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パラノーマル・アクティビティ方式

#1:どうにかなるんじゃね?知らんけど

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~♪~~♪♪アイラービュー、きーみの(バンッ

~~♪♪アイラービュー、きー(バンッ

~♪アイラ(バンッ「いつまで寝てんのよ!!3回も鳴ってんだから早く起きなさいよ!!!」

「うっさ……つかまた勝手に変えやがって……」
 ベッドで3回程ぶっ叩いたスマホの時刻を確認して2度寝(四度寝か)を決め込もうとしたら、いい加減にしろとばかりに龍太郎に叩き起された。

「勘弁してよ……何徹したと思ってんのさ……」
「自業自得でしょ、いい加減起きる!」
 小さく"オカン"と言ったらまたぶっ叩かれた。
 龍太郎に対して"オカン"は禁句だけど、なんだかんだ許してくれるから何度でも言ってしまう。

「龍太郎~コーヒーちょ~だ~い、そして私のアラームの音楽勝手に変えるな~」
「龍太郎言うなって言ってんでしょ(超低音Voice)ていうか、アンタも少しは世の中の流行りを聞きなさいよ。最近人気が出てきたAgerエイジャーの曲なんだから変えてあげただけありがたいと思いなさい」
 とかなんとか言いつつ、私がいつも飲む様なコーヒー(ミルクと砂糖たっぷりなゲロ甘コーヒー)を渡してくれる優しいやつだ。

「今日の予定は?」
「今日は3時から編集さんとカフェで打ち合わせ&読者からのお手紙受け取ってくるだけ」
「3時から?随分遅いのね」
「昨日まで5日連続で徹夜したっつったらじゃあ3時でいいですよって」
「甘え過ぎよ、全く……」
「そういうルキアママは?」
「店子と買い出しして、そのまま店直行よ。今日は?お店来る?」
 少し考えてから"気が向いたら行くよ"とだけ返事をして、龍太郎が"そう"とだけ返した。

 ご紹介が遅れましたね。はじめまして皆さん、オカルト作家を生業とさせていただいております。
鷹月勇魚たかつきいさな】と申します。
 好きなホラー小説は小野不由美先生の"残穢"同じ作家を生業としている者として小野先生のあのまとわりつく様な恐怖をいつか書きたいものです。

「勇魚、アタシもう出るけど、お昼ご飯さ。パスタの消費期限が近いのよ」
「いいよ~、確かタラコソースまだあったよね?アレで食べとくよ」
「ありがと、行ってくるわね」
 カツカツと言うよりもガツガツと言うべきか、力強いヒールの音を響かせて家を出たのは、私の第2のオカンこと私の同居人【小林龍太郎こばやしりゅうたろう】職業飲食店経営者です。

 趣味は筋トレ、好きな物は現実と映画(ホラー以外)、嫌いな物はオカルト。
 あ、今なんでオカルト嫌いなのにオカルト作家の私と暮らしてんだって思ったでしょ?

 ぶっちゃけ私も知りません。
 聞いても誤魔化されるか、何故かキレるのでよくわかんないんですよね……。

「私としては、よくもまあ先生みたいなギリギリ人間やれてる人と暮らしててストレスたまらないなぁと思いますけどね」
「どういう意味ですか?」
「そのままの意味ですが?」
 サラッと私をdisったこの人は、私の担当編集である袴田百代はかまだももよさん、ちなみに既婚。

「私だって家事を全くやらない訳では……」
「そうじゃなくて、たまに病気みたいに心霊スポット行きたがったり、誰も家に来るなとか、急に旅に出るから探すなとか言う時あるじゃないですか……それによく付き合えてるなあって」

「龍太郎は付き合ってくれませんよ?」
「えっ?!放置?!」

「迎えには来てくれますけど、めちゃくちゃお説教されますね。女の自覚と社会人の自覚持てって」
「それだけ?」
「それだけって?」
「いや、一緒に暮らしてんですから急な行動取られて、女の自覚と社会人の自覚持つことだけってことはないでしょう……」

 本当にある意味放っておいてくれるから、龍太郎と暮らしている節があるからなぁ……

 袴田さんの言う通り、私は時々理由もなく1人になりたい時がある。
 龍太郎と暮らす前までは、定期的に袴田さんが家まで来るもんだから、連絡無しで遠方の心霊スポットに行ったり、旅に出たり、酷い時は袴田さんに電話でもう来るなと怒鳴り散らしたこともあるぐらいだった。

 龍太郎と再会して、一緒に暮らし始めてからは割とマシにはなったものの、時々理由もなく徹夜したり、トイレみたいな狭い空間に籠ったりすることは未だに続いてる。

 龍太郎は呆れつつも、なんだかんだ放っておいてくれたり、酷い時には無理矢理ご飯を食べさせたりしてくれるから、一応人間的な生活はできてる。

「今もたまに酷い時はありますけど、龍太郎がいるのといないのじゃ、全然違いますよ。龍太郎がいてくれるからなんとか人間的な生活できてます」
「龍太郎さんいないんじゃ人間的な生活ができないって言ってません?」

