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二章 学園編

実技鍛錬

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お昼ご飯を食べて数刻、帰る前の最後の授業。
「ようし!今日は実技の鍛錬をして終わるぞぉ!訓練場は借りてあるから移動するぞぉ!」
ようやくか!と喜ぶショウを見ながらダイナが苦笑する。
「レテ君って……実技の鍛錬必要ある?」
シアが横からこそっと聞いてくるので勢いよく首を縦に振る。
「そりゃああるよ。だって今の力じゃ守れないモノがあったら嫌じゃない?だから今以上に力をつけないと」
「そうだね。レテ君だって完璧じゃないものね」
そう、イシュリアは常に異界の侵攻の恐怖にある。
更にはアグラタムの情報により、きな臭い噂も耳にしている。自分一人ならともかく、皆で戦えるようになるにはもっと自分も力をつけねばならない。特に集団戦闘能力とか。
(……流石にしないか、集団戦闘の実技とか)
そう思いながら皆が立ち上がるのを見ると、自分も立ち上がってスイロウ先生の後を付いて行った。

「……懐かしい」
「わー!数ヶ月ぶりだねー!」
フォレスとファレスが到着して真っ先に声を上げる。ここは自分と双子が模擬戦……対決をした場所だ。
「おう!懐かしいだろぉ!けど今回は戦闘しないからなぁ!皆よく先生の指示を聞いてくれよなぁ!」
こくり、と頷く。皆もはい!と元気よく答えるとよし!と先生が指示を出す。
「まずは基礎からだなぁ!自分の得意な属性の球体を出してみろぉ!系統の能力は極力使用せずにやってみてくれぇ!大きさは……手のひらぐらいまで出せればいいぞぉ!」
何、余裕だ。人差し指を上に立てると風を手のひら程の広さまで広げるとそのまま維持する。
「レテは相変わらず早いな……」
「いやぁ、同じ風得意でもここまで早いと凄いって思っちゃうよ。ほんとー」
クロウが土の球を出し、ダイナもほぼ同時に風の玉を出す。二人とも手のひらの大きさに調整するのに手間取っているみたいだ。
他のみんなも苦戦しているようなので、ちょっとアドバイスをする。暇だったので四本の指を立てる。
「手のひらの大きさに最初からしようとするからイメージがブレるんだ!まずは小さくてもいいから球をイメージして、風船みたいに魔力を込めて徐々に大きくしていくと上手くいくぞ!」
「レテ君、そのアドバイスしながら四属性の球を生み出して遊ぶ生徒は先生初めて見たぞぉ……」
そう、自分は暇だったので基本属性である火、水、風、土の四つの球を手のひらの大きさにして自分の周りをくるくると回らせていた。
「出来たーっ!いやぁ、レテ君のアドバイス的確だねぇ……」
シアが真っ先に成功させたようだ。水の球が浮かんでいる。
「闇も同じ要領ですね。レンター君、光も多分同じように……っと、出来ていますね」
「……ああ」
ミトロとレンターも成功させている。ほかの皆も得意属性のものをキチンと成功させている。
「レテ君が教えてくれた通りただ手のひらぐらいと最初からイメージしてやるのは難しいから、最初は大きさを調整するのがいいぞぉ!それじゃあ先生が訓練用の的を用意するからそれにぶつけてみてくれぇ!」
そう言うと、スイロウ先生が水で的を作り上げる。ごく普通の丸い的だが、それ故に当てるのは難しい。
「……とりあえずレテ、手本を頼んでもいいか?」
クロウがくるくる回る属性の球を見ながら頼んでくる。こくり、と頷くとそのままの位置から順々に飛ばしていく。
四発全弾、別の的に命中させる。流石にこれは前世で戦っていた時の記憶が無いと難しいだろう。
「レテ君は本当に凄いなぁ!じゃあ聞くが、的に当てるときコツ等はあるかぁ?」
先生が新しい的を用意しながら尋ねてくる。
「そうですね……速度を重視しないのであれば、球を一直線に飛ばすイメージを浮かべてもらえればやりやすいかと。収縮系統の人なら多分感覚が掴みやすいと思います」
「なるほどなぁ!うんうん、その通りだぁ!広域化系統は広く打つが故に的ひとつに当てるのは難しいが、これも基礎のうちだからなぁ!皆、的は用意するから頑張って当ててくれぇ!三発ぐらい同じものを当てられたら今日はお終いだぁ!」
そう言うと的をドンドン作っていく。せめて当たりやすいように、との配慮なのだろう。自分は見守る立場に徹する。
「ぐぬぬ……」
「いいぞぉ!当たってはいないけれど球を生み出す速度が上がっているぞぉ!その調子だぁ!」
皆系統を使わない、というのは初めてだったのだろう。中々苦戦している。
「……他に、コツは無いの?」
「フォレスは終わってるでしょ!?」
フォレスは元々後衛にいる立場上、当てるのが上手で観戦側に回っていた。その上で自分に聞いていたからファレスにツッコミを入れられていた。
「え?あー……先生、当て方はともかく、やり方は系統を使わなければいいんですよね?」
「うん?そうだなぁ……大丈夫だぞぉ!その距離と球の大体の大きさを維持してくれればぁ!」
そう言って貰えたので、残るみんなに追加アドバイスをする。
「皆!ボールを投げたことはあるか?ボールは落ちていくが、魔力の球は集中してしっかり狙いを定めればそのまま直線に飛んでいくからぶん投げてしまえ!」
「……あっ!出来ましたね」
ミトロの闇の球が見事に的にぶん投げられて行った。冷静な彼女だが、もしかするとこのタイプは怒らせると手が先に出るタイプなのかもな、と思いながら皆を見る。
打ち出すようにする者、投げる者。それぞれのやりやすいやり方で皆がドンドン的に当てて行った。
「……そういやレテはどうやって当てたんだ?集中もしてなかっただろ?」
終わったクロウがこっちにやって来て聞いてくる。それは気になる、と皆がこちらを向くので頭をかきながら答えた。
「即座に打ち出す感じで。ほら、こんな感じ」
今度はもうイメージを掴んだので、手のひら大の球を作るとそのまま的に手を開いたまま遠くの的に射出する。
クリーンヒットである。
「……あー、すまん。参考にならなかった」
「これは参考にならないねぇ」
ショウとダイナが同時に言うのを苦笑しながらほら頑張れー!と皆で残った仲間を応援していた。
終わったのはいつもの授業終了時刻よりも少し後だった。
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