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二章 学園編
学年対抗 当日
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その一週間後、学年対抗戦当日になっていた。待機所ではレテと観客席のSクラスの生徒の画面通信が通っていた。
「へ、へ、へっくしゅん!」
「……レテ君、緊張した?」
「ウワサされてるのかもしれない……」
「緊張じゃなくてウワサかよ……大した自信だよ」
不安になって聞いてみるシアにいやいや、と返すと緊張しないのもすごいねぇ、と返される。クロウにも緊張ホントにしてないのかと裏で言われつつ、今戦っているAクラス同士の対抗戦を別の画面で見ていた。
同時刻、イシュリア皇国。イシュリアの私室にて。守護者たるアグラタムはそわそわとしながらイシュリアの傍に仕えていた。
「落ち着かないわね、アグラタム。そんなに師の晴れ舞台が心配かしら?」
そうポロリと聞くと、ぐるっと振り向いて割とすごい顔で口を開かれる。あ、やばいとイシュリアは直感的に理解したものの遅かった。
「心配ではありません!あの師が学院生に遅れを取るなど有り得ません。もし負けたのであれば師が相手に華を持たせるために手加減しただけの事。それよりも今のあの身体でどこまでの事が出来るのか、私の知っている強かな師であるかをこの目で……見たかった……!」
親バカか、いや師バカか。ここまで来ると諦めもつくもの。しかしその実力にはイシュリアも興味があった。
(子供と呼ぶのも少し怪しい、幼子に近いあの子が国の最大実力者を退ける力を持つ。現時点でその子の力を測るという意味では悪くないかもしれませんね)
「アグラタム、魔術学院に門を」
「……晴れ舞台を見に行くのですか!?」
「無論です。あの子がどの程度魔法や身体を使いこなせているか、貴重な光景が見られます。変装してバレないよう乗り込みますよ」
「……仰せのままに!」
そう言ってアグラタムとイシュリアは自身に光の魔法で自身の姿を別の者へと変化させると、魔術学院に先生の枠組みで見ることを決意したのだった。
「うわぁぁっ……!」
「おっと、大丈夫かい?」
そう言ってAクラスの戦いが終わる。最後は収縮系統の魔法を複数打たれて一年生がしりもちを着いて終了だ。
学年対抗戦は戦闘続行が不可能になるか、このように言わば魔力が尽きて何も出来なくなったところに追撃をかけたところで終了する。
CもBも、皆二年生の先輩方にやられていた。大半が魔力不足だが、恐らくその辺のコントロールなどを一年生では教えてくれるのだろう。だから、普通の一年生では勝てない。
「勝者、二学年!次は最後、Sクラスの対抗戦に入ります!」
わぁぁ!と会場が湧く。年々Sクラスは、ド派手にぶっぱなしてド派手に一年生が魔力切れしてド派手にやられるのが上級生に受けるのだとか。
「ふふ、ド派手にはやっても負けないよ」
闘技場に出ると、相手の男は何やら観察するような目でこちらを見ている。
「ありゃ?少し小さい……って事は今年十四歳で入学した生徒がSクラスの代表って事か?」
「正解です。流石先輩。ですが、手加減は不要です。こちらは手加減は……な、なしで行きますので」
手加減しないと相手が普通に死にそうなので手加減なしということにしておいて自分で手加減する事にした。危うく手加減すると言って煽るところであった。無闇やたら気持ちの良くない挑発はするものではない。
「じゃ先に情報を与えておこう。俺の得意な魔法は土、収縮系統。特異能力は使用禁止だからな……持ってるけど使わないことにするぜ」
「いいのですか?そんなに言ってしまって」
「……へぇ、この情報で得られるものがあるって事か。去年の俺とは大違いだが、一年の差を見せるとしようか」
軽口を叩き合いながらお互い離れて合図を待つ。
「それでは……始めっ!」
その声が聞こえた瞬間に、一メートルはある岩が生成され、ドンドンとバラバラになる。
そしてそれが空を切り、弾丸のようにこちらに降り注ぐ。
(ふむ。ド派手に、ド派手に)
そう思うと、手を地面に当てて炎の柱を顕現させる。そして炎の柱を爆発させると自分を狙っていた岩の弾丸は霧散していた。
「へぇ……!」
その後も岩の弾丸や時折他の属性を収縮させて弾丸と飛ばしてきた。自分は風を吹かせ、時には水と炎で煙を作り、反撃しないままに相手の魔力切れを待つ。
「中々派手にやるが……攻撃しなくていいのかい?」
「そうですか?では……終了です」
