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【第24話】
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30枚も焼き上げたパンケーキの上に、ハチミツをかけてスライスしたバナナを載せた。
思ってたよりふんわりと仕上がらなかったし、バターがないのは残念だけど、たったこれだけの材料でできることはやったので良しとしよう。
海藻を水にもどし、盛りつけをしていたチェルシーちゃんが、
「うわー!、すんげー、きれいだなァ! 喰っちまうのがもったいねえくらいだァ」
パンケーキをガン見して言った。
「見た目は、確かに美しいな」
と、ルシエールさんが言うので、
「アハハ、大げさだなァ。ただのパンケーキなのに。この世界にだってパンケーキはあるでしょ?」
僕はチェルシーちゃんに眼を向けた。
「そりゃあ、あるだよ。オラも何度か作ってみたけど、いつも焦がして真っ黒にしちまうだ」
チェルシーちゃんは、顔をしかめた。
そっか……。
子供の手でフライパンをずっと持つのは、ちょっと無理な話だ……。
チェルシーちゃんが、料理を作るのが下手な理由がこれでわかった。
それぞれの皿にパンケーキを載せて、お待ちかねの実食。
ひとくちパクリと食べて、僕は硬直した。
ちょっと、微妙だなー……。
生地にバターもミルクも入れてないのでコクもないし、ハチミツだけでは甘味がまったく足りない。
マズくはないけど、美味くもなかった。
なのにチェルシーちゃんは、
「うんめ―! やっぱ兄ちゃんは料理の天才だ」
ほっぺを両手で押さえながら、もぐもぐと食べた。
いつもどこか冷めた顔をしているルミエールさんまでも、かすかに笑っているようだった。
ふたりの様子を見て、僕はほっとして食べ始めた。
そうして食事を終えてお茶を飲んでいるときに、僕はルミエールさんに相談をした。
「僕の世界にもどるにはLvを99まで上げないといけないんですけど、この島ってスライムしかいないんですよね。スライムなんて経験値ほとんどないし、やっぱり島を出て経験値を稼いだほうがいいんじゃないかと思うんですけどルミエールさんはどう思います?」
「村で聞いたと思うが、海には出れないぞ。ダーククラーゲンが生息しているからな。奴の餌になりたいなら、止めはしないが」
「そうですよね、ダーククラーゲンがね……」
「だが、そう気落ちすることもないぞ。経験値を稼ぎたいなら、わざわざ島を出ることはないんだ。チェルシーとバナナを取りに行ったただろう? そこからさらに北へ北へと向かえば、メタルスライムの谷がある。運がよければ、キングメタルにも見つけることができるだろう。その気になれば、一ケ月でLvを上げることだって可能だよ」
「えー、それって、マジですか!」
「ああ」
「うわ、やったー!」
僕は思わずその場で小躍りしていた。
海にでれないって聞いたときは、もう二度と元の世界にはもどれないんだと肩を落としたけど、いま、希望が見えてきたのだ。
ワクワク感を覚えながら、僕はいっぱいになったお腹をなでた。
ルミエールさんはチェルシーちゃんの頭をなでながらぼそりと言った。
「とは言え、君がいなくなったら、この子は淋しがるだろう……」
「…………」
ルミエールさんの言葉を聞き、僕は胸が痛くなった。
出逢ってすぐに、チェルシーちゃんは僕に懐いてくれた。
いまでは、妹のように思えてならないほど可愛くてしかたない。
「まあ、仕方あるまい。君の料理の腕は確かにいいが……」
「…………」
「私は、このコと2人だけで静かに暮らしていたいしな」
「それもいいとは思いますけど、でも、チェルシーちゃんも年頃になれば恋人ができて、いつかは結婚するだろうし、ずっと2人で暮らすわけにはいかなくなるでしょう」
「何を言う。結婚だって! そんなもの、させるわけがないだろうが!」
「いや、しかし……」
「このコは、結婚なんて絶対にさせない! 私と2人で一生仲睦ましく過ごしていくんだ!」
