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【Episode 86】
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昼下がりである。
何をするでもなく……、
何を考えるでもなく……。
吾輩はマイハウスのの中で、右にゴロリ、左にゴロリとしている。
ゴロゴロリ、である。
だからといって、
3回まわって、ワン!
とは言わない。
しかし、退屈なのである。
いったい、退屈の正体とは何なのか。
時間を持て余すこと――
うむ。
確かにそうなのだが、いかんせん、吾輩には持て余すほど時間はない。
我が種族は、ポメラニアンやヨークシャテリアのような小型犬。
柴犬の吾輩とコーギーのマイケルのような中型犬。
ドーベルマンのドン・ビトーやダルメシアンのワトソンのような大型犬と分かれるのだが、一年半で人間で言う2 0歳となり、その後1年で約4歳づつ年齢を重ねていくのだ。
体格差によって異なるが、平均寿命は14年から15年なのである。
それを考えれば、吾輩に時間を持て余すほどの時間がないことがわかってもらえたのではないだろうか。
と、なんやかんやと言っておりますが、
うむう……。
それにしたって、退屈なのである。
この退屈さを凌(しの)げるものはないものかと、吾輩は顔を伏せてきょろきょろと辺りに眼を配ってみる。
だが、見飽きた風景である。
何ひとつ変わり映えしない。
強いて言うならば、植え込みの草木が秋の色に変わり始めたことくらいであろうか。
ふむ……。
ふむ、ふむむ……。
ここで少し、リズムを刻んでみる。
ふむむむむ、ふむ、ふむ、ふむむんむ……。
お、何か楽しくなってきた。
ふむふむふむむ、ぬむぬむむ♪
ふむむむ、ふむむ、ふむむんむ♪
Ohイェーイ!
楽しいぜい!
こんなとき、ノリでハイタッチできる者がいれば、超Happyになれるのであるが。
そんなことを思っていると、めったに姿を見せたことのないサリーが現れた。
「何してるの、ゴン太のおじさん」
サリーも立派に、おとなの女犬になった。
その姿は、サラにソツクリである。
2匹が並んだら、どっちがどっちなのかわからないほどであるが、サリーのほうが子供だけに毛並みに艶があり、顔立ちもどこかやさしげであった。
サリーは小首を傾げ、きょとんと吾輩を見つめいる。
吾輩はハイタッチを求めて片手を挙げたが、サリーは「冗談でしょ?」という顔で退(すさ)るように身を引いた。
「何だよ、サリー。ノリが悪いなー」
そう言ってやりたかったが、サラに告げ口でもされたりしたら、あとでどんな目に合されるかわからないのでやめた。
「やあ、サリー。吾輩に会いに来るなんて珍しいじゃないか」
吾輩は愛想笑いを浮かべて、挙げたままの手をゆっくりと下げた。
「うん。ちょっと、知りたいことがあるんだけど」
サリーが言った。
「へ? 知りたいこと?」
驚きに、吾輩は思わず声が裏返ってしまった。
単独で会いに来たことのないサリーが、とつぜん会いに来たのだ。
そのうえ、吾輩に知りたいことがあると言うのだ。
この吾輩にである。
驚いたって無理はない。
必然の驚きである。
とは言え、それはそれは博識が高い吾輩なら、どんなことでも答えられるから何を訊かれてもあたふたすることはないが、知りたいこととは何なのであろうか。
「うむ。それで、君は何を知りたいのかな?」
まるで賢者にでもなった気分で、吾輩はサリーに訊いた。
何をするでもなく……、
何を考えるでもなく……。
吾輩はマイハウスのの中で、右にゴロリ、左にゴロリとしている。
ゴロゴロリ、である。
だからといって、
3回まわって、ワン!
とは言わない。
しかし、退屈なのである。
いったい、退屈の正体とは何なのか。
時間を持て余すこと――
うむ。
確かにそうなのだが、いかんせん、吾輩には持て余すほど時間はない。
我が種族は、ポメラニアンやヨークシャテリアのような小型犬。
柴犬の吾輩とコーギーのマイケルのような中型犬。
ドーベルマンのドン・ビトーやダルメシアンのワトソンのような大型犬と分かれるのだが、一年半で人間で言う2 0歳となり、その後1年で約4歳づつ年齢を重ねていくのだ。
体格差によって異なるが、平均寿命は14年から15年なのである。
それを考えれば、吾輩に時間を持て余すほどの時間がないことがわかってもらえたのではないだろうか。
と、なんやかんやと言っておりますが、
うむう……。
それにしたって、退屈なのである。
この退屈さを凌(しの)げるものはないものかと、吾輩は顔を伏せてきょろきょろと辺りに眼を配ってみる。
だが、見飽きた風景である。
何ひとつ変わり映えしない。
強いて言うならば、植え込みの草木が秋の色に変わり始めたことくらいであろうか。
ふむ……。
ふむ、ふむむ……。
ここで少し、リズムを刻んでみる。
ふむむむむ、ふむ、ふむ、ふむむんむ……。
お、何か楽しくなってきた。
ふむふむふむむ、ぬむぬむむ♪
ふむむむ、ふむむ、ふむむんむ♪
Ohイェーイ!
楽しいぜい!
こんなとき、ノリでハイタッチできる者がいれば、超Happyになれるのであるが。
そんなことを思っていると、めったに姿を見せたことのないサリーが現れた。
「何してるの、ゴン太のおじさん」
サリーも立派に、おとなの女犬になった。
その姿は、サラにソツクリである。
2匹が並んだら、どっちがどっちなのかわからないほどであるが、サリーのほうが子供だけに毛並みに艶があり、顔立ちもどこかやさしげであった。
サリーは小首を傾げ、きょとんと吾輩を見つめいる。
吾輩はハイタッチを求めて片手を挙げたが、サリーは「冗談でしょ?」という顔で退(すさ)るように身を引いた。
「何だよ、サリー。ノリが悪いなー」
そう言ってやりたかったが、サラに告げ口でもされたりしたら、あとでどんな目に合されるかわからないのでやめた。
「やあ、サリー。吾輩に会いに来るなんて珍しいじゃないか」
吾輩は愛想笑いを浮かべて、挙げたままの手をゆっくりと下げた。
「うん。ちょっと、知りたいことがあるんだけど」
サリーが言った。
「へ? 知りたいこと?」
驚きに、吾輩は思わず声が裏返ってしまった。
単独で会いに来たことのないサリーが、とつぜん会いに来たのだ。
そのうえ、吾輩に知りたいことがあると言うのだ。
この吾輩にである。
驚いたって無理はない。
必然の驚きである。
とは言え、それはそれは博識が高い吾輩なら、どんなことでも答えられるから何を訊かれてもあたふたすることはないが、知りたいこととは何なのであろうか。
「うむ。それで、君は何を知りたいのかな?」
まるで賢者にでもなった気分で、吾輩はサリーに訊いた。
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