【短編集】BL 詰め合わせ

愛しているのはお前だけ。

12話

「そうだったのか」
「すまない、俺のせいだな…」

須王は途端に曇った表情になりながらも話を続けた。

「新からの久しぶりの電話に喜んだのもつかの間。助けを求められて、ひどく驚いたよ。東京からお前の元へ車を走らせた。退院してからはお前が混乱しないように俺たちの本当の関係は黙っていた。それに犯人が不明である以上、外に出すのも危険だと思って…。俺の家に君を留めたんだ」
「そういう事情があったんだな…」
「だけど、あの指輪だけは…」
「あぁ。あれは?」
「実は俺のなんだ。新にペアリングとして渡したけど、倒れていた君の所持品にはなかった。だけど、やっぱり俺のことをどうしても君に思い出してほしくて、こっそりと入れておいたんだ」

なるほど。
やはり俺のものではないという直感は正しかったのか。

「君が指輪を失くしてしまったなら、もう1度プレゼントするよ」
「須王…」

俺の呼びかけに須王は目を細めた。

「司。記憶を失くす前の新はそう呼んでくれていたよ」
「…司」

俺たちは導かれるように唇を重ねた。

「愛しているよ、新」
「俺も」

記憶が失われても、お前がずっと側にいてくれる。
それさえあれば俺は幸せに生きていける。

須王司。
俺がこの先愛するのはお前だけ。

END