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三章 破滅のタルタロス

せめて、安らかに

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「キミを潰せば良いワケだね。実に単純、実にカンタン。故にキミを殺そう」
「やってみな。影の王。遠くないうちに本体を殺しに行くよ」
お互いを挑発している間に兵が駆け抜けていった。そして、案内屋の身体を操った王が高笑いすると、戦いが始まった。
先手は影の球だった。自分がやったのと同じように、影の球を破裂させて四方から線が襲ってくる。
「ふっ!」
風を纏って浮き上がると、三体の光の騎士が剣を構えて案内屋の身体へと突撃する。
「おおっと」
ニヤニヤとしながら騎士を一人一人打ち消していく。それも手づかみで。
光の騎士が全て頭を掴まれて、手で潰されたのを見ると、自分は笑う。
「へぇ?これを見て笑えるのカイ?」
「笑えるさ。光を失ったはずの身体で光を掴んで吸収せず、ただ無視しているんだからな。糧にしても良かったんじゃないか?」
その言葉に王は笑う。
「ハハハハハハ!なるほどねぇ。キミを操って光を生み出しまくれば確かにそれもアリだねぇ!」
「……ほぅ?その身体で操れるとでも?」
「勿論、出来るとも!何なら試されにやって来ないかい?」
そう言うと距離を詰めてくる。瞬間移動のような、瞬間的な距離詰め。
「お断りだ」
そのまま両手にに光の短剣を生み出すと、くるりと一周して周囲を切り裂く。
「おおっと。流石にダメかい?」
「その余裕、どこまで続くか見せてもらうぞ」
少し離れた案内屋に対して今度はこちらが瞬間的に近づき、光を靴にも纏わせる。
両手両足が武器になった状態で、空中にて乱舞する。同時に案内屋の背後に騎士を配置し、光の大剣にて地面に叩き落とそうと振りかぶる。
「……ふぅん?」
それを横に避けるが、今度は騎士も加わって相手は球を生み出してはそれを騎士に壊される。騎士の近くには乱舞する自分がおり、騎士を守っている。
「なるほどなるほど。これは少し書き換えないとイケナイネ」
そう言ってまた瞬間的な移動で遠くへ行くと、両手を合わせる。
「遠くに行ったからって逃げられると思うなッ!」
短剣を素早く投擲、光の騎士を突進させて案内屋の身体を突き刺した。
はずだった。
「……何?」
案内屋の周りが影に覆われている。それが光を打ち消している。
「ここで見せる気は無かったんだけどキミを消せば同じくコトだ。……我がどうやって全ての光を奪ったか。その目に映る事を光栄に思いながら消えるがヨイ」
そう言うと一帯が影にて覆われていく。この現象には覚えがある。
「……空間侵食、か」
「ソウトモ言うね。これは我の魔法、光喰い。……さて、どう出る?小僧」
周りが真っ暗で何も見えない。となれば……。
「ふっ!」
風を巻き起こし、突風を全方位に叩きつける。その中で風が動いた場所に岩の槍を顕現させ、投げつける。
「おぉ。惜しい惜しい」
その声が後ろから聞こえると、今度はサマーソルトキックをする。姿が見えない以上、こうするしかない。
「見えないのによくやるねぇ!じゃあイクヨー!」
何も見えない中、自分の右脇腹が何かを貫通する。
「がっ……!?」
急いで風を起こしてその場を離脱すると治癒魔法をかけようとする。しかし治癒は発揮しなかった。
「……なるほど、光魔法すら封じられているわけか」
「オヤご明察。だからキミは光を出すことが出来ない。サア、そろそろ幕引きと行こうじゃないかァ!」
とにかくがむしゃらに飛ぶ。そして上に向けて岩の槍を突き刺す。
「オヤオヤ、天井でも崩す気カナ?でも残念。そんなヤワじゃないんだナァ!」
「くっ……!」
それでも避けながら、見えない線に貫かれながら槍を刺す。懸命に。
「オヤオヤオヤ。本当に崩す気かい?ムリムリ!」
「やってみなきゃわからないだろ……!」
そう言いながら突き刺し続ける。しかし、天井は一向に崩れる気配はない。
そして、脚に二つ。致命的な線を喰らった。
「がぁっっ!」
既に数本当たっていたのもあって、地に落とされる。それを見越したのか、闇の中から声がかかる。
「……生かそうと思ったけれど、やはり危険ダネ。お別れだ。小僧」
「……くく、はははは!」
「……?何がおかしい?ハハァ?さては遂に痛すぎて狂っちゃった、カナ?遺言がアルならあの人タチに伝えてオクヨ。せめてものナサケだね」
そう笑う案内屋に対し、自分は岩の剣を出して、周りを風で覆う。
「……風流」
暴風が周りを覆う。それは案内屋とて例外ではない。突然吹き始めた暴風に対して脅威を感じたのだろう。線をこちらに放ってくる。
「……雅」
しかしその線が届くことは無かった。何故ならば、『闇の空間』が『幻想的な夜の風景』に塗り替えたことにより、光魔法が使えるようになったからだ。
「な……光喰いを……!?」
「舞うは桜の花吹雪……!」
岩の剣に光を纏わせ、大きく振りかぶる。周りの桜もどこか、光を纏ったように幻想的に見える。
「トドメを刺すッ!」
そう言ってやはり『背後に』回った案内屋に対してニヤリと笑いながら空中に浮いて身体を反転させる。
「一刀!千本桜ッ!」
「小僧ーッ!」
闇の球を生み出し、そして案内屋自身も防御をする。しかし桜の花びらは容赦なく案内屋を襲う。
切り刻まれる案内屋を見ながら、息を荒くしながら自分は地面に着地した。そこには、ボロボロになりながらも生き残った案内屋がいた。
「……アブナイ。本当に。キミを本体に辿りつかせる訳にいかないヨ」
「……はは、そうか。それで?」
そう言うと影の剣を生み出し、言った。
「ここで、サヨナラだね」
「ああ。サヨナラだ」
自分がそう言うと突如『上から』光が降り注ぐ。
「ナッ!?援軍など……!」
「援軍?そんなのいないさ。……ただ布石は打たせてもらったけどね」
上の岩の槍から光が降り注いでいる。それを見た案内屋はハッとする。
「まさか……あの時槍を刺したのは……!」
「ご明察。そして……さようなら。案内屋。『光の柱』」
そう言うと刺さった全ての槍から巨大な光の柱が生み出され、空間一帯を飲み込む。それは案内屋や自分の居たところとて例外ではなかった。
そして光の柱が止んだ後には、案内屋の姿はもう、無かった。
「……せめて、安らかに。父を愛した唯一の子供よ」
そう呟いて足や脇腹、傷を受けた箇所の治療をしていると、どこからともなく声が聞こえた気がした。
──アリガトウ、父さんをよろしくね──
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