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1.明日、結婚します。

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この度、めでたく異世界転移しました。

営業系社畜の俺、氷雪 真白(ひせつ ましろ)は公園の噴水に腰掛けて昼食を食べていたところ、三徹目の眠気に勝てずに後ろへ倒れ込んでしまった。

普段子どもたちが遊んでいる公園の噴水のため、勿論底が見えるほど浅い。

はずだったのに、倒れ込んだその先は見知らぬ水中だった。
そのままくるりと回転し、つま先から全身が深い水の闇に入る。

もがいても、もがいても、もう戻れない。

さらば、今日初めてありつけた食事。
さらば、今日貰えるはずだったボーナス。
さらば、俺の夢。

そう思ったと同時に、意識が途切れた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

やけにひんやりとした硬いコンクリートの感触で目を覚ました。

そして起き上がると、窓1つない薄暗い部屋でロウソクを持った怪しい黒の装束の集団に囲まれているのを視認した。

「「「祝福致します!王子妃様!」」」と、集団は跪きながら、叫んだ。

えっ?誰のこと?何のこと?
俺、男だし。だから妃って、俺じゃないよね?
そもそもここはどこなんだ?

疑問だらけではあるけれど、怪しい集団に口答えして、分かりやすく身の危険が迫るのも嫌だなと考えていたら、
「ささっ、王子妃様!お着替えしましょうね!」
集団の中にいた女が近づき、俺の腕を取った。

場所を移動されるのって、もっとヤバいんじゃないだろうか!?

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!?まずお話しませんか?あなた誰ですか?ここはどこ?さっき、水に落ちて…、あれ?」
話している途中に気付く。
全身水浸しになったはずなのに、全く濡れていない。

「細かいことは後で説明しますので。王子妃様。」
「今して!今!今説明してよ!」
王子妃というのはやっぱり俺のことかと自認しながらも押し問答をしていると、部屋の扉が開いた。

「儀式は終わったか?」
現れたのは夜空のように美しい男だった。
漆黒の髪は無造作に短くカットされ、金色に光り輝く瞳はじっとこちらを見つめていた。
煌びやかで豪華な服装をしているその男は同年代の20代半ばだと思われる。
だが、高貴な身分の人間だということはすぐに分かった。

「はい、第2王子様。こちらが王子妃様でございます。」
そう言うと、女は男に対して、恭しく頭を垂れた。

「早急に身支度をしろ。本日中に国王陛下と王太子殿下へ謁見する。明日はそいつとの結婚式だからな。」

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」という俺の叫び声は男が部屋を出て、重い扉を閉めた音にかき消されてしまった。
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