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三章 破滅のタルタロス
決定打とはなり得ず
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カレーを食べ終え、改めて自分とシアの部屋に十人が集まった。割とぎゅうぎゅう詰めなのでシアと自分に関しては布団に座っている。
「よし、それじゃ結果発表といこうか」
軽いノリで言うクロウに対して自分は苦笑する。まるで課題を出された生徒が先生の前で成果を披露するみたいだ。あながち……というよりも八割ぐらい合っているが。
「レテ、防音結界は大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だよ。それで誰から発表する?」
そう言うと皆が一斉に言い出しっぺのクロウに顔を向ける。きょろきょろ、と周りを見てやっぱり?という顔をすると大きく息を吸う。
「ふぅぅ……じゃあ俺から……というか、ロンロ商会組だな。結論からいえば滅ぼす、または生かす方法は見つからなかったけどヒントになるものはあったって感じだ」
吐いて、そう言うとクロウが喋り出す。そこを継いでショウが声を発する。
「ロンロ商会は文字通りどデカい店だから、確かに色んなもんがあった。……まぁ、店が店だから武器とかは子供向けのオモチャだけどな。それはともかく、重点的に見たのは御伽噺のところだ。
御伽噺では相手、もしくは自分を化かして相手を騙して何かをするパターンがあったが大体化かした側が悪役だったな。ただどれも共通しているのは、尻尾が掴めるまでは相手は騙されているって所だ。だからタルタロスの影を騙す方法があれば、戦力になってくれるとは限らずとも無力化は出来ると思うぜ」
そう言うと、シアにチラッと今度は視線が向く。シアが頷くと一つの小さな、それこそ身体に着けるタイプの魔道具を取り出す。
「それは?」
ファレスが聞くと、シアも不思議そうに答える。
「これね。私は魔道具の方を探してみたんだけど……ダメだったのよ。成果はなし。でも、お店の人とあのお母さんに言われてね、ついつい買っちゃったのよ。何だか魔力を込めると光るとかなんとか……」
「……一応対策に、なるか?影は光には弱いが……」
そうレンターが言うと、自分は立ち上がって電気を消す。そうするとシアが魔道具に魔力を通して光を見せてくれる。
「いや、これほんと目の前を照らすだけってレベルじゃないか~」
「そうなの。夜道用らしくて……でも夜中起きることもあるし、タルタロス用じゃなくても便利だからつい!」
(まぁ夜中にトイレ行きたくなることもあるからな……)
納得すると電気をつけて、今度はクロウがミトロの方に顔を向けて言う。
「ミトロの方はどうだ?」
そう問われると、珍しく大食いしたミトロが口を開く。
「私達の図書館組では感情に関する事を調べました。……が、難しすぎて上手く理解が出来ない部分も多かったですね。ただ、レテ君の特異能力の力になりそうなヒントが少しばかりありました」
「うん?」
自分の特異能力というと愛、だろう。それがどうかしたのだろうか。
「人は過度な好意を持つ相手に対して過剰に接し、それで反応を得ようとします。ですがそれで反応を得られない場合は逆に相手に嫌がらせをする事により、無理やり関心を得ようとします。タルタロス王の注意を一瞬逸らすとしたら、ティネモリシ王妃の事を特異能力で行使すると無理にでも関心を引けるかもしれません。また、愛にも色々種類があるようで……純粋な愛から憎愛、行き過ぎた愛情など……これぐらいですかね、纏められたのは」
レンター、ダイナ、ニアが頷く。確かに感情に関することは難しいだろう。自分も愛という能力をなぜ授かったのか、そしてそれを理解しているかと言われるとノーと答えるしかない。
「そうしたら最後はレテ君とファレスさん、フォレスさんの屋敷組ですかね」
ミトロがバトンを投げると、自分がキャッチする。というかした。双子が二人ともこちらを見ていたのだ。
「じゃあ自分が最後だね。自分達はレインさんの屋敷の蔵書を見せてもらったんだけど……まぁ、難しいよね。その中でも幾つか面白いものがあったから伝えておくよ」
「面白いって……」
シアが呆れたように上から声を向けてくるが待って欲しい。決して遊んでいた訳では無い。
「面白いっていうのは絵本とかじゃなくてね……戦場の中で大規模な意識の操作って内容だったんだよ。ファレスとフォレスも一緒に本を持ってきてくれたけど、結局今日は一日この本を読んでた。
戦場の中でも意識……特に感情なんてものはバラバラになりやすい。恐怖に怯える人もいれば逆境に燃える人、或いは狂って突撃しちゃう人もいる。そんな人達の意識を纏めよう、って内容だったんだ。……方法としてはあまりにも惨いけどね。何せ古い本だから。嘘で鼓舞させたり皆を騙すような真似をして戦場での意識を統一させたみたいだ。けど、逆に自分の能力とさっきのミトロの話を繋げると、影を騙して意識を統一出来る可能性が出てきた。ショウの言う通り騙される側は騙されていることに気づかない限り騙されたまま。その点自分の力は強いのがこの前よく分かってくれたと思うから、何かに使えるかもしれない」
ここまでが報告だ。一日にしては皆、かなり頑張った。しかし……。
「……問題があるね」
ニアが言う。その通りだ。皆わかっているのだ。
「あぁ、決定的なタルタロスの対策になってねぇ。その上……」
「タルタロスで戦えるのはレテだけ、ってなるよね~……」
