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【第7話】

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 いまのこの現状に置かれた要因を思い出して、僕はスマホを手にしたまま呆然としてしまった。

 これって現実だよね……。

 果てしなくつづいている海と空を眺めながら途方に暮れていると、またスマホが鳴った。
 画面を見てみると、三多さんの名が出ている。

「三多さん! ここって、どこですか!! いったいどうして僕はこんなところにいるんですか!!!」

 着信に出ると、僕は三多さんの声を待たずに、そう訊いていた。 

「おはよーございまーす。 無事に異世界(そちら)へ着いたようですね」

 三多さんは、僕の問いには答えずそう言った。

「無事は無事ですけど、僕をどうやって、ここへ連れてきたんですか?」
「うむ、無事に到着できたのなら、ヨシ!」
「ちょっとォ、僕の話し聞いてます?」
「ハイ、ハイ、ちゃんと聞いてますよ。小島さん、どうぞご安心を。あなたのような、これといった何のスキルもない人でも、イージーな設定にプログラミングしてありますから、心ゆくまでゲームを楽しんでください」
「ゲ、ゲーム? 何それ。まさか、イカゲーム的なことを、僕にさせようってことじゃないでしょうね」

 僕はビビった。
 何かよからぬ組織に囚われて、金持ちたちをただ悦ばせるためだけのゲームに、否応なしに参加させられてしまったのではないかと思えたからだ。

「ははは、面白いことを言いますね。そんなわけないでしょ」
「だったら、母さんが心配するので、いますぐ僕を帰してください」
「いやいや、そういうわけにもいかないんですよ。その代わりに、小島さんのレベルが上がれば、スマホが充電なしで使えるように設定してありますから、早くお母さんに連絡できるように頑張ってください」
「だから、状況がまったく読めないんですってば」
「突然のことで驚いているでしょうけれど、説明してるヒマもないしトリセツもないので、ま、何とかなりますって。だから、RPGな世界観をご堪能ください。あ、それと、LINEの友だち申請しておいてくださいませ。では、健闘を祈ります」
「あ、ちょ、ちょっと待って!! まだ切らないで――」

 止めるのも虚しく、通話は切れてしまった。
 折り返して掛けてみたが、

「お客様のお掛けになった電話番号は、電波の届かないところにおられるか――」
 
 というメッセージが返ってきた。
 一応、母さんにも掛けてみたが、やはり、同じメッセージが流れるだけだった。
 まったく、意味がわからなかった。
 だけど、そのとき、ふと三多さんが言った言葉を思い出した。

 そう言えば、LINEの友だち申請をしておいてって言ってたな……。

 僕はすぐに、母さんや友だちにメッセージを送ってみた。
 しかし、いつまでたっても既読がつかない。

 友だちはともかく、母さんは朝食を食べている時間なんだけどな……。
 それなら、仕方ない……。
 
 気は乗らないけど、三多さんを友だち申請しておくことにした。
 そして待つ。
 スマホで時間を確認する。
 10分が過ぎた。
 そしてまた待つ。
 20分が過ぎた。
 結局、1時間が過ぎても、既読も返信もなかった。

 
 ほんとに、僕はどうしたらいいんだ……。

 またもや、僕は途方に暮れてしまった。
 その場に坐り込み、海を地平線をに眼をやる。
 すると、

 グルルルル~~~!!

 腹が鳴った。

 そうだ、僕は腹が減ってたんだ……。

 僕は先ほど地に落ちたヤシの実を拾いにいった。
 ヤシの実を手に取ってこじあけようとしたが、とても素手で開けられるものではない。

 これは、岩場でやらないと無理だな……。

 というわけで、岩場に移動する前に持ち物をチェックした。
 5Lのデニムのポケットには、財布とハンカチ、そしてスマホ。

 この先、これだけで大丈夫かな……。

 そんなことを想いながら、何気なく僕が目覚めた場所に眼を向けると、何かが落ちているのが見えた。

 あれは……。

 それは、コンパの場所で、宮川に被せられたクリスマスの三角帽だった。
 歩いていって三角帽を拾い上げる。

「あは、しょうもな。でも、陽ざしが強くなってきたし、被っておくか」

 声を出してそう言いながら三角帽を被ると、スマホが鳴った。
 それは着信ではなく、LINEの音だった。
 どうせ、三多さんだろう、そう思ってLINEを開いてみると、

【ユートは 防御力3上がった】

 ーー何これ……。

 僕は思わず、怒りに任せて、スマホを海へと投げ捨てるところだった。




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