 袴田さんといつも通り適当に雑談を交えながら打ち合わせを進めていた、その時唐突に声をかけられた。

「月くじら先生……ですか?」
「え?はい……そうですけど……」
 袴田さんが視界の端でものすごい顔をしてたけど、華麗にスルーして話しかけてきた人物を見やる。
 どこかで見たような顔だな……。

「ああ、すみません、僕AgerのボーカルでRIKUTOと申します」
「えっ?!エイジャーって今人気急上昇中の……」
「袴田さん、声でかい……」
 袴田さんのデカい声で、周りがザワつき始めた。
 お互い注目されると面倒だと言う理由で、RIKUTOさんの知り合いがやっているという隠れ家カフェで話をすることになった。

 言うの忘れてたけど、"月くじら"ってのは私のペンネーム。
 "鷹月"の"月"と"くじら"は昔くじらを釣り上げる人のことを"勇魚釣り"と呼んだってのを聞いた両親が着けた私の名前勇魚から取った。

「さて、最近人気が出てきたらしいAgerのボーカルさんが私になんの御用でしょうか?私みたいなオカルト作家に用とかないでしょ?ぶっちゃけ。てか私の著書とか読んでないでしょうに……」
「ちょっと、先生!すみませんねぇ、先生正直なところが取り柄なんですけど、たまに正直すぎて人を怒らせちゃうんですよ……」
袴田さんに首根っこ掴まれて、無理矢理謝罪の体を取らされる。

「いえいえ、大丈夫です!まぁ僕らみたいに"音楽やってる人間は本読まないでしょ"みたいな偏見は未だにあるのは事実ですから……でも、僕みたいにホラー小説とかが好きな奴は珍しいのも、事実なんですよね」
 と私の失礼極まりない言葉を、笑って許してくれた。
 それどころか、私の著書を取り出してサインくださいとまで言えるその度胸が羨ましくもあるぐらいだ。

「懐かしい本を……しかも初版じゃないですか……めちゃくちゃ発行部数少ないのに……」
「発売されてすぐに買いました。ちなみに増刷版も買いました、あとがきが違うって聞いて」
「ガチ過ぎて引きましたよ……はい、これでいいですか?」
 私の処女作、しかも初版本を持っている人に初めて会ったけども、とりあえず読者は大事にしなければと初版本と増刷版にもサインをしてやると、めちゃくちゃ目をキラキラさせてお礼を言われた。

 後で龍太郎にめちゃくちゃ自慢してやろうと心に決めて、目の前の読者に改めて向き合った。
「それで?私に話しかけた理由を聞きましょうか?」
「あ、そうでしたね……すみません、携帯小説時代から好きな作家さんを目の前にして興奮しちゃって」
「携帯小説時代は私の黒歴史なので是非とも忘れてください」

「実は僕、幽霊にストーキングされてるみたいなんです……」
「……はい?」
 RIKUTOさんが言うには、ここ2ヶ月程家の中で気がついたら家具や物の配置が微妙にズレているということがあるそうだ。

「気の所為じゃね?もしくはペットがズラしたとか」
「コラッ!読者が真剣に悩んでることを一言で片付けない!」
「僕ペットはヘビしか飼ってなくて、最初は気の所為だと思ってました。でも、あまりにそういう事が続くんで、思い切ってライブスタッフさんたち見たくバミリ※をつけてみたんです。そしたら……」
※バミリ=テレビ番組やステージなどで撮影、収録時に出演者が立つ場所、機材やスタジオの配置場所を指示するためのマークのこと、カラフルなテープで床に貼られることが多い

「ズレはなかったんですけど、代わりに別のものが落ちてたんです」
「別のもの?セオリー通りなら髪の毛が落ちてたとかだけど」
「怪談だったらよくあることよね」
 怪談作家も担当する袴田さんとオカルト作家の私で、思いっきり脱線した話を戻すようにRIKUTOさんは重い口を開いた。

「髪の毛じゃなくて……爪が落ちてたんです……しかも明らかに小さい、女性の爪で、確実に僕のじゃない爪が……」
「爪?小さいってことは彼女さんのとか?」
「AgerメンバーのTOMOMIさんとかU-RIユーリさんのとか?」
「Agerって男女混合なんだ?」
「先生……世の中に疎すぎでしょ、日頃どうやって生きてるの……」
「龍太郎がなんとかしてくれてるし、基本私興味が無いコンテンツにはとことん興味無いから」
「じゃあ、先生に認知して貰えるように頑張んなきゃですね。あと、僕今フリーなんですよ、メンバー特にTOMOMIもU-RIもここ最近僕の家に来てないですし、それに……」
「それに?」
「爪って言っても、爪切りで出たような短い切られた爪じゃなくて……」
「……剥がされた爪ってこと?」
 RIKUTOさんは青い顔で頷いて見せた。
 いよいよ、私や霊媒師が登場するべき場面と言ったところらしい。
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