97 / 110
90.結婚の本当の目的
しおりを挟む
トーニャは苦い過去を思い出して、顔を歪ませた。
「それでアルファの本能であいつのうなじに噛みつこうとした。兄上がカずくで止めてくれなかったら、今頃あいつと番になっちまってたと思う。だから、俺たちは一線を越えずに済んだ。けど、それ以降エレノアは俺を兄ではなくアルファと見做して、激しく執着するようになってしまった。それは他のオメガの排除に繋がり、あいつは王族の権力を使って、この国のオメガ全てを番持ちにさせた。望む、望まざるに関わらずな」
「だから…、異世界から俺を転移させてきたってこと?」
トーニャの結婚は当初言っていた通り、兄との皇位継承権の争いを避ける目的ももちろんあるのだろう。
だが、実際のところは弟の執着から逃れるためというのが1番の理由のはずだ。
「あぁ、そうだな。隠していて悪かった。それでも俺が今、心から真白を愛しているのは本当だ。だが、時折不安になるんだ。こんな俺が真白に相応しいのかって…。俺の本能は弟に欲情する。フェロモンで誘うオメガよりも誘われて抗えないアルファの方がよっぽど浅ましくて恐ろしい」
この時初めてトーニャが自身への嫌悪感とアルファの本能への恐怖心にずっと苛まれていたのだと気付いた。
「それでアルファの本能であいつのうなじに噛みつこうとした。兄上がカずくで止めてくれなかったら、今頃あいつと番になっちまってたと思う。だから、俺たちは一線を越えずに済んだ。けど、それ以降エレノアは俺を兄ではなくアルファと見做して、激しく執着するようになってしまった。それは他のオメガの排除に繋がり、あいつは王族の権力を使って、この国のオメガ全てを番持ちにさせた。望む、望まざるに関わらずな」
「だから…、異世界から俺を転移させてきたってこと?」
トーニャの結婚は当初言っていた通り、兄との皇位継承権の争いを避ける目的ももちろんあるのだろう。
だが、実際のところは弟の執着から逃れるためというのが1番の理由のはずだ。
「あぁ、そうだな。隠していて悪かった。それでも俺が今、心から真白を愛しているのは本当だ。だが、時折不安になるんだ。こんな俺が真白に相応しいのかって…。俺の本能は弟に欲情する。フェロモンで誘うオメガよりも誘われて抗えないアルファの方がよっぽど浅ましくて恐ろしい」
この時初めてトーニャが自身への嫌悪感とアルファの本能への恐怖心にずっと苛まれていたのだと気付いた。
80
お気に入りに追加
1,918
あなたにおすすめの小説
攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました
白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。
攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。
なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!?
ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
不幸体質っすけど役に立って、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる