上 下
1 / 32
Chapter1:名探偵と美少女と召使い

落し物

しおりを挟む
 

オレは今日、ある人物に会うため小さな探偵事務所を訪ねていた。

いまどき珍しい木造建築の一軒家。
いやむしろ家というより古屋といった方が近いかもしれない。
本当に人が住んでいるのか疑ったくらい古びた外装だ。

こんな探偵事務所に来た理由は、他でもない。
今時探偵だなんて胡散臭いにも程があるけど、最早なりふり構っていられないんだ。

緊張しながらも震える手で木造のドアを軽く2、3回ノックし、扉を開けた。


「ーうわっ!?」


すると、入った同時に目の前にある何かとぶつかってしまった。

思わず声が裏返ってしまう。
我ながらちょっぴり恥ずかしい…なんて、そんな感傷に浸っている暇もなくーー目の前にある何か、いや…目の前にいる人物からすかさず声を掛けられた。


「やあ、ようこそ。」

「え…?」


そこにはいたのは男性だった。
オレよりも高い身長に、すらっとした立ち姿。
美形な顔立ちに思わず目を奪われそうになる。


「ん?キミは…」

「あ、安心院大器あじむたいきです!今日はその…宜しくお願いしまふっ!」


…緊張のあまり噛んだ。
顔が赤くなるのが分かる。


「…ふっ」


案の定、笑われてしまった。
一気に出鼻を挫かれた気分だ。


「あ、あの…電話でお話した件で伺ったんですけど…っ」

「ああ、依頼人だよね。待っていたよ」

「…改めて、今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ。さあ、どうぞ」


これが、オレと探偵の出会いだった。

なんだか締まらない感じだが、こうしてオレの物語は動き始める。

まさか、この出会いが人生を大きく変えることキッカケになるなんてーーこの時のオレは知る由もなかった。
しおりを挟む

処理中です...