もしかしてあれって夢じゃないのか?
食糧をあげることで見逃してもらい、怪我はケルピーが魔法で直してくれたとか?
それなら僕が死んでないことにも一応説明がつく。
ただ、その場合は僕が意識を失っていた理由がわからない。
いや、とりあえず今は着替えの方が先だ。
アイテム一覧からカバンを選択して取り出す。
カバンの中に入っていた体育用のジャージに着替え、血まみれの服はカバンに詰める。
なんだかものすごく犯罪臭のするカバンになってしまったが、アイテムボックスに戻していた。
「――――――」
と、そのとき遠くの方から何かの鳴き声が連続で聞こえてきた。
なんとなく馬っぽかったような気がする。
もしかしてケルピーの鳴き声だろうか?
今ケルピーと遭遇するのはまずい。
和解できた可能性はあるが、一度負けた相手だ。
今夜は拠点に戻ろう。
なるべく音をたてないように気をつけながら、洞穴に向けて歩き始めた。
モンスターとエンカウントすることもなく、無事に洞穴に帰還できた。
入り口をふさいでいる石にも異常はなく、スライムが戻ってきた形跡はない。
念のため、中に入ったあとは内側から石で入口を塞いでおいた。
お陰で洞穴の中は完全に真っ暗だ。
まずはステータスを見ておこう。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前:ナルミ・ユウ
種族:人間
状態:正常
ギフト:【魔眼】
ランク:S
レベル:7
HP:16/16
MP:22/22
スキル:【魔力操作Ⅲ】【魔力付与】【鑑定眼Ⅱ】【魔弾】【魅了の魔眼Ⅰ】
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
どこにも異常はない。
HP、MPともに万全だ。
MPは時間経過で回復するのでHPもそうなのかもしれない。
さすがにケルピーとの戦いでHPが減らなかったということはないだろう。
うーん、HPの仕様が気になる。
よし、確かめるか。
アイテムボックスからスライムの剣を取り出す。
覚悟を決め、自分の手の甲を浅く切った。
傷口から血が滲んでくるが、HPに変化はない。
ダメージが少ないからだろうか?
「さすがこれ以上深く傷つけるのは嫌だな……お?」
悩んでいるとHPが1減少した。
傷をつけてから十秒ほど経った頃だ。
同時に傷から流れていた血がスッと止まる。
まさかと思い、血を拭ってみるとつけたばかりの傷が跡形もなく消えていた。
なるほど、HPは消費することで傷を治せるのか。
わざわざ痛い想いをした甲斐があった。
どこまでの怪我が治るのかはわからないが、僕が助かったのはHPのお陰だろう。
こういう仕様なら仮にHPが0になっても死ぬことはなさそうだ。
一時的に再生はできなくなるが、時間経過でHPは回復するし。
しかし、怪我がなかった理由は分かったがケルピーとの間に何があったのかは相変わらず謎のままだった。
薄暗い洞穴の中で目を覚ました。
入り口を塞ぐ石の隙間から漏れるわずかな光で朝が来たことがわかった。
干し肉とパンを水で流しこみ、朝食を終える。
さあ、今日も探索開始だ。
昨日は一時間も探索しないうちにケルピーと遭遇したので殆ど探索できなかった。
なので川沿いを探索するのなら昨日と同じ道を進めばいい。
だが、それには問題が一つ。
再びケルピーと遭遇する可能性が高いことだ。
僕が知っているケルピーは川辺に出没するモンスターだし、実際に遭遇したのも川辺だ。
というか、ケルピーとの遭遇を避けるならそもそも拠点を変えるべきな気がする。
どうしようかな?
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