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【第18話】
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やたらに硬くてゴムのようなパンだったけど、少しは腹の足しになった。
元の世界にもどるまで、こんな食事にしかありつけないのだろうか……。
考えるだけで不安になってしまう。
「ネルは10年もここにいるっていったよね。ずっとこんな食事で我慢ができたよね。ケンタとか食べたくない? 牛丼とかも」
「言うなー、それをー! 思い出さないようにしているんだ、俺は!」
ネルは眼をつぶり、首をふって叫ぶように言った。
「あ、そうなんだ……。知らなかったこととはいえ、なんかごめん……。僕なんて昨日来たばかりだけど、もうリタイヤしたい。あ、食後のコーヒーはある? キンキンに冷えたアイスコーヒーがあったらサイコーなんだけど」
「そんなもんがあったら、俺が飲みてえよ。――まあ、王都に行けばあるがな。もちろん美味い飯も」
「マジ? どうやって、その王都に行くの? 出来たら僕を連れてってくれないかな。この通り、お願いします」
僕は、合唱した手を顔の前にかざし、頭を下げて懇願(こんがん)した。
「それは……、うん、無理。絶対に無理な相談だ」
ネルはまたも眼をつぶり、今度はゆっくりと首を横にふった。
「え、どうして? 美味いものがあるんだろ? だったら、行こうよ!」
「無理なものは無理なんだって。俺、王都にもどったら吊るされちゃうから」
ネルは首を切る仕草をした。
「なにそれ。吊るされるって、どういうこと……?」
僕は眉根をよせて、ネルを見た。
「10年前に、勇者として召喚されたって言っただろ? そのときよ、めちゃ高価な武器、防具、そして大量の金をもらっちまったんだが、王都から船で出港したとたん事故に遇(あ)って、この島に漂流したんだ。つまりだ、俺は魔王どころか魔物一匹やっつけることなく、頂いたもん全部オシャカにしちまったんだ。そんな俺が、王都にもどれるわけがないだろうよ」
「事故って、どんな?」
僕はさらに訊いた。
「そうだな、ことの成り行きをざっと話すと、魔王討伐のパーティは、勇者の俺、僧侶、魔法使い、そして腕っぷしの強い女剣士の4人だったんだが、出港前の宴のとき、その女剣士に一目惚れした貴族の男が強引に着いてきやがったんだ。俺は、なんかすごーく嫌な予感がしたから断ったんだよ。何度もな。だが、やつは権力を笠に着て船に乗り込んできた。そして、『わたしは魔物と戦う力はないけれど、皆を歌で癒すことは出来る』とかぬかしやがってな。あの男の顔を思い出すだけで、むかっ腹立ってくるぜ」
「…………」
僕は黙って、ネルの話を聞いていた。
「出港したその日の晩に、その貴族の男が女剣士を甲板に呼び出して、、愛の歌やらを唄っていたら、深海にしかいないはずのダーククラーゲンが現れて、俺たちは必死に逃げたが、結局は追いつかれて船は木っ端微塵……。夜中だったから、俺は寝間着姿で海に放り出されて、気がついたときには、この島に流れついていたってわけだ」
「そうだったんだ。それは災難でしたね。でも、事故なら仕方がないことじゃない。事の顛末を話せば、王様だってわかってくれるよ。あ、ネルを召喚させたのって、王様?」
「ああ」
「なら、こんなところに隠れてないで、正直に話すべきだよ。あれは不可抗力だったって」
「そんな簡単にすむことなら、とっくに謝ってるさ。だがな……」
そこでネルが言葉を詰めた。
「謝罪できない何かがあったの?」
僕のその言葉に、ネルはこくりとうなずき、
「この島はスライムしかいないスライム島だってことも、僧侶のレーベンはすぐに気づいた。王都からはずいぶん離れた孤島だが、この島には経験値を稼ぐにはもってこいのBIGメタルスライムがいるから、冒険者たちも頻繁に立ち寄るんだ。その冒険者のひとりが、俺の手配書をもっていたんだよ。王都の財宝を横領した犯罪者としてな」
