【完結】社畜が異世界転移しましたが、第2王子の妃になったので、この度のんびり暮らしたいと思います。

13．誓いのキス！

「新郎トーニャは新婦真白を健やかなる時も、病める時も、豊かな時も、貧しき時も愛し、なぐさめ、命のある限り真心を尽くすことを誓いますか？」
「はい、誓います」
「新婦真白は新郎トーニャを健やかな時も、病める時も、豊かな時も、貧しい時も愛し、なぐさめ、命のある限り真心を尽くすことを誓いますか？」
「はい、誓います」
神父様の問いかけに対して、俺たちは誓いの言葉を述べる。

「指輪の交換を」
神父様が言うと、傍に控えていたガーネットがリングガールとして指輪の入った箱を差し出した。
指輪を取ると、互いの左薬指に指輪を嵌める。

自分の薬指をチラリと見やると、人妻になるんだなぁという実感がふつふつと湧いてきた。
始まりは契約だけど、俺は『妻』という仕事を完璧にやり遂げてみせる。

「それでは誓いのキスを」

その言葉でトーニャがベールを上げる。

肩を掴まれ、だんだんと顔が近づくと、俺は気付いてしまった。

…ごめんなさい、やっぱ人妻の覚悟できてないです。

恥ずかしさのあまり、プルプルと震えながら、目をつぶってしまう。
数秒も経たぬ間に唇が触れたものの、すぐに離れた。
その瞬間、目を見開くと、何食わぬ顔をしたトーニャと目が合う。

何事もないかのような彼の瞳にはいい歳した男が顔を真っ赤にしている滑稽な姿が映っているのだろうと考えると、より一層の恥ずかしさが押し寄せてきて、頭が真っ白になる。
そのため、俺はトーニャの真っ赤になった耳には全く気付かなかったのだった。