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56.目的と囮

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キースはようやくリリオ王を凄むのをやめ、妙に納得した顔つきに変わった。

「目的って…。嫌な言い方だなー。こっちはゾーイがいなくなって困ってるんだよ?俺と揉めて出て行ったっきり、そこから行方不明で…」
「確かに国防の中枢を担うゾーイ大将軍の出奔はゆゆしき事態でしょう。知られてしまえば、他国に攻め入られる危険がぐんと増す。それなのに俺たちの訪問をこんな時期に受け入れて、その上ゾーイ大将軍がいないことを自らベラベラと話すなんて不自然極まりない。普通ならどうにかして隠し通そうとするものでは?」

キースに問われたリリオ王は一言も発さない。
ごくりと唾を飲み、やけに緊張した面持ちだ。

「あなたにとって俺たちは囮だったんですよね?ゾーイ大将軍をおびき寄せるための」
「俺とキースが囮?どういうこと?」
「最初っからゾーイ大将軍の不在が俺たちにバレることは百も承知。特に俺は交易のために何度もこの国に訪れている。異変に気付かないはずがない。俺たちに『ゾーイ大将軍の出奔』という弱みをあえて握らせることでシャルドナ王国が外交上かなり不利な状況になっているから助けてほしいとゾーイ大将軍に泣きついて戻ってきてもらう。そういう計画だったんだろう」
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