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初恋
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※河原飛鳥視点
ポップでリズミカルな音楽に乗せ、歌を歌う。
レコーディングだから目の前の観客を意識しなくていい。
ただ、マイク越しに聞いているであろう人達に伝えるように想いを込める。
集中して俺のパートを歌うと、二人も歌い出した。
三人の歌声が一つに重なっていく。
盛り上がるサビを歌い終えて、曲も同時に終わった。
俺達の歌で一人でも心が救われますように…
なんてな、誰が聞いても文句がないように完璧に歌えばそれでいい。
俺に望んでいるのはそれだけだから…
ホッと一息つくとガラスで区切られた別室から明るい声が聞こえた。
「お疲れ様、今日も最高だったよ」
「ありがとうございます、瀬名さん」
瀬名さんの周りにメンバー全員が集まった。
STAR RAINのマネージャーである平凡な顔の男の名は瀬名弘樹。
デビューしたての頃から共にSTAR RAINを育ててくれた俺達にとって兄のような存在だ。
話しやすいのもあるから、二人はマネージャーではなく名前で呼んでいる……俺はあくまでマネージャーだからマネージャーと呼んでいる。
まだ23と若いのにかなりのやり手だ、STAR RAINのマネージャーを務めているぐらいだから当たり前か。
そして最初にマネージャーに声を掛けた愛想笑いが得意な男は本郷圭介。
温厚で滅多に怒ったところを見た事がない。
一番年上の高三でSTAR RAINのリーダーで人気がある男だ。
揉め事の仲裁役もしていて、STAR RAINが今までやってこれたのは彼のおかげかもしれない。
マネージャーも仲裁役をする時があるが、やっぱりメンバーを知るのはメンバーだけだ。
それに、たまに高校生ならではの悩みもある。
仕事以外の揉め事はだいたい圭介が担当になっている。
マネージャーの事は信頼しているが、言えない事も当然ある。
その圭介にも全部相談出来るわけじゃないけど…
大人っぽいから、たまに高校生に見られないと落ち込んでいたのは記憶に新しい。
老けている顔ではないが、雰囲気が高校生っぽくない。
マネージャーともよく打ち合わせとかをしていて、メンバーの中で一番仲がいい。
とはいえ、プライベートで遊びに行くほどではなく、あくまでビジネスパートナーとしてだ。
別室に皆で向かいマネージャーに飲み物を貰い口につけていた。
体が熱くなってきていたから、冷たい水が体を適温に変えてくれる。
「この後ダンスのレッスンとかキツすぎ、誰か代わりに行ってきてよ」
「ダメに決まってるよ」
必殺技のうるうるおねだりポーズをマネージャーに即答で却下されて「これだから頭固いんだよ」とさっきとは真逆にマネージャーに睨む男は蓮田幸人。
STAR RAINの弟系可愛いキャラとして人気がある。
主に年上に好かれるような見た目だから、ファンだけじゃなく業界人にも人気があると聞いた事がある。
しかし幸人の本性を知る人物は絶対に身内に欲しくないと思うだろう。
幸人は大きな瞳で中性的で可愛い顔とは裏腹にかなり腹黒い。
今までぶりっ子しておねだりポーズをしていたら周りは幸人を甘やかしまくった。
その結果、自分は一番愛されて可愛いと自惚れている。
自分よりちやほやされるのが許せないという………面倒な性格だ。
STAR RAINを結成して間もない頃は自分より人気な俺にかなり対抗意識を燃やしていたが今は「緋色と僕はジャンルが違うから」という結論に落ち着いたそうだ。
俺は面倒だから最初から幸人には関わらなかった。
マネージャーは最初は幸人を可愛い可愛いと可愛がっていたが幸人の本性を知り今は落ち着いたそうだ。
ちなみに俺と圭介は幸人の事可愛いと思った事は一度もないが、幸人が面倒くさいことになるから適当に可愛い可愛い口先だけ言っていた。
それで幸人も満足してるから、それでいい。
可愛くないものを可愛いって言うのはかなりの体力を使う。
三条のように可愛げがあったらいいんだけど、それは三条にしか出来ないからな。
アイツ今、何してるんだろう…三条……三条か。
今思えば、あれは同意だっただろうか、悪い事してしまったな。
学校で再会してから、嫌われるような事しかしてないな。
「どうしたの?緋色くん」
「…えっ、あ…いや」
今朝の事を思い出し気分が落ち込んでいたらマネージャーが目の前に立っていた。
同級生を襲いましたなんて、マネージャーじゃなくても相談出来ねぇよ。
何でもないと言って、手にしていたペットボトルを見つめる。
脳内には鮮明に記憶されている事があった。
その顔、その声が今も聞こえてくるような気がした。
振り払うように頭を振り、キャップを開けた。
ペットボトルを傾けると口の中に冷たい水が入り込む。
口を離し息を吐き、椅子に置いていたタオルで汗を拭う。
『俺も大好きだよ、じゃあまたな』
俺が見た事がない、嬉しそうな顔だった。
昨日は俺だけを見ていたのに、俺の下で可愛く鳴いていた口は電話口の誰か分からない相手に愛を囁いていた。
……三条は確かに昨日初めての行為だから襲われた経験はなさそうだ、だから男が好きなわけではないだろう。
そもそも告白もしてない、恋人同士ですらない関係だ。
