32 / 32
Chapter1:名探偵と美少女と召使い
決 断
しおりを挟む「!真凛亜…!!」
真凛亜は起きていた。
酷く驚いた。
真凛亜が目を覚ましていることもそうだが、何より一番驚いたのは俺をパパと呼んでくれたことだった。
嬉しさのあまり真凛亜の元へ駆け寄った。
「パパのこと、思い出したのか!?」
「…ううん」
真凛亜は首を横に振った。
「そ、そうか…ならどうして俺のことパパなんて呼んだんだ?」
「え…?」
「あ、いや…別に怖がらせてるつもりはないんだ。ただ…真凛亜から見たら俺は知らないおじさんだろう?…その、怖くは…ないのか?」
「……」
ベッドの端に座って、俯きながらシーツの裾を握りしめる真凛亜。
けどすぐに俯いていた顔を上げてこう言った。
「…こわく、ないよ。わるいひとじゃないって、分かるから…」
そう言って、真凛亜は笑った。
俺に笑いかけてくれた。
「真凛亜……っ」
思わず真凛亜を抱き締めた。
…本当は怖いはずなのに。
不安で不安で、たまらないはずなのに。
こんなにも小さな身体で、こんな俺を受け入れてくれるのか。
「パパ…」
あの時…救急車で搬送する前に真凛亜を抱き締めたときは、俺が一方的に抱き締めるだけに過ぎなかった。
けど今は…真凛亜の方から抱き締め返してもらえる。
ーそうだ、俺はまだ何も失ってはいない。
真凛亜はまだ生きている。
この温もりを絶対に無くすわけにはいかない。
「………」
俺は考える。
どうすればいいか、どうすればこの状況を打開出来るのか、必死になって考えた。
医師の話によると、俺は明日にでも逮捕されると言っていた。
これは要するにあの二人組の刑事が再び病院に来るということ。
しかしそれは今日のようにただ証言を聞くために来るのではなくーー十中八九、俺を容疑者として逮捕するためだろう。
刑事自身も事実言っていた。また明日来ると、明言している。
……俺は、絶対に捕まるわけにはいかない。
逮捕されてしまえば、真凛亜はひとりぼっちになってしまう。
それに、真衣子のことも無論忘れてはならない。
刑事の話によると真衣子は意識を取り戻した後、すぐに応対したと言っていた。
病院もいつまでも入院を許してくれるわけではない。
真依子のその様子から見ても退院する日もそう遠くないはずだ。
…退院したら、自ずと母親である真衣子が真凛亜を引き取ることになるだろう。
そうなってしまえば、真凛亜は今度こそーー真衣子に殺されてしまう。
真実を知っているのは俺だけだ。
俺しか、真凛亜を守れない。
ーー守れないんだ。
だったら、だったらもう。
残された手段は、一つしかないじゃないか。
俺しか、俺にしか、真凛亜を守れない。
ーー俺が、真凛亜を守るんだ。
「…なぁ、真凛亜。パパと一緒に…ここから逃げようか」
0
お気に入りに追加
7
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる