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23.満月の夜
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しかし、満月の夜に事件は起きてしまう。
夕食の際、薬の研究のために徹夜をするとヴォルフから伝えられたので、ソニアは夜食を届けることにした。
「ヴォルフ、差し入れだぞ。お前の好きなエビとアボカドのサンドウィッチを作ってきた。入るぞ」
「うん、ありがとー」
ドアを開けると、室内が香水のような色っぽい勾いで充満していた。
嗅いだ途端にソニアは立っていられなくなり、へたりとその場に座り込む。
手に持っていた夜食も落としてしまい、ガシャンと大きな音がした。
心臓の鼓動が早まり、体の奥は急激に熱くなった。
この感覚を何となくソニアは知っている。
「ソニアちゃん!どうしたの!大丈夫!?」
(何だよこれ…?…もしかして毒か?ヴォルフの安全だけは早く確保しねぇと)
ソニアの思いとは裏腹に体に力が入らず、心配したヴォルフが近付いてくるのを拒めない。
だが、それによって勾いが更に強まった。
ソニアは勾いの発生源がヴォルフであったとぼんやりとする頭でようやく理解した。
「…な、にしたんだ、お前。ど、毒でも生成して、たのか?」
「…ソニアちゃん、オメガだったの?」
なぜ今そんなことを聞くんだと詰ってやりたかったものの、ソニアにはその気力はもうなかった。
ヴォルフがソニアの体を抱き起こし、何度も呼びかける。
だが、返答は碌にできぬまま、ソニアはヴォルフの腕の中で意識を失ってしまった。
夕食の際、薬の研究のために徹夜をするとヴォルフから伝えられたので、ソニアは夜食を届けることにした。
「ヴォルフ、差し入れだぞ。お前の好きなエビとアボカドのサンドウィッチを作ってきた。入るぞ」
「うん、ありがとー」
ドアを開けると、室内が香水のような色っぽい勾いで充満していた。
嗅いだ途端にソニアは立っていられなくなり、へたりとその場に座り込む。
手に持っていた夜食も落としてしまい、ガシャンと大きな音がした。
心臓の鼓動が早まり、体の奥は急激に熱くなった。
この感覚を何となくソニアは知っている。
「ソニアちゃん!どうしたの!大丈夫!?」
(何だよこれ…?…もしかして毒か?ヴォルフの安全だけは早く確保しねぇと)
ソニアの思いとは裏腹に体に力が入らず、心配したヴォルフが近付いてくるのを拒めない。
だが、それによって勾いが更に強まった。
ソニアは勾いの発生源がヴォルフであったとぼんやりとする頭でようやく理解した。
「…な、にしたんだ、お前。ど、毒でも生成して、たのか?」
「…ソニアちゃん、オメガだったの?」
なぜ今そんなことを聞くんだと詰ってやりたかったものの、ソニアにはその気力はもうなかった。
ヴォルフがソニアの体を抱き起こし、何度も呼びかける。
だが、返答は碌にできぬまま、ソニアはヴォルフの腕の中で意識を失ってしまった。
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