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9.王妃は初めて恋をする
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キースとは母親同士が友人で、その縁で小さい頃はよく遊んでいた。
幼馴染の彼に恋心を抱いたのは12歳の時だった。
やんちゃ坊主だった俺は実家で植えられている桜の木にキースの目の前でよじ登った。
同い年なのに才能を溢れるあいつには何一つ勝てなくて、せめて特技の木登りを見せつけてやりたかったのだ。
だけど、そういう場合に限ってなぜか失敗するもので。
ドヤ顔で登りきって枝に腰かけようとしたその時、足を滑らせて落ちてしまった。
そんな俺をお姫様抱っこで傷一つないままにキャッチしてくれたのがキースだった。
「大丈夫か?」と心配そうに声をかける彼に対して、あっけないほど簡単に恋をしてしまった。
しかし、その日以降俺はキースとどう接していいのか分からなくなった。
だから、彼と会った時には毎回自分の従兄を連れていき、会話の仲介をしてもらっていた。
キースがその場を離れると、従兄には緊張から上手く話せない状況を揶揄われる始末だった。
だが、そのうちにキースは俺に会いに来なくなった。
ただでさえ多忙な身である王太子が挙動不審な幼馴染の元に訪れる義理なんてないのだから。
結婚してからこの溝を埋めようと努力したものの、全く改善することのないまま現在に至っている。
幼馴染の彼に恋心を抱いたのは12歳の時だった。
やんちゃ坊主だった俺は実家で植えられている桜の木にキースの目の前でよじ登った。
同い年なのに才能を溢れるあいつには何一つ勝てなくて、せめて特技の木登りを見せつけてやりたかったのだ。
だけど、そういう場合に限ってなぜか失敗するもので。
ドヤ顔で登りきって枝に腰かけようとしたその時、足を滑らせて落ちてしまった。
そんな俺をお姫様抱っこで傷一つないままにキャッチしてくれたのがキースだった。
「大丈夫か?」と心配そうに声をかける彼に対して、あっけないほど簡単に恋をしてしまった。
しかし、その日以降俺はキースとどう接していいのか分からなくなった。
だから、彼と会った時には毎回自分の従兄を連れていき、会話の仲介をしてもらっていた。
キースがその場を離れると、従兄には緊張から上手く話せない状況を揶揄われる始末だった。
だが、そのうちにキースは俺に会いに来なくなった。
ただでさえ多忙な身である王太子が挙動不審な幼馴染の元に訪れる義理なんてないのだから。
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