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二章 学園編

異界の侵攻

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「……となり、こうすることで魔力の総量を鍛え上げることが出来る」

今日もスイロウ先生が授業をしている。自分は家の本や図書室の本を読んでいるので頭で内容を復唱して合わせているだけだ。
すると少しピリ、とした魔力を感じた。何かが違う。誰かが魔法を使ったイメージではない。特異能力でもない。となると……

「スイロウ先生、少し質問しても?」
「んん?質問かね?君がするのは珍しい。どうしたのかね?」
「……この異質な魔力は何ですか?」
「……異質、だと?」

その瞬間イシュリア全土に響き渡るような音が鳴る。ゴーン、ゴーン。その瞬間に直感で理解する。

(門だ……!これは、イシュリアを繋ぐ門ではなく、自分の所にアグラタムが来た時のように……!)

「行けない!皆、1箇所に固まりなさい!」

スイロウ先生がテキパキと指示を出して、自身の元への集める。すると、ショウが少しオドオドした感じで問いかける。

「こ、これは……?」
「……」
「……スイロウ先生。黙っていても仕方ありません。これは、異界からの侵攻。そうでしょう?」
「っ!」

その言葉に弾かれたようにこちらを向く。何故それを、という顔だ。

「異界からの……侵攻?どういうことだよ、レテ」
「……イシュリア皇国とは別の世界がある。そこから無理やりイシュリア皇国にパスを通し、イシュリアを乗っ取ろうとする。それが異界からの侵攻だよ」
「……その通りだ。我々はその侵攻に対抗するべく、生徒を育てる。彼らが願わくば抑止力になるように、と」

諦めたようにスイロウ先生も話す。けれど、と自信を持って告げる。

「彼らが侵攻してくることはない。何故ならばイシュリア皇国には他の世界に負けない、守護者がいるのだから」

「……アグラタム様」

誰かがぽつりと呟いた言葉に頷く。

「そうだ。アグラタム様はこれまで異界の侵攻を通した事は無い。今回も……ほら!」

ピリリとした魔力が収まっていく。それと同時にリーン、リーンと鈴の音が鳴る。

「この授業はもっと早くしておくべきだったね。この数年、イシュリア皇国は異界からの侵攻はなかった。あの荘厳な音は異界からの侵攻を意味し、鈴の音は侵攻を退けたことを意味するのだ」

そう言うと、席に戻って授業の続きをするぞぉ!と言われ戻る。が、その前にスイロウ先生に引き止められる。

「レテ君。何故君は、異界からの侵攻の兆候が分かったのかね?」

怪しむような視線にしっかり合わせて答える。

「魔法が暴発した魔力でもなく、特異能力でもない。何より悪意と敵意が混雑した次元の魔法を感じたので」
「……そうか。君は……」

そう言うと、戻って大丈夫だと言われる。
授業を続け、終わった後。教師の間でも少し話題になった。

「数年ぶりね。久しぶりすぎて一瞬何かと思ったわ」
「本当にそうだな。彼らもその抑止力となるべく育てねば」

その中、スイロウは一人考えていた。

(先生方の中でも気づく方はいない。ということは事前に察知したのは彼……レテ君だけとなる。だが、あの魔力は察知しようとしてできるものでは無い。……彼が既に、何か同じことを経験している?)

そんなことは無い、と頭から振り払う。彼は十四歳だ。言う通り、異質な魔力を……

(待て、何故異質な魔力だとわかった!?)

ここで初めて疑問が生まれた。
この世界にはまだ謎が沢山ある。我々が知らないこともある。なのに彼は異質な魔力と言い、悪意と敵意が混雑した魔力と称した。
もしそうであれば。彼を見張らなければならない。
彼は学生の域を超えている。ともすれば……

(異界からの使者。もしくは本物の天才……)

前者であればアグラタム様が黙っていないはずだ。おそらく後者、生まれつきと努力の賜物だろうと納得させた。
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