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作戦決行 アルトとロイヤリー
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朝方、日が昇る。乾いた地面にグリフォンの群れが降り立つ。
「おや?おやおや……キヒヒ、おかえりおかえり」
「グリフォンなら戦力にも食糧にもなるだろうし、これは我らにとっては好機であったなぁ」
その集団の外には村人の死体は転がり、モグモグと村で採れていたであろう林檎を齧っている。
その中でも一際大きな林檎を食べていた者が立ち上がると、グリフォンに手を向ける。
「さて?反逆されないように呪術を重ねがけしておくか……」
そう言うと禍々しい、紫の闇とも言うべきモヤがグリフォン達を包み込んだ。
グリフォンが従属の姿勢を取るのを見て満足気に笑う。
「くくく、ははははは!やはり良いな!帝国も良いが、やはりティタスタは最高だ!こういった自然のカモが沢山いるのだからな!」
そう言った直後だった。集団の中の一人が異変に気づく。
「……そういや、国境に隠れている同胞が戻ってきていないな」
「ん?……あぁ、確かに。長いな。キチンと連絡しろとあれだけ言ったのに……」
そう言って森の方角を見て魔法を使うと、リーダーの男は愕然とした。
「……死んでる?」
そう言った瞬間。大人しかったグリフォンは吼えて集団に飛びかかる。
「なっ!?コイツら、何で……!」
「呪術の隷属に失敗した!?馬鹿なっ!もう一度だ!」
そう言って集団がバラけた直後、歳を感じさせるもののハリのある声がその場に轟く。
「……アンタらには、『もう一度』なんて言葉は使わせないよ」
そう言った直後。突如として集団の外から剣を持った女性が何十人と飛びかかってくる。
「いつの間にッ!?」
「チッ、なんだこの女!」
そう言って避けて相手も闇でその女性を包み込む。
しかし従属することは無く、ただ消えた。そして、新しい女性の幻体が剣を持ってその場に産まれてくる。
「……ま、さか……おい!逃げろ!逃げろッ!これはティタスタの……!」
「『無限』……だと……!?引退したんじゃなかったのか!」
そう言って四方八方に分かれる。しかし、ラーナとダグザがいる国境線の方角に、本物が立つ。
「国境線を越えられては面倒なのでね。ここでアンタらは処理させてもらうよ」
そう言ったアルトは、杖で地面を突く。
その途端に逃げようとしたミディアの民の足元が泥濘になる。そして、それはどんどん沈んでいく。
「術者さえ倒せばこっちのもんよなぁ!」
しかしその状況でも余裕を見せるミディアは、複数人で同時に呪術を放つ。
アルトに着弾して、泥も解ける。そう思った時に闇の中から声が届く。
「アンタらねぇ。術者を倒せなかったからアタシがここにいるんだろう?おっと、もしかして年単位の戦いだから忘れてしまったかい?」
そこには平然と佇むアルトがいた。それを見て初めて絶望の顔が兵に浮かぶ。
「な……」
「呪術が……」
「いや、このままでは我々が……!」
既に沼は手の近くまで飲み込んでいた。それを認識して、アルトの顔を見る。
その顔は、怒りの修羅の顔であった。
「沈みな。そしてあの世で裁かれな。自分達の犯した罪を、永遠に亡霊にそのまま合わされるといい」
「い、嫌だ!まだ……まだ……死にたくねえ!」
「人間誰しもそうだろうね。で?その命乞いをした人を一人でも助けたかい?……そういう事だよ。アンタらは誰も救わなかった。それを最期に知って逝くといいよ」
そう言うともう一度杖で地面を突く。
泥沼の引き込む早さが上がり、遂には国境線に逃げようとした全ての兵は地面の中で窒息死する事となった。
「……アタシだって許されるとは思っていないさ。けれど、それ以上に許せない者は生きているうちに排除しないとね。……さて。ロイヤリーはどうかね?」