刻一刻と、侵攻の準備を整えなければ行けないのに情報が来ない。自分達も整えられない。
(……近く、アグラタムの所に行く必要があるな)
「よし、それじゃ結果発表といこうか」
軽いノリで言うクロウに対して自分は苦笑する。まるで課題を出された生徒が先生の前で成果を披露するみたいだ。あながち……というよりも八割ぐらい合っているが。
「レテ、防音結界は大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だよ。それで誰から発表する?」
そう言うと皆が一斉に言い出しっぺのクロウに顔を向ける。きょろきょろ、と周りを見てやっぱり?という顔をすると大きく息を吸う。
「ふぅぅ……じゃあ俺から……というか、ロンロ商会組だな。結論からいえば滅ぼす、または生かす方法は見つからなかったけどヒントになるものはあったって感じだ」
吐いて、そう言うとクロウが喋り出す。そこを継いでショウが声を発する。
「ロンロ商会は文字通りどデカい店だから、確かに色んなもんがあった。……まぁ、店が店だから武器とかは子供向けのオモチャだけどな。それはともかく、重点的に見たのは御伽噺のところだ。
御伽噺では相手、もしくは自分を化かして相手を騙して何かをするパターンがあったが大体化かした側が悪役だったな。ただどれも共通しているのは、尻尾が掴めるまでは相手は騙されているって所だ。だからタルタロスの影を騙す方法があれば、戦力になってくれるとは限らずとも無力化は出来ると思うぜ」
そう言うと、シアにチラッと今度は視線が向く。シアが頷くと一つの小さな、それこそ身体に着けるタイプの魔道具を取り出す。
「それは?」
ファレスが聞くと、シアも不思議そうに答える。
「これね。私は魔道具の方を探してみたんだけど……ダメだったのよ。成果はなし。でも、お店の人とあのお母さんに言われてね、ついつい買っちゃったのよ。何だか魔力を込めると光るとかなんとか……」
「……一応対策に、なるか?影は光には弱いが……」
そうレンターが言うと、自分は立ち上がって電気を消す。そうするとシアが魔道具に魔力を通して光を見せてくれる。
「いや、これほんと目の前を照らすだけってレベルじゃないか~」
「そうなの。夜道用らしくて……でも夜中起きることもあるし、タルタロス用じゃなくても便利だからつい!」
(まぁ夜中にトイレ行きたくなることもあるからな……)
納得すると電気をつけて、今度はクロウがミトロの方に顔を向けて言う。
「ミトロの方はどうだ?」
そう問われると、珍しく大食いしたミトロが口を開く。
「私達の図書館組では感情に関する事を調べました。……が、難しすぎて上手く理解が出来ない部分も多かったですね。ただ、レテ君の特異能力の力になりそうなヒントが少しばかりありました」
「うん?」
自分の特異能力というと愛、だろう。それがどうかしたのだろうか。
「人は過度な好意を持つ相手に対して過剰に接し、それで反応を得ようとします。ですがそれで反応を得られない場合は逆に相手に嫌がらせをする事により、無理やり関心を得ようとします。タルタロス王の注意を一瞬逸らすとしたら、ティネモリシ王妃の事を特異能力で行使すると無理にでも関心を引けるかもしれません。また、愛にも色々種類があるようで……純粋な愛から憎愛、行き過ぎた愛情など……これぐらいですかね、纏められたのは」
レンター、ダイナ、ニアが頷く。確かに感情に関することは難しいだろう。自分も愛という能力をなぜ授かったのか、そしてそれを理解しているかと言われるとノーと答えるしかない。
「そうしたら最後はレテ君とファレスさん、フォレスさんの屋敷組ですかね」
ミトロがバトンを投げると、自分がキャッチする。というかした。双子が二人ともこちらを見ていたのだ。
「じゃあ自分が最後だね。自分達はレインさんの屋敷の蔵書を見せてもらったんだけど……まぁ、難しいよね。その中でも幾つか面白いものがあったから伝えておくよ」
「面白いって……」
シアが呆れたように上から声を向けてくるが待って欲しい。決して遊んでいた訳では無い。
「面白いっていうのは絵本とかじゃなくてね……戦場の中で大規模な意識の操作って内容だったんだよ。ファレスとフォレスも一緒に本を持ってきてくれたけど、結局今日は一日この本を読んでた。
戦場の中でも意識……特に感情なんてものはバラバラになりやすい。恐怖に怯える人もいれば逆境に燃える人、或いは狂って突撃しちゃう人もいる。そんな人達の意識を纏めよう、って内容だったんだ。……方法としてはあまりにも惨いけどね。何せ古い本だから。嘘で鼓舞させたり皆を騙すような真似をして戦場での意識を統一させたみたいだ。けど、逆に自分の能力とさっきのミトロの話を繋げると、影を騙して意識を統一出来る可能性が出てきた。ショウの言う通り騙される側は騙されていることに気づかない限り騙されたまま。その点自分の力は強いのがこの前よく分かってくれたと思うから、何かに使えるかもしれない」
ここまでが報告だ。一日にしては皆、かなり頑張った。しかし……。
「……問題があるね」
ニアが言う。その通りだ。皆わかっているのだ。
「あぁ、決定的なタルタロスの対策になってねぇ。その上……」
「タルタロスで戦えるのはレテだけ、ってなるよね~……」
刻一刻と、侵攻の準備を整えなければ行けないのに情報が来ない。自分達も整えられない。
(……近く、アグラタムの所に行く必要があるな)
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