ペットボトルを見つめると中に入っている水が揺れた。
ポップでリズミカルな音楽に乗せ、歌を歌う。
レコーディングだから目の前の観客を意識しなくていい。
ただ、マイク越しに聞いているであろう人達に伝えるように想いを込める。
集中して俺のパートを歌うと、二人も歌い出した。
三人の歌声が一つに重なっていく。
盛り上がるサビを歌い終えて、曲も同時に終わった。
俺達の歌で一人でも心が救われますように…
なんてな、誰が聞いても文句がないように完璧に歌えばそれでいい。
俺に望んでいるのはそれだけだから…
ホッと一息つくとガラスで区切られた別室から明るい声が聞こえた。
「お疲れ様、今日も最高だったよ」
「ありがとうございます、瀬名さん」
瀬名さんの周りにメンバー全員が集まった。
STAR RAINのマネージャーである平凡な顔の男の名は瀬名弘樹。
デビューしたての頃から共にSTAR RAINを育ててくれた俺達にとって兄のような存在だ。
話しやすいのもあるから、二人はマネージャーではなく名前で呼んでいる……俺はあくまでマネージャーだからマネージャーと呼んでいる。
まだ23と若いのにかなりのやり手だ、STAR RAINのマネージャーを務めているぐらいだから当たり前か。
そして最初にマネージャーに声を掛けた愛想笑いが得意な男は本郷圭介。
温厚で滅多に怒ったところを見た事がない。
一番年上の高三でSTAR RAINのリーダーで人気がある男だ。
揉め事の仲裁役もしていて、STAR RAINが今までやってこれたのは彼のおかげかもしれない。
マネージャーも仲裁役をする時があるが、やっぱりメンバーを知るのはメンバーだけだ。
それに、たまに高校生ならではの悩みもある。
仕事以外の揉め事はだいたい圭介が担当になっている。
マネージャーの事は信頼しているが、言えない事も当然ある。
その圭介にも全部相談出来るわけじゃないけど…
大人っぽいから、たまに高校生に見られないと落ち込んでいたのは記憶に新しい。
老けている顔ではないが、雰囲気が高校生っぽくない。
マネージャーともよく打ち合わせとかをしていて、メンバーの中で一番仲がいい。
とはいえ、プライベートで遊びに行くほどではなく、あくまでビジネスパートナーとしてだ。
別室に皆で向かいマネージャーに飲み物を貰い口につけていた。
体が熱くなってきていたから、冷たい水が体を適温に変えてくれる。
「この後ダンスのレッスンとかキツすぎ、誰か代わりに行ってきてよ」
「ダメに決まってるよ」
必殺技のうるうるおねだりポーズをマネージャーに即答で却下されて「これだから頭固いんだよ」とさっきとは真逆にマネージャーに睨む男は蓮田幸人。
STAR RAINの弟系可愛いキャラとして人気がある。
主に年上に好かれるような見た目だから、ファンだけじゃなく業界人にも人気があると聞いた事がある。
しかし幸人の本性を知る人物は絶対に身内に欲しくないと思うだろう。
幸人は大きな瞳で中性的で可愛い顔とは裏腹にかなり腹黒い。
今までぶりっ子しておねだりポーズをしていたら周りは幸人を甘やかしまくった。
その結果、自分は一番愛されて可愛いと自惚れている。
自分よりちやほやされるのが許せないという………面倒な性格だ。
STAR RAINを結成して間もない頃は自分より人気な俺にかなり対抗意識を燃やしていたが今は「緋色と僕はジャンルが違うから」という結論に落ち着いたそうだ。
俺は面倒だから最初から幸人には関わらなかった。
マネージャーは最初は幸人を可愛い可愛いと可愛がっていたが幸人の本性を知り今は落ち着いたそうだ。
ちなみに俺と圭介は幸人の事可愛いと思った事は一度もないが、幸人が面倒くさいことになるから適当に可愛い可愛い口先だけ言っていた。
それで幸人も満足してるから、それでいい。
可愛くないものを可愛いって言うのはかなりの体力を使う。
三条のように可愛げがあったらいいんだけど、それは三条にしか出来ないからな。
アイツ今、何してるんだろう…三条……三条か。
今思えば、あれは同意だっただろうか、悪い事してしまったな。
学校で再会してから、嫌われるような事しかしてないな。
「どうしたの?緋色くん」
「…えっ、あ…いや」
今朝の事を思い出し気分が落ち込んでいたらマネージャーが目の前に立っていた。
同級生を襲いましたなんて、マネージャーじゃなくても相談出来ねぇよ。
何でもないと言って、手にしていたペットボトルを見つめる。
脳内には鮮明に記憶されている事があった。
その顔、その声が今も聞こえてくるような気がした。
振り払うように頭を振り、キャップを開けた。
ペットボトルを傾けると口の中に冷たい水が入り込む。
口を離し息を吐き、椅子に置いていたタオルで汗を拭う。
『俺も大好きだよ、じゃあまたな』
俺が見た事がない、嬉しそうな顔だった。
昨日は俺だけを見ていたのに、俺の下で可愛く鳴いていた口は電話口の誰か分からない相手に愛を囁いていた。
……三条は確かに昨日初めての行為だから襲われた経験はなさそうだ、だから男が好きなわけではないだろう。
そもそも告白もしてない、恋人同士ですらない関係だ。
ペットボトルを見つめると中に入っている水が揺れた。
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