噂にされたロイヤリーは、ただ平然と多数の兵を前に圧力をかけていた。
魔法でもない、呪術でもない。ただの圧力。目に見えないもの。
しかしミディアの兵はそれだけで動けない。足が竦む、手が動かない。頭が、口が呪術の詠唱をさせてくれない。
「……どうした?何もしてこないのか」
その言葉に釣られて狂乱になった一人がロイヤリーに杖で突っ込む。
その瞬間。ロイヤリーは剣を抜くことすら無く、握り拳に魔力を込めて腹を殴った。
「……ぁ……」
魔力が全身を通り、脳を破壊する。その光景を見てミディアの兵は更に動けなくなる。
呼吸が浅い。いや、出来ているのかすら分からない。ただ口を動かしているだけかもしれない。口を動かしているかも分からない。
ただ一つミディアに分かることは、相手にしてはいけない相手が目の前にいるということだけだ。
「リーダー格は……あぁ、お前か。じゃあ他のは用済みだ」
そう言うとゆっくりリーダー格の男に近づくと、剣を出して魔力を込める。
そして、その剣を腹に突き刺す。
そのまま問いかける。
「ミディアの今の本拠地は?」
するとリーダー格の男が洗脳されたような目で答える。
「……ここより西に五キロ……北に二キロ……廃村となった場所に皆がいる……」
「リーダー!?」
その慌てようから本当の事だと知る。剣を引き抜くと、転がった死体に何らかの魔法をかける。
すると、リーダー格の男が生きているかのように立ち上がって残りの兵に襲いかかる。
「ミディアの呪いは便利だな。こうして手を汚さずに同士討ちさせられるのだから」
恐怖で動けない兵を、リーダー格は容赦なく殺していく。
そして全ての兵が殺されるのを見ると、リーダー格にかけた魔法を解く。
ばたり、と死体が転がった場所を冷たく見下ろしながら、独り言を呟く。
「自業自得だ。呪術返しって知ってるか?……って、生きているやつはいないな。それじゃ、報告に戻るか」
全ての兵を炎で燃やし尽くし、骨すら溶かし尽くしてその場を去る。太陽が丁度照らし始めた頃だった。
「おや?おやおや……キヒヒ、おかえりおかえり」
「グリフォンなら戦力にも食糧にもなるだろうし、これは我らにとっては好機であったなぁ」
その集団の外には村人の死体は転がり、モグモグと村で採れていたであろう林檎を齧っている。
その中でも一際大きな林檎を食べていた者が立ち上がると、グリフォンに手を向ける。
「さて?反逆されないように呪術を重ねがけしておくか……」
そう言うと禍々しい、紫の闇とも言うべきモヤがグリフォン達を包み込んだ。
グリフォンが従属の姿勢を取るのを見て満足気に笑う。
「くくく、ははははは!やはり良いな!帝国も良いが、やはりティタスタは最高だ!こういった自然のカモが沢山いるのだからな!」
そう言った直後だった。集団の中の一人が異変に気づく。
「……そういや、国境に隠れている同胞が戻ってきていないな」
「ん?……あぁ、確かに。長いな。キチンと連絡しろとあれだけ言ったのに……」
そう言って森の方角を見て魔法を使うと、リーダーの男は愕然とした。
「……死んでる?」
そう言った瞬間。大人しかったグリフォンは吼えて集団に飛びかかる。
「なっ!?コイツら、何で……!」
「呪術の隷属に失敗した!?馬鹿なっ!もう一度だ!」
そう言って集団がバラけた直後、歳を感じさせるもののハリのある声がその場に轟く。
「……アンタらには、『もう一度』なんて言葉は使わせないよ」
そう言った直後。突如として集団の外から剣を持った女性が何十人と飛びかかってくる。
「いつの間にッ!?」
「チッ、なんだこの女!」
そう言って避けて相手も闇でその女性を包み込む。
しかし従属することは無く、ただ消えた。そして、新しい女性の幻体が剣を持ってその場に産まれてくる。
