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三章 破滅のタルタロス

対抗策の手掛かり その1

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「へぇー!休みの日にラクザに、ねぇ……二日あるし一泊旅行みたいなものかしら?それにしても親御さんの姿が見当たらないけれど……」
馬に乗せてもらって数分ほど行商人と話していた。ラクザの中まで通るとの事でせっかくならという感じだ。
「自分達は魔術学院の生徒なので……親の許可は要らないんです。でも危なかったですね」
「ええ、本当に……。あなた達みたいな子供が怪我しなくて良かったとは思ったけれど……強いのね。学院で鍛錬で積んだ子は皆こうなのかしら」
そう言うとクロウが首をぶんぶんと横に振って自分を指で示す。
「この子が飛び抜けて恐ろしく強いだけです」
「クロウおまっ!?」
ツッコミを入れるとそれに納得するように行商人も頷く。
「確かに……他の子も強かったけれど、この子だけは何ていうのかしらね……?純粋な力だけじゃない恐ろしさみたいなのを感じたわ。……あ、ごめんなさいね。悪い意味じゃないのよ」
「大丈夫です、分かってます」
確かに左手の剣は人を惹きつけるよりも狂わせる性質のものだ。だからあまり皆の前では使いたくなかったのだが……。
(まあ、襲った方が悪いってことで)
土の檻に閉じ込められて馬の後ろに浮かせられている盗賊達を見ながら思った。

「あ、私の目的地はここだわ。長話に付き合ってもらった上に、盗賊を捕らえてくれてありがとうね!感謝しているわ」
ラクザの街の中。入口で検品された後、門兵に盗賊を引き渡すと直ぐに監獄へと連れていかれた。そのまま進んで商会の前まで来る。ノックをすると、行商人が叫ぶ。
「もしもし!ロンロ商会さんですか?予定されていた荷物を運びに来ました!」
そう言うとガチャりと扉が開いて、見覚えのある父親が出てくる。
「ありがとうございます。未だラクザは復興途中の街……物資は助かります。……おや!?後ろの恩人達は……!」
「恩人達?」
行商人が首を傾げると同時に、何階建てもある大きな部屋に向かって声を出す。
「ライー!この前助けてくれたお兄ちゃん達が来てくれたぞー!」
「……助けた?」
更に首を傾げる行商人さん。当然の反応だ。助けたとは一体?となるのが普通だ。
どたた、と部屋の奥から小さな女の子が出てくると同時にクロウが前に出る。
「あー!お兄ちゃん!お姉ちゃん!あの時はありがとう!今ね!ライもパパとママと一緒に商会のお手伝いしてるの!」
「そっか、偉いね」
クロウが頭を撫でるとにひひ、と喜んだ様子で笑顔を見せてくれる。
「ああ、すみません。この前のラクザの戦火で娘を助けてもらったのです。その時からこの子供たちは恩人ですよ。……おっと、話が逸れてしまいました。申し訳ない。では荷物の確認と勘定をしましょうか」
「……ラクザの戦火の幼き兵士の噂。まさか本当に……」
そう呟くと行商人は父親と共に中に入っていく。
「それでそれで!?お兄ちゃんとお姉ちゃん達は何しに来たの!?」
ライが元気いっぱいに聞いてくる。看板娘としてバッチリだ。
「実は捜し物をしているんだ。良ければ僕達も中に入って見せてもらってもいいかな?」
「うん!ママもパパも良いって言うと思う!ようこそ!ロンロ商会へ!」
そう言うと皆で目配せして頷き合う。
クロウ、シア、ショウがライと共に中に入る。他の七人は予定通りに図書館とレインさんの屋敷へと向かうことにした。

「おぉ……!流石にデケェ!沢山物が置いてあるんだな……」
従業員さんがいらっしゃいませと声をかけてくれる中、私たちはロンロ商会の中に入っていた。
「あら……!恩人さん、いらっしゃいませ。今回はどのようなものをお探しですか?」
ライの声を聞きつけたのか、母親が出てくる。お辞儀をすると、代表して私が前に出る。
「実は探し物をしていて。えぇっと……そうですね。本のコーナーはありますか?」
「はい、ありますよ!ご案内しますね」
黙ってその後に着いていく。しかし大きい商会だけあって、売っている本も子供向けから大人向けの難しい本までビッシリだ。
「どんな本をお探しですか?」
「世界を舞台にした……御伽噺とか!ちょっと変わった魔術の本とかありませんか?」
「御伽噺に魔術の本ですね。まずは御伽噺のコーナーから行きましょうか。ライ、ママは案内してくるからパパと一緒に勘定をお願いね」
「はーい!じゃあね!お兄ちゃん!お姉ちゃん!」
そう言ってライはまた父親の元へと戻っていく。
そして御伽噺のコーナーに辿り着くと、皆で本を探し始める。
「勇者伝説……栗姫童話……なんか違うな」
「狸と七つの化かし合い……この本なんてどうだろう?」
皆で相談していると、お母さんが聞いてくれる。
「何故、そのようなものを?」
非常に言い難いが、必死に言葉を探して言おうとする。すると、ショウがあっさりと答える。
「ほら、タルタロス……でしたっけ。あれに関しての対策を皆で考えてみようみたいな課題が出されてまして。それなら魔術学院の実力よりもこういった、ちょっと変わった方法の解決法を皆で探してみようってなりまして」
(嘘は言ってない!凄い!)
先生からの課題とは言ってない辺りがミソである。それに納得したように頷くと母親も少し考えて、提案する。
「そうしたら魔道具を使った御伽噺は如何ですか?その狸と七つの化かし合いのような一風変わった本がたくさん陳列されている場所がありますよ」
「本当ですか!?案内お願いします!」
クロウが頭を下げるとはい、と柔和に微笑んで案内してくれる。
こうして私たちはロンロ商会で手がかりを探すことになった。
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