ルミエールさんは、片腕でチェルシーちゃんを強く引き寄せて抱きしめた。
「――――」
僕は何も言えず、ルシエールさんを見つめた。
思ってたよりふんわりと仕上がらなかったし、バターがないのは残念だけど、たったこれだけの材料でできることはやったので良しとしよう。
海藻を水にもどし、盛りつけをしていたチェルシーちゃんが、
「うわー!、すんげー、きれいだなァ! 喰っちまうのがもったいねえくらいだァ」
パンケーキをガン見して言った。
「見た目は、確かに美しいな」
と、ルシエールさんが言うので、
「アハハ、大げさだなァ。ただのパンケーキなのに。この世界にだってパンケーキはあるでしょ?」
僕はチェルシーちゃんに眼を向けた。
「そりゃあ、あるだよ。オラも何度か作ってみたけど、いつも焦がして真っ黒にしちまうだ」
チェルシーちゃんは、顔をしかめた。
そっか……。
子供の手でフライパンをずっと持つのは、ちょっと無理な話だ……。
チェルシーちゃんが、料理を作るのが下手な理由がこれでわかった。
それぞれの皿にパンケーキを載せて、お待ちかねの実食。
ひとくちパクリと食べて、僕は硬直した。
ちょっと、微妙だなー……。
生地にバターもミルクも入れてないのでコクもないし、ハチミツだけでは甘味がまったく足りない。
マズくはないけど、美味くもなかった。
なのにチェルシーちゃんは、
「うんめ―! やっぱ兄ちゃんは料理の天才だ」
ほっぺを両手で押さえながら、もぐもぐと食べた。
いつもどこか冷めた顔をしているルミエールさんまでも、かすかに笑っているようだった。
ふたりの様子を見て、僕はほっとして食べ始めた。
そうして食事を終えてお茶を飲んでいるときに、僕はルミエールさんに相談をした。
「僕の世界にもどるにはLvを99まで上げないといけないんですけど、この島ってスライムしかいないんですよね。スライムなんて経験値ほとんどないし、やっぱり島を出て経験値を稼いだほうがいいんじゃないかと思うんですけどルミエールさんはどう思います?」
「村で聞いたと思うが、海には出れないぞ。ダーククラーゲンが生息しているからな。奴の餌になりたいなら、止めはしないが」
「そうですよね、ダーククラーゲンがね……」
「だが、そう気落ちすることもないぞ。経験値を稼ぎたいなら、わざわざ島を出ることはないんだ。チェルシーとバナナを取りに行ったただろう? そこからさらに北へ北へと向かえば、メタルスライムの谷がある。運がよければ、キングメタルにも見つけることができるだろう。その気になれば、一ケ月でLvを上げることだって可能だよ」
「えー、それって、マジですか!」
「ああ」
「うわ、やったー!」
僕は思わずその場で小躍りしていた。
海にでれないって聞いたときは、もう二度と元の世界にはもどれないんだと肩を落としたけど、いま、希望が見えてきたのだ。
ワクワク感を覚えながら、僕はいっぱいになったお腹をなでた。
ルミエールさんはチェルシーちゃんの頭をなでながらぼそりと言った。
「とは言え、君がいなくなったら、この子は淋しがるだろう……」
「…………」
ルミエールさんの言葉を聞き、僕は胸が痛くなった。
出逢ってすぐに、チェルシーちゃんは僕に懐いてくれた。
いまでは、妹のように思えてならないほど可愛くてしかたない。
「まあ、仕方あるまい。君の料理の腕は確かにいいが……」
「…………」
「私は、このコと2人だけで静かに暮らしていたいしな」
「それもいいとは思いますけど、でも、チェルシーちゃんも年頃になれば恋人ができて、いつかは結婚するだろうし、ずっと2人で暮らすわけにはいかなくなるでしょう」
「何を言う。結婚だって! そんなもの、させるわけがないだろうが!」
「いや、しかし……」
「このコは、結婚なんて絶対にさせない! 私と2人で一生仲睦ましく過ごしていくんだ!」
ルミエールさんは、片腕でチェルシーちゃんを強く引き寄せて抱きしめた。
「――――」
僕は何も言えず、ルシエールさんを見つめた。
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