【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

71．キスまであと数ミリ

「軍の話？何のことだ？」
「ギルが調査結果を報告するって言ってただろ？」
「あぁ、それは軍じゃなくてお前のことだ。あいつに薬のすり替えの件を秘密裏に調べさせていたんだよ」

あれほど多忙だったのに、俺のこと気にかけてくれてたんだ。
それだけで嬉しくなった俺は無言で正面からぎゅうっと抱きついた。
トーニャはそんな俺の髪を優しく梳いて、何度もキスを落とす。

「ふふっ、くすぐったいってー」
「可愛いな、真白は」
「もう…！トーニャってばぁ…」

スローモーションにも感じるようなわずかな時間の中でお互いの唇が近づく。
あと数ミリで触れそうになった瞬間、廊下からドタバタと無神経な足音がして、すかさず離れた。
すると、ひょっこりとギルが扉から顔を出す。

「あぁっ!トーニャ様も真白様もまだこちらにいらっしゃったのですね!?」

ギルは俺たちが後をついてきていないことに気付いて戻ってきたようだ。

「ご、ごめん！今行く！」
「さぁ！早く参りましょう！」

こくんこくんと頷きを返すと、ギルは再び廊下へと消えた。

ギルには悪いことしちゃったな。
あと、さっきのイチャつきも聞かれちゃったかも。

「…俺たちも行こっか」
「そうだな」

2人とも多少の気恥ずかしさをひた隠しながら、廊下でギルと合流して、トーニャの部屋へと向かった。