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四章 黄昏のステラ
少し変わった日常
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「レテさん!ここの部分、教えて貰っていいですか?」
そう言ってリアーが話しかけてくる。見ると、風魔法の広域化についての応用だった。
「……いや、自分は広域化専門じゃないんだけれど……。まぁ、この場合は風を利用する相手が必要になるかな。この事例だと、風で攻撃しない例が出されているから土魔法で礫を飛ばしたり、火魔法や水魔法を飛ばして妨害……かな」
このぐらい、恐らく彼女なら分かるはずだと思いつつ教えると、ありがとう!と言って去っていった。
「むー……」
その様子にシアがちょっと不機嫌になっていた。何故だと思いつつ、シアに聞いてみる。
「シア、どうした?そんな不機嫌そうに頬を膨らませて」
「えっ!?あっ!なんでもないよ!?ただレテ君は面倒見がいいなー!って思っただけだから!ホントだから!」
いつもより早口な彼女にちょっと違和感を覚えつつ、スイロウ先生が入ってくる。
「よぉし!皆揃ってるなぁ!それじゃあ授業を始めるぞぉ!」
今回は魔法具についてだった。自分達の部屋に置いてあるお香もそうだが、それ以外にもスクロールといった使い捨てだが魔法が刻まれた紙を使うことで自分の不得意な魔法で意表を付けること、それ以外にも目覚まし時計、防犯用反撃魔法具、様々な種類が紹介された。
「よぉし!じゃあここで問題だぁ!
さっき出たスクロールのものだが、これを作成するにはどうすればいいと思う?これには正解が幾つかあるから、意見のある人から手を挙げてくれぇ!」
スクロール……。休みの時に幾つかお父さんと買ったが、その仕組みを聞かれるとは思わなかった。本で読んだことはあるので知っているが、ここで自分が全て言っても面白くないので皆の意見を聞くことにしよう。
そう思っていると、シアがバッと手を挙げる。
「お!シア君!君の意見は?」
「はい!スクロールは羊皮紙と呼ばれる物を一般的に使って作られます。そこに魔力を込め、使いたい魔法の形に変化させる……そうして作られると思います!」
これは正解のひとつだ。要は魔力を羊皮紙に通し、魔法に変える。だが他にも方法はある。
「ふむふむ!素晴らしい意見だシア君!さて、他に意見がある人は!」
横でこっそり自分にピースするシアが見えて、微笑みで返す。
すると今度はリアーが手を挙げた。
「お!リアー君の意見は?」
「はい!予めペン等に魔力を込めて、それで文字を綴る形です!これの優位な所は、自分が扱えない魔法でも知っていて、魔力があればスクロールにして使えるところです!」
それも正解のひとつだ。知っているが、系統や得意分野が違う呪文を敢えて書き記して使う。そうすることで一定の威力を出せるようにする。
「なるほどなぁ!貴重な意見だ!他に意見のある人は?」
リアーがこっちに向けてこっそり微笑んだように見えた。それを見てまたシアがプクッとしている。何か、自分を巡って争いでもしているのだろうか。
では最後の締めとばかりに……主にクロウやダイナが……自分を見ているので、手を挙げる。
「お!?レテ君の意見を聞こう!」
これは三つ目にして、あまり知られていない方法だ。
「はい。スクロールは羊皮紙を大前提としていますが、スクロールの羊皮紙というのは魔力の通りが良く、かつ文字も書きやすいという利点があります。
それを全て取り払い、スクロールというものに注目します。
スクロール……捲る、という意味があるこの言葉においては、極論紙で無くても問題ありません。
魔法具としては流通させられませんが、実戦として扱う時に予め地面に魔力を通しておき、相手が踏むなどの条件を仕込ませて一つ捲らせて地雷魔法を発動させる……などのことも出来ます」
自分が答えると、シアや皆が尊敬の目を、リアーが流石という目でこちらを見てきた。
「三人から意見が出たなぁ!正解は複数あると言ったが、これは全部正解だぁ!
シア君の言う通り、羊皮紙に直接魔力を込める方法、リアー君の言う通り、間接的に魔法を埋め込む方法、最後にレテ君の言った、そもそもの意味として魔法を仕込む方法……全てがスクロールとして正解だぁ!