ネルはひとつため息をつくと、遠くを見るような眼をした。
元の世界にもどるまで、こんな食事にしかありつけないのだろうか……。
考えるだけで不安になってしまう。
「ネルは10年もここにいるっていったよね。ずっとこんな食事で我慢ができたよね。ケンタとか食べたくない? 牛丼とかも」
「言うなー、それをー! 思い出さないようにしているんだ、俺は!」
ネルは眼をつぶり、首をふって叫ぶように言った。
「あ、そうなんだ……。知らなかったこととはいえ、なんかごめん……。僕なんて昨日来たばかりだけど、もうリタイヤしたい。あ、食後のコーヒーはある? キンキンに冷えたアイスコーヒーがあったらサイコーなんだけど」
「そんなもんがあったら、俺が飲みてえよ。――まあ、王都に行けばあるがな。もちろん美味い飯も」
「マジ? どうやって、その王都に行くの? 出来たら僕を連れてってくれないかな。この通り、お願いします」
僕は、合唱した手を顔の前にかざし、頭を下げて懇願(こんがん)した。
「それは……、うん、無理。絶対に無理な相談だ」
ネルはまたも眼をつぶり、今度はゆっくりと首を横にふった。
「え、どうして? 美味いものがあるんだろ? だったら、行こうよ!」
「無理なものは無理なんだって。俺、王都にもどったら吊るされちゃうから」
ネルは首を切る仕草をした。
「なにそれ。吊るされるって、どういうこと……?」
僕は眉根をよせて、ネルを見た。
「10年前に、勇者として召喚されたって言っただろ? そのときよ、めちゃ高価な武器、防具、そして大量の金をもらっちまったんだが、王都から船で出港したとたん事故に遇(あ)って、この島に漂流したんだ。つまりだ、俺は魔王どころか魔物一匹やっつけることなく、頂いたもん全部オシャカにしちまったんだ。そんな俺が、王都にもどれるわけがないだろうよ」
「事故って、どんな?」
僕はさらに訊いた。
「そうだな、ことの成り行きをざっと話すと、魔王討伐のパーティは、勇者の俺、僧侶、魔法使い、そして腕っぷしの強い女剣士の4人だったんだが、出港前の宴のとき、その女剣士に一目惚れした貴族の男が強引に着いてきやがったんだ。俺は、なんかすごーく嫌な予感がしたから断ったんだよ。何度もな。だが、やつは権力を笠に着て船に乗り込んできた。そして、『わたしは魔物と戦う力はないけれど、皆を歌で癒すことは出来る』とかぬかしやがってな。あの男の顔を思い出すだけで、むかっ腹立ってくるぜ」
「…………」
僕は黙って、ネルの話を聞いていた。
「出港したその日の晩に、その貴族の男が女剣士を甲板に呼び出して、、愛の歌やらを唄っていたら、深海にしかいないはずのダーククラーゲンが現れて、俺たちは必死に逃げたが、結局は追いつかれて船は木っ端微塵……。夜中だったから、俺は寝間着姿で海に放り出されて、気がついたときには、この島に流れついていたってわけだ」
「そうだったんだ。それは災難でしたね。でも、事故なら仕方がないことじゃない。事の顛末を話せば、王様だってわかってくれるよ。あ、ネルを召喚させたのって、王様?」
「ああ」
「なら、こんなところに隠れてないで、正直に話すべきだよ。あれは不可抗力だったって」
「そんな簡単にすむことなら、とっくに謝ってるさ。だがな……」
そこでネルが言葉を詰めた。
「謝罪できない何かがあったの?」
僕のその言葉に、ネルはこくりとうなずき、
「この島はスライムしかいないスライム島だってことも、僧侶のレーベンはすぐに気づいた。王都からはずいぶん離れた孤島だが、この島には経験値を稼ぐにはもってこいのBIGメタルスライムがいるから、冒険者たちも頻繁に立ち寄るんだ。その冒険者のひとりが、俺の手配書をもっていたんだよ。王都の財宝を横領した犯罪者としてな」
ネルはひとつため息をつくと、遠くを見るような眼をした。
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