運命の番じゃないあなたを愛している

50．嫉妬したヴォルフ

「…うん、した。するに決まってんじゃん」
「えっ!?な、何!?冗談だろ？」
「冗談じゃないよ。ソニアちゃんはすごく魅力的だから。君と関わって、惹かれない奴なんかいない」

ヴォルフは小さくぽつりと呟くと、ソニアを自身の腕の中へと強く抱き込んだ。
このまま誰にも見つからないように閉じこめてしまえたら、どんなに幸せだろうかとヴォルフは心の中に身勝手な欲望を密かに抱く。

けれども、すぐにその浅ましさを考え直す。
ソニアへの気持ちを何一つ伝えていない自分がそんなことを考える資格などないと。

一方、ヴォルフの真意が掴めないソニアは動揺しつつも、無意識に彼の背へ手を回そうとした。
しかし、その瞬間に扉がトンと控えめに叩かれる。

「そにあー。もいっかい、ほんよんでー」

舌っ足らずなベリルの声に急いで扉を開けた。
すると、彼はうさぎのぬいぐるみにぎゅうっと顔を埋め、珍しくぐずった様子だった。

ベリルが眠りにつくのをソニアは確かに見届けたものの、どうやら途中で起きてしまったようだ。
ソニアはベリルに駆け寄って抱き上げようとしたが、ヴォルフの方が一足早かった。

「ほら、ベリル。部屋に戻るぞ。ソニアちゃんの代わりに俺が本を読んでやるから」