この中の前者二つが、魔法具として流通するスクロール、レテ君の言っていたのは罠としてのスクロールだなぁ!」
嬉しそうなスイロウ先生の話を聞きながら、ふとミトロとレンターの方に目を向ける。本の虫である二人ならば分かっていたのではないか、と思ったのだ。
じっと見つめていると、そっぽを向かれた。それも同時に。つまり、二人は何かを察してわざと答えなかったことになる。
(何を……何を察したのか教えてくれ、二人とも……)
ペンでスイロウ先生の教えをノートに書き込みながら、必死にそう願っていた。
授業終わりの休み時間、シアの距離感が心無しか以前より近くなった。
何をするにも手を繋いだり、スキンシップが過剰になった気がする。
これでは他の人にもバレてしまうのではないか、と思ったがこういう事に察しの良いニアと、人間関係に一癖ありそうなダイナが敢えて何も言ってこないところを見ると二人にはバレているだろう。
それにしても何故、急にこんなことをし始めたのか。自分は腕に抱きつくシアを見ながら考えていた。
そう言ってリアーが話しかけてくる。見ると、風魔法の広域化についての応用だった。
「……いや、自分は広域化専門じゃないんだけれど……。まぁ、この場合は風を利用する相手が必要になるかな。この事例だと、風で攻撃しない例が出されているから土魔法で礫を飛ばしたり、火魔法や水魔法を飛ばして妨害……かな」
このぐらい、恐らく彼女なら分かるはずだと思いつつ教えると、ありがとう!と言って去っていった。
「むー……」
その様子にシアがちょっと不機嫌になっていた。何故だと思いつつ、シアに聞いてみる。
「シア、どうした?そんな不機嫌そうに頬を膨らませて」
「えっ!?あっ!なんでもないよ!?ただレテ君は面倒見がいいなー!って思っただけだから!ホントだから!」
いつもより早口な彼女にちょっと違和感を覚えつつ、スイロウ先生が入ってくる。
「よぉし!皆揃ってるなぁ!それじゃあ授業を始めるぞぉ!」
今回は魔法具についてだった。自分達の部屋に置いてあるお香もそうだが、それ以外にもスクロールといった使い捨てだが魔法が刻まれた紙を使うことで自分の不得意な魔法で意表を付けること、それ以外にも目覚まし時計、防犯用反撃魔法具、様々な種類が紹介された。
「よぉし!じゃあここで問題だぁ!
さっき出たスクロールのものだが、これを作成するにはどうすればいいと思う?これには正解が幾つかあるから、意見のある人から手を挙げてくれぇ!」
スクロール……。休みの時に幾つかお父さんと買ったが、その仕組みを聞かれるとは思わなかった。本で読んだことはあるので知っているが、ここで自分が全て言っても面白くないので皆の意見を聞くことにしよう。
そう思っていると、シアがバッと手を挙げる。
「お!シア君!君の意見は?」
「はい!スクロールは羊皮紙と呼ばれる物を一般的に使って作られます。そこに魔力を込め、使いたい魔法の形に変化させる……そうして作られると思います!」
これは正解のひとつだ。要は魔力を羊皮紙に通し、魔法に変える。だが他にも方法はある。
「ふむふむ!素晴らしい意見だシア君!さて、他に意見がある人は!」
横でこっそり自分にピースするシアが見えて、微笑みで返す。
すると今度はリアーが手を挙げた。
「お!リアー君の意見は?」
「はい!予めペン等に魔力を込めて、それで文字を綴る形です!これの優位な所は、自分が扱えない魔法でも知っていて、魔力があればスクロールにして使えるところです!」
それも正解のひとつだ。知っているが、系統や得意分野が違う呪文を敢えて書き記して使う。そうすることで一定の威力を出せるようにする。
「なるほどなぁ!貴重な意見だ!他に意見のある人は?」
リアーがこっちに向けてこっそり微笑んだように見えた。それを見てまたシアがプクッとしている。何か、自分を巡って争いでもしているのだろうか。
では最後の締めとばかりに……主にクロウやダイナが……自分を見ているので、手を挙げる。
「お!?レテ君の意見を聞こう!」
これは三つ目にして、あまり知られていない方法だ。
「はい。スクロールは羊皮紙を大前提としていますが、スクロールの羊皮紙というのは魔力の通りが良く、かつ文字も書きやすいという利点があります。
それを全て取り払い、スクロールというものに注目します。
スクロール……捲る、という意味があるこの言葉においては、極論紙で無くても問題ありません。
魔法具としては流通させられませんが、実戦として扱う時に予め地面に魔力を通しておき、相手が踏むなどの条件を仕込ませて一つ捲らせて地雷魔法を発動させる……などのことも出来ます」
自分が答えると、シアや皆が尊敬の目を、リアーが流石という目でこちらを見てきた。
「三人から意見が出たなぁ!正解は複数あると言ったが、これは全部正解だぁ!
シア君の言う通り、羊皮紙に直接魔力を込める方法、リアー君の言う通り、間接的に魔法を埋め込む方法、最後にレテ君の言った、そもそもの意味として魔法を仕込む方法……全てがスクロールとして正解だぁ!
この中の前者二つが、魔法具として流通するスクロール、レテ君の言っていたのは罠としてのスクロールだなぁ!」
嬉しそうなスイロウ先生の話を聞きながら、ふとミトロとレンターの方に目を向ける。本の虫である二人ならば分かっていたのではないか、と思ったのだ。
じっと見つめていると、そっぽを向かれた。それも同時に。つまり、二人は何かを察してわざと答えなかったことになる。
(何を……何を察したのか教えてくれ、二人とも……)
ペンでスイロウ先生の教えをノートに書き込みながら、必死にそう願っていた。
授業終わりの休み時間、シアの距離感が心無しか以前より近くなった。
何をするにも手を繋いだり、スキンシップが過剰になった気がする。
これでは他の人にもバレてしまうのではないか、と思ったがこういう事に察しの良いニアと、人間関係に一癖ありそうなダイナが敢えて何も言ってこないところを見ると二人にはバレているだろう。
それにしても何故、急にこんなことをし始めたのか。自分は腕に抱きつくシアを見ながら考えていた。
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