「……ま、さか……おい!逃げろ!逃げろッ!これはティタスタの……!」
「『無限』……だと……!?引退したんじゃなかったのか!」
そう言って四方八方に分かれる。しかし、ラーナとダグザがいる国境線の方角に、本物が立つ。
「国境線を越えられては面倒なのでね。ここでアンタらは処理させてもらうよ」
そう言ったアルトは、杖で地面を突く。
その途端に逃げようとしたミディアの民の足元が泥濘になる。そして、それはどんどん沈んでいく。
「術者さえ倒せばこっちのもんよなぁ!」
しかしその状況でも余裕を見せるミディアは、複数人で同時に呪術を放つ。
アルトに着弾して、泥も解ける。そう思った時に闇の中から声が届く。
「アンタらねぇ。術者を倒せなかったからアタシがここにいるんだろう?おっと、もしかして年単位の戦いだから忘れてしまったかい?」
そこには平然と佇むアルトがいた。それを見て初めて絶望の顔が兵に浮かぶ。
「な……」
「呪術が……」
「いや、このままでは我々が……!」
既に沼は手の近くまで飲み込んでいた。それを認識して、アルトの顔を見る。
その顔は、怒りの修羅の顔であった。
「沈みな。そしてあの世で裁かれな。自分達の犯した罪を、永遠に亡霊にそのまま合わされるといい」
「い、嫌だ!まだ……まだ……死にたくねえ!」
「人間誰しもそうだろうね。で?その命乞いをした人を一人でも助けたかい?……そういう事だよ。アンタらは誰も救わなかった。それを最期に知って逝くといいよ」
そう言うともう一度杖で地面を突く。
泥沼の引き込む早さが上がり、遂には国境線に逃げようとした全ての兵は地面の中で窒息死する事となった。
「……アタシだって許されるとは思っていないさ。けれど、それ以上に許せない者は生きているうちに排除しないとね。……さて。ロイヤリーはどうかね?」
噂にされたロイヤリーは、ただ平然と多数の兵を前に圧力をかけていた。
魔法でもない、呪術でもない。ただの圧力。目に見えないもの。
しかしミディアの兵はそれだけで動けない。足が竦む、手が動かない。頭が、口が呪術の詠唱をさせてくれない。
「……どうした?何もしてこないのか」
その言葉に釣られて狂乱になった一人がロイヤリーに杖で突っ込む。
その瞬間。ロイヤリーは剣を抜くことすら無く、握り拳に魔力を込めて腹を殴った。
「……ぁ……」
魔力が全身を通り、脳を破壊する。その光景を見てミディアの兵は更に動けなくなる。
呼吸が浅い。いや、出来ているのかすら分からない。ただ口を動かしているだけかもしれない。口を動かしているかも分からない。
ただ一つミディアに分かることは、相手にしてはいけない相手が目の前にいるということだけだ。
「リーダー格は……あぁ、お前か。じゃあ他のは用済みだ」
そう言うとゆっくりリーダー格の男に近づくと、剣を出して魔力を込める。
そして、その剣を腹に突き刺す。
そのまま問いかける。
「ミディアの今の本拠地は?」
するとリーダー格の男が洗脳されたような目で答える。
「……ここより西に五キロ……北に二キロ……廃村となった場所に皆がいる……」
「リーダー!?」
その慌てようから本当の事だと知る。剣を引き抜くと、転がった死体に何らかの魔法をかける。
すると、リーダー格の男が生きているかのように立ち上がって残りの兵に襲いかかる。
「ミディアの呪いは便利だな。こうして手を汚さずに同士討ちさせられるのだから」
恐怖で動けない兵を、リーダー格は容赦なく殺していく。
そして全ての兵が殺されるのを見ると、リーダー格にかけた魔法を解く。
ばたり、と死体が転がった場所を冷たく見下ろしながら、独り言を呟く。
「自業自得だ。呪術返しって知ってるか?……って、生きているやつはいないな。それじゃ、報告に戻るか」
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