そう言うと右手から風の魔力をさらりと流して、背を向ける。そこに追撃しようとしたところに風の騎士が二年生を吹っ飛ばして距離が離れる。
「は?……何だとッ!?」
そこで彼が見たのは、三方向に顕現した風の騎士。慌ててそれを消そうと炎の弾丸を放つも得意ではない上に風は流れ、そよ風の如く忍び寄った騎士三人に囲まれていた。
「まだ……まだ負けてねぇぞ!後ろ向いてどうした!?」
「こういう事ですよ。顕現系統というのは」
そう言うと、場を守る結界の魔力に干渉して背中に闘技場の結界がついている彼に簡易的な結界を仕掛ける。
その直後、彼に向かって風の騎士が剣を一斉に振り下ろし、結界を破く。その恐怖と音に怯えた彼は目を閉じてしまったので、自分は風を使い近寄ると、手に岩の剣を顕現させて目を閉じた彼の頭をぽんぽん、と叩く。
「目を開けてください。これから戦おうと言うのなら、この騎士を自分は三体と言わず何体も顕現させましょう。貴方に貼った簡易的な結界も自分に纏わせましょう。……まだ、戦いますか?」
「……実力差、か。自分の負けだ」
場が静まり返る。Sクラスの、しかも一年が勝つ。そんな事はこの魔術学院始まってからそうそうあることでは無い。しかもギリギリではなく、相手を完封したのは初めてだろう。
その後わあああ!と場が歓声で包まれる。圧倒的な差に感動する者、恐怖する者、自分も戦いたいと思う者。沢山の人がいた。
「レテーッ!お前結界に干渉したなぁ!?それ確かにルール違反じゃないけどそれで相手に結界を貼って実力差を知らしめた生徒は初めてだぞぉ!」
スイロウ先生の言葉に生徒どころか、先生も静まり返る。
自分たちの結界に干渉する。それだけの力を持った一年生。
「……彼は、強いのです。生徒の枠に収まらないほどに」
「学園の結界に干渉して、そこから魔力を引き出して更に顕現させる。この芸当、出来る生徒はおろか先生でも何人でしょうね?」
ずっと聞こえた先生陣の中の声に驚く。
「……イ、イシュリア様……アグラタム様……いつから……」
「先程の戦闘の初めから、かな。ちょっとお邪魔したよ」
変装を解くと一斉にひれ伏す。
「ああ、大丈夫です。ここで無用な心配を生徒に与えてはいけないですし私たちはここで帰ります」
「そういう事です。それでは先生方、よろしく頼みました」
二人が礼をすると、門を通ると同時にその門が消える。
「……王と守護者、御二方すら見に来る逸材……」
とある先生が呟くと、呆然と闘技場を見つめる。
そこには握手して別れるSクラスの生徒の姿があった。
「へ、へ、へっくしゅん!」
「……レテ君、緊張した?」
「ウワサされてるのかもしれない……」
「緊張じゃなくてウワサかよ……大した自信だよ」
不安になって聞いてみるシアにいやいや、と返すと緊張しないのもすごいねぇ、と返される。クロウにも緊張ホントにしてないのかと裏で言われつつ、今戦っているAクラス同士の対抗戦を別の画面で見ていた。
同時刻、イシュリア皇国。イシュリアの私室にて。守護者たるアグラタムはそわそわとしながらイシュリアの傍に仕えていた。
「落ち着かないわね、アグラタム。そんなに師の晴れ舞台が心配かしら?」
そうポロリと聞くと、ぐるっと振り向いて割とすごい顔で口を開かれる。あ、やばいとイシュリアは直感的に理解したものの遅かった。
「心配ではありません!あの師が学院生に遅れを取るなど有り得ません。もし負けたのであれば師が相手に華を持たせるために手加減しただけの事。それよりも今のあの身体でどこまでの事が出来るのか、私の知っている強かな師であるかをこの目で……見たかった……!」
親バカか、いや師バカか。ここまで来ると諦めもつくもの。しかしその実力にはイシュリアも興味があった。
(子供と呼ぶのも少し怪しい、幼子に近いあの子が国の最大実力者を退ける力を持つ。現時点でその子の力を測るという意味では悪くないかもしれませんね)
「アグラタム、魔術学院に門を」
「……晴れ舞台を見に行くのですか!?」
「無論です。あの子がどの程度魔法や身体を使いこなせているか、貴重な光景が見られます。変装してバレないよう乗り込みますよ」
「……仰せのままに!」
そう言ってアグラタムとイシュリアは自身に光の魔法で自身の姿を別の者へと変化させると、魔術学院に先生の枠組みで見ることを決意したのだった。
「うわぁぁっ……!」
「おっと、大丈夫かい?」
そう言ってAクラスの戦いが終わる。最後は収縮系統の魔法を複数打たれて一年生がしりもちを着いて終了だ。
学年対抗戦は戦闘続行が不可能になるか、このように言わば魔力が尽きて何も出来なくなったところに追撃をかけたところで終了する。
CもBも、皆二年生の先輩方にやられていた。大半が魔力不足だが、恐らくその辺のコントロールなどを一年生では教えてくれるのだろう。だから、普通の一年生では勝てない。
「勝者、二学年!次は最後、Sクラスの対抗戦に入ります!」
わぁぁ!と会場が湧く。年々Sクラスは、ド派手にぶっぱなしてド派手に一年生が魔力切れしてド派手にやられるのが上級生に受けるのだとか。
「ふふ、ド派手にはやっても負けないよ」
闘技場に出ると、相手の男は何やら観察するような目でこちらを見ている。
「ありゃ?少し小さい……って事は今年十四歳で入学した生徒がSクラスの代表って事か?」
「正解です。流石先輩。ですが、手加減は不要です。こちらは手加減は……な、なしで行きますので」
手加減しないと相手が普通に死にそうなので手加減なしということにしておいて自分で手加減する事にした。危うく手加減すると言って煽るところであった。無闇やたら気持ちの良くない挑発はするものではない。
「じゃ先に情報を与えておこう。俺の得意な魔法は土、収縮系統。特異能力は使用禁止だからな……持ってるけど使わないことにするぜ」
「いいのですか?そんなに言ってしまって」
「……へぇ、この情報で得られるものがあるって事か。去年の俺とは大違いだが、一年の差を見せるとしようか」
軽口を叩き合いながらお互い離れて合図を待つ。
「それでは……始めっ!」
その声が聞こえた瞬間に、一メートルはある岩が生成され、ドンドンとバラバラになる。
そしてそれが空を切り、弾丸のようにこちらに降り注ぐ。
(ふむ。ド派手に、ド派手に)
そう思うと、手を地面に当てて炎の柱を顕現させる。そして炎の柱を爆発させると自分を狙っていた岩の弾丸は霧散していた。
「へぇ……!」
その後も岩の弾丸や時折他の属性を収縮させて弾丸と飛ばしてきた。自分は風を吹かせ、時には水と炎で煙を作り、反撃しないままに相手の魔力切れを待つ。
「中々派手にやるが……攻撃しなくていいのかい?」
「そうですか?では……終了です」
そう言うと右手から風の魔力をさらりと流して、背を向ける。そこに追撃しようとしたところに風の騎士が二年生を吹っ飛ばして距離が離れる。
「は?……何だとッ!?」
そこで彼が見たのは、三方向に顕現した風の騎士。慌ててそれを消そうと炎の弾丸を放つも得意ではない上に風は流れ、そよ風の如く忍び寄った騎士三人に囲まれていた。
「まだ……まだ負けてねぇぞ!後ろ向いてどうした!?」
「こういう事ですよ。顕現系統というのは」
そう言うと、場を守る結界の魔力に干渉して背中に闘技場の結界がついている彼に簡易的な結界を仕掛ける。
その直後、彼に向かって風の騎士が剣を一斉に振り下ろし、結界を破く。その恐怖と音に怯えた彼は目を閉じてしまったので、自分は風を使い近寄ると、手に岩の剣を顕現させて目を閉じた彼の頭をぽんぽん、と叩く。
「目を開けてください。これから戦おうと言うのなら、この騎士を自分は三体と言わず何体も顕現させましょう。貴方に貼った簡易的な結界も自分に纏わせましょう。……まだ、戦いますか?」
「……実力差、か。自分の負けだ」
場が静まり返る。Sクラスの、しかも一年が勝つ。そんな事はこの魔術学院始まってからそうそうあることでは無い。しかもギリギリではなく、相手を完封したのは初めてだろう。
その後わあああ!と場が歓声で包まれる。圧倒的な差に感動する者、恐怖する者、自分も戦いたいと思う者。沢山の人がいた。
「レテーッ!お前結界に干渉したなぁ!?それ確かにルール違反じゃないけどそれで相手に結界を貼って実力差を知らしめた生徒は初めてだぞぉ!」
スイロウ先生の言葉に生徒どころか、先生も静まり返る。
自分たちの結界に干渉する。それだけの力を持った一年生。
「……彼は、強いのです。生徒の枠に収まらないほどに」
「学園の結界に干渉して、そこから魔力を引き出して更に顕現させる。この芸当、出来る生徒はおろか先生でも何人でしょうね?」
ずっと聞こえた先生陣の中の声に驚く。
「……イ、イシュリア様……アグラタム様……いつから……」
「先程の戦闘の初めから、かな。ちょっとお邪魔したよ」
変装を解くと一斉にひれ伏す。
「ああ、大丈夫です。ここで無用な心配を生徒に与えてはいけないですし私たちはここで帰ります」
「そういう事です。それでは先生方、よろしく頼みました」
二人が礼をすると、門を通ると同時にその門が消える。
「……王と守護者、御二方すら見に来る